22.爆破の余波
ダリオン殿下のド派手な大捕物は、人々の注目を集めた。
それ故、いかに宰相ガランジとバトラー騎士団長といえども揉み消すことは出来なかった。
彼らは当初の目的通り、トカゲの尻尾を切ることにした。
そう、アホーダ男爵を見せしめにしたのだ。
だが、ダリオンは捜査の手を緩めなかった。大切なロザリモンドの危機にブチ切れたのである。
シスコンのロザリモンドの兄アズランも巻き込んで徹底的に事件を洗った。
「ウイリアム、そこまでだ。」
アホーダ男爵の屋敷に火をつけようとしていたウイリアムがビクリとした。
「ダリオン殿下。」
開き直ったウイリアムは嘲りを込めて笑いかけた。
「そこで何をしている?」
しかし、厳しい態度のままダリオンが問い詰める。
「親友であるダリオン殿下を手伝おうと捜索の手伝いに来たのですよ。」
お馬鹿なダリオンならすぐに丸め込めるとウイリアムが笑顔で話しかける。
「アホーダ男爵の屋敷で?その炎はなんだ?」
だが、ダリオンは追及を止めない。くそっ、忌々しい。
「ダリオン殿下、どうなさったのですか?ロザリモンドと婚約してから変ですよ。」
苛立ったウイリアムがダリオンに食って掛かる。
「私は変わったのだ。彼女が私を変えてくれた。」
諭すように話すダリオンの背後から、レオナルドが忍び寄る。
「へえ、俺達は昔の馬鹿な殿下が好きでしたけどね。操りやすくて。」
「レオナルド、貴様。」
形勢逆転。二対一では、いかにダリオンと言っても勝ち目はない。レオナルドは騎士団長の子息だけあって剣の腕は同年代ではロザリモンドを除いてトップだ。
「仲の良い僕達は3人で捜索に来た。だが、残念だが、ダリオン殿下はアホーダ男爵の屋敷で火災に巻き込まれ亡くなることになる。」
ウイリアムは意気揚々と今後の計画をダリオンに語る。その間にもレオナルドの狂剣がダリオンに迫る。
「くらえ。」
レオナルドの剣の腕は超一流だ。サボっていたダリオンが敵うはずもない。奢りきったレオナルド自身は次の瞬間打ち砕かれた。
素早い身のこなしでダリオンがひらりと躱す。そうだ、ずっとサボっていたダリオンだがロザリモンドと婚約してから一日たりとも鍛錬を欠かさなかったのだ。
もともとの天性の才が開花したと言っても過言ではない。
しかし、次の瞬間そんなダリオンの努力など嘲笑うようにウイリアムの手から炎がほとばしった。
ウイリアムは火属性の魔術の手練れだ。業火がダリオンに迫る。
しかし次の瞬間、業火を遮る金属のバリアが出現した。
「馬鹿な。魔法は使えぬはずでは?」
ウイリアムが驚愕する。
「そうだった。だが、使えるようになったのだ。」
ダリオン自身にも不思議なのだ。
「いや、ダリオン殿下は幼き日にロザリモンドの魔力暴走に巻き込まれて魔核を損なったはず。魔核を失えばいかに魔力があったとて魔法は使えぬはず。」
そうなのだ。だからこそ、その元凶であるロザリモンドが魔力で称えられるたび悔しい思いをしてきた。
しかし、ロザリモンドがかけがえのない存在だと気付いたあの日。
ロザリモンドを探したいと必死に願ったダリオンは彼女の魔力を感じた。
そして、気づけば彼女の元へと皆を連れて転移していたのだ。
心が強く願えば使えるのだ。努力は人を変えるのだ。強く願えば、諦めずに努力していけば必ず道は開ける。
ダリオンは涼しい顔でウイリアムの業火を氷の魔術で打ち消した。
馬鹿な。ウイリアムの目が言っている。ダリオンは先程金属をバリアに使った。しかし、今は氷。
本来、属性は一つしか使えぬはずなのだ。
全属性使用可能なのはロザリモンドをおいて他はいないはず。だから、炎を打ち消せるはずなどないのに。
ダリオンは息を吸うように他属性を使ったのだ。しかも、高度な氷など付け焼刃で扱えるはずがない。
「おどろいたか。一度も魔術を学んだことのない俺が氷を使うなんて。俺も驚いたよ。みんなの手前魔術書を読むことはしなかったが、こっそりと読んでいたんだ。それが今役に立つとはな。」
そう無駄な努力などないのである。回り道が役立つこともある。それが人生なのだ。
ダリオンは魔法蔓で彼らを捕らえたのだった。




