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【2月3日完結】彼女は手段を選ばない〜婚約破棄?NO!推し活&ヒロインを魔王の生贄にするのでご心配なく〜  作者: 降魔 鬼灯


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17.捜索

ロザリモンドはこれではいけないと気を引き締めた。


 駄目よ、うっとりしてては駄目。まさしくダリオンの思うツボだわ。

 ダリオンは私の事を好きでもないどころか、断罪したいくらい嫌っているのよ。

 それなのにこんなに優しくして、恋のドツボに嵌めようなんて。

 ダリオン、駄犬のくせに恐ろしい子。早く正気にかえらないとミイラ取りがミイラになるわ。




 ロザリモンドはここにきた大事な目的を思い出す。頭をとっとと切り替えてダリオンのハニー・トラップから逃れることにした。


 まずはアホーダ男爵を探すのだ。彼の容姿は『ツクヨミ』で見たからよくわかる。

 見た目に気を使う社交界には珍しい、ずんぐりむっくりの強烈なブ男だ。きっとひときわ目立っているはず。

 

 そして、今のロザリモンドにはアホーダ男爵を見なければならない切実な事情があった。

 そう、目も覚めるようなブ男であるアホーダ男爵の顔を見て、正気に戻るのだ。

 ダリオンにグラグラと揺すぶられる乙女心をそのブサイクな顔で現実に引き戻してほしい。



 『ツクヨミ』の映像によると、アホーダ男爵は人身売買に手を染めている。


 常套手段は夜会で見初めた若い令嬢を攫うのだ。社交界では失踪してしまったことが公になれば令嬢としての死を意味する。

 それどころか、その家にとってもダメージとなるため、攫われたなど絶対に届け出ることはない。


 そっと秘密裏に探しても見つからねば、病気療養とでも理由を付けてひっそりとフェードアウトしていくのだ。


 だからアホーダ男爵の悪行はバレることなく彼は、どんどんと大胆に犯行を行うようになる。


 彼の罪を告発したことでコリンヌはダリオンと出逢う。出来れば彼らが出会う前にアホーダ男爵はぶっ潰しておきたい。

 『推し活』はあくまで推しの幸せを応援するもの。

だから本来ならば推しのために二人を応援するのだろう。

 しかし、ロザリモンドはぶっ潰しにかかる。


 コリンヌが魔王の番である以上出会わないほうが幸せだという錦の御旗を掲げて。


 隣にはキラキラ甘々モードが凶悪なくらい増したダリオン。何事か話しかけているが無視よ。

 彼から目を背けてちびちびと飲み物をいただきながら、目を皿のようにしてブ男を探す。

 


「失礼。お嬢さん、一曲どうですかな?」

 ヒキガエルのような声が聞こえてきた。ターゲットは誰?


 さっき私達のところへ来て、抜群の記憶力を披露せてくれたユリアがそこにいた。

 壁の花をしていても高慢ちきなユリアならアホーダ男爵を相手にするはずがないわと安堵した。


 ユリアがぼーっとしたまま、アホーダ男爵にダンスへと連れ出されていくではないか。

 普段ならば、上手く躱すはずなのに……。


 情報が欲しい。地獄耳よ降臨せよ、サーチ。


「ユリア様ったら、普段は殿方と踊られることなどあまりないのに、よりによってあんな方と……。」


 そうよね。私もびっくりしたわ。


「先ほど、ロザリモンド様の様子をご覧になられてショックを受けておられたから。」


 私のせいなのかしら?タリオンへ渡した小物が自分の古いドレスをリメイクしたものとバラされたこっちの身になってよ。下手したら、断罪ものよ。

 

「無理矢理政略結婚させられるダリオン殿下が可哀想とおっしゃっていたのに、肝心のダリオン殿下がああですから。」


 いやいや、ダリオンはお勉強をして少し賢く立ち回れるようになっただけよ。


「人目も憚らず愛称呼びなんて、破廉恥だわ。」


 ダリオンはコリンヌにもリンと愛称呼びする人よ。言ってみたら誰にでもするわ。


「殿下もあんなにロザリモンド嬢だけは嫌だと拒否されていたのに、いざ婚約となると仲睦まじい様子。」


 みんなに周知の事実だったのに、私だけが知らなかったのね。あらためてショックだわ。


「それはショックを受けるのも無理はないわ。」


 

 ぼんやりとした仕草でユリアがアホーダ男爵とダンスを踊っている。踏まれたのかなんだか痛そうな仕草が可哀想だ。

 にたにたと笑いながらユリアの腰をいやらしく撫で回すアホーダ男爵が気持ち悪すぎて正気に戻れるわ、ありがとう。


 でもユリアを攫うつもりなのかしら?ユリアは私の獲物よ、渡すわけにはいかないわ。

 目的の為なら手段を選ばないロザリモンドは、自分の獲物は決して渡さない。

 

 曲が終わった。アホーダ男爵にエスコートされたユリアがふらふらとお手洗いの方へ向かった。

 これって、連れ込まれたりとか危険じゃないかしら。 


「ダリアン、あの私……。」


 ダリアンにお手洗いに行きたいなんて言えない。言えないけれど、早くしなければユリアが危ないわ。

「ローザ、大丈夫だよ。エスコートするから。」


 もじもじとした私の態度に何を勘違いしたのか、ダリアンがお手洗いに連れて行ってくれた。


 優しいんだけど……、喜んでいいのか。ロザリモンドは淑女として大切な何かを喪った気がする。


 しかし、作戦成功だから良しとしましょう。


 ロザリモンドは開き直る事にした。どうせダリオンは私のことは好きじゃないから気にすることはないわ。


 お手洗いに向かうユリアを追う。


 あらっ?


「これは殿下、ご機嫌麗しく。こちらで待っていてはご令嬢は落ち着かないでしょう。私と一緒にシガーでも。」

 

 アホーダ男爵がダリオンに礼をした。このタイミングでユリアを攫うわけではないのかしら?


「殿下、お待たせしてしまいますから、是非いってらして。」


 邪魔者は共に消し去るのみ。


 ロザリモンドは二人から離れてゆうゆうとお手洗いに向かう。おかしいわ、ずいぶん静かね。

 ドアを開けるはずのメイドもいない。



 自分でドアを開ける。ユリアどころかだれもいなかった。

 普段であれば錠がさされているはずの窓が開け放たれて風がびゅうっと音を立てて入ってくる。


 よく見ると窓の桟に黄金の髪が数本挟まっていた。ユリアの髪に似ているわ。


 窓の下を見下ろすが何も見えない。おかしいわね。

『サーチ』


 すると、見えないように遮蔽魔法がかけられた馬車が見えた。あそこに落とされて攫われたのかしら。


 ロザリモンドは自分のドレスの裏地をほんの少し破くと小指の先を唇に当て紅で文字を書いた。


「犯人はアホーダ男爵。助けに行く」その生地を窓の取っ手に結わえるとロザリモンドは魔法で存在を隠して窓から下へと静かにダイブしたのだった。



 

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