ツクヨミ
大好きなダリオン殿下との婚約も決まって、幸せの絶頂のロザリモンドが見たのは、ダリオン殿下による断罪と、処刑台の景色だった。
なんですって。怒りと絶望を覚えたロザリモンドの脳内に『ツクヨミ』の声が響く。
【魔力残量99.999%本日からこちらの未来に至るまでの映像も流せますが、どうしますか?】
見てやろうじゃないの。ロザリモンドは『ツクヨミ』に命じた。
「見せなさい。」
【是 プログラム更改 1000倍速にて脳内に映像を投影します】
絶望を味わったロザリモンドに、『ツクヨミ』は映像を今日まで巻き戻した。
これから起こる出来事を物語仕立てで事細かく流し始めたのだった。
『ツクヨミ』よ。普通は私の物語だから、主人公は私のはずよね。
でも、何故なのかしら?ロザリモンドは『ツクヨミ』が見せる物語の中では悪役だった、それもラスボス級の。
【事象がわかりやすいよう客観的に流すプログラムをしています。視点を切り替えますか?】
「不要よ。今ちょうどいいとこだから。このまま流して。」
だったら最初からそうしなさい。でも、この映像ダリオン殿下が主人公なんだもの。最後まで見たいに決まってるわ。
【是】
それに、誠に遺憾ながら、ダリオン殿下の視界にロザリモンドの姿はまだ一度も映っていない。婚約したというのに一度もだ。
そして、ダリオン殿下は昔からロザリモンドを嫌っていて、ロザリモンドとの縁談を嫌がっていたのだということがわかった。
しかも、なりふり構わないロザリモンドによって無理矢理婚約とならざるを得なかったことに不満をもっていることもわかってしまった。
ロザリモンドは昨日までの自分の所業を振り返り、自分の胸に手を当てた。自分のしてきたことに間違いないわ。
それにしても、ダリオン殿下はそんなに昔から私が嫌いだったなんて。
胸がチクリと傷んだ。
ロザリモンドは子供の頃ダリオン殿下との初顔合わせの日に魔力暴走をおこした。
その時にダリオン殿下に助けてもらってからずっとずっと大好きだったのに。
一方通行の片想いだけならまだしも、蛇蝎のごとく嫌われているなんて辛すぎる。
ロザリモンドはキリキリと痛む胸を押さえた。
結局、ロザリモンドはダリオン殿下と一度も会うこともなく真実の愛を見つけたダリオン殿下に濡れ衣を着せられて処刑所に送られる。
ラスボス級の悪役令嬢のザマアでめでたしめでたしでおわるということね。ロザリモンドは自嘲した。
「ふうー。長い物語を見たようで面白かったわ。ありがとう『ツクヨミ』。」
きちんと御礼を言わないとね。
【お役に立ててよかったです。】
まあ、未来がわかったからと言って私がダリオン殿下との婚約を諦めたりしないのだけど。それに、この先の未来も見たかったわ。ロザリモンドはどこまでもポジティブだった。
【魔力残量50%。この先の世界もご覧になりますか?】




