14.夜会
ダリオンに手を取られたロザリモンドはホールへと入場した。
ええ、これね。『ツクヨミ』でひとりで入場する羽目になった舞踏会。
みんなの視線が痛そうなやつよね。ダリオン殿下視点での映像の端っこにかろうじて映っていた私。
今考えると、ロザリモンドはダリオンに認識さえされてなかったモブだったのよね。
記録した映像を執念で何度も見返してようやく見つけることが出来たくらいのちっぽけな存在。
しかもその日のロザリモンドは婚約に浮かれて深紅のドレスを着ていたから、みんなの視線がきっと辛かっただろう。
今はダリオン殿下エスコートの元、深紅よりも深みがある王家のみが許されるロイヤルレッドのドレス。明らかにダリオン殿下から賜ったドレスだ。
しかし、なぜだろう?今も視線が辛い。
そう、みんなロザリモンドがダリオン殿下を魔法を使ってたぶらかしたに違いないという驚愕混じりの目で見ていた。
ロザリモンドはダリオンは、政治的配慮で仲良しアピールをしているだけだと言いたいが言えるわけもない。
それに、ダリオンをたぶらかせるような便利な魔法があるなら私が知りたいわ。速攻たぶらかすから。
「ローザ、どうした?」
周りがどよめく。ローザだと?新たな策略なのか?
聞こえているわよ。ロザリモンドは地獄耳なのだ。
それにしても、ダリオンの指が腰に食い込んで痛いわ。この馬鹿力が。
「ダリオンと初めての夜会で緊張しているのです。今日は一緒に入場していただきありがとうございます。私はこれで……。」
ロザリモンドは自身の腰に回ったダリオンの指に手をからめる。
ええい、離してほしい。共に入場して仲良しアピールも出来たから、もう十分目的を果たしたでしょう?
「ローザこんなに震えて。」
違うの、指が腰に食い込んで痛いのよ。ダリオン離して指。ロザリモンドは、痛みに潤んだ瞳でダリオンを見上げながら、エスコートから逃れようと必死にもがいていた。
しかし、なんということだろう。もがけばもがくほど食い込んでいく。
そして、ダリオンの頭の中でいつの間にか最凶ロザリモンドは、いたいけな令嬢ローザへと変わっていた。
「か弱きローザは俺が守る。危ないからそばにいろ。」
ロザリモンドは耳を疑った。ロザリモンドはS級魔物でもひとりで倒せるし、荒くれ者たちが集まる第16師団を単身でぶっ潰した武勇伝の持ち主だ。
しかも、第16師団はその後、ロザリモンドの鬼のシゴキのおかげで今や、周辺国も恐れる精鋭部隊として知られている。
そんなロザリモンドを、か弱い?ダリオン頭大丈夫?『針千本』の呪いが脳を傷つけたのかしら?
周囲からの視線が痛いわ。明日の大衆新聞の見出しはこうね。『ダリオン殿下、ロザリモンド嬢の術中にはまる』かしら?
一つだけわかったことがあるとすれば、それはひとりできても、ふたりできてもどちらにしても彼女は針のむしろだったということだけだった。
もう良いわ。さっさと情報収集よ。ロザリモンドは切り替えることにした。
「ダリオン、あちらにご友人がいらっしゃるわ。」
ダリオンが話に夢中になっている間にそっと離れましょう。




