出会った頃の思い出
「ねぇ、私の顔に何かついてるの?」
ディアの作ってくれた肉じゃがっていうやつを食べてたら、なぜか物凄く見つめてきた。
「何も付いてないわ。ただ、いつ見ても綺麗な瞳だなって思っただけよ」
「これが? 綺麗なの?」
「綺麗よ。右の瞳は、少し霧がかったような白色で、左の瞳は、それに対を成すように暗黒色。カッコよくて、とっても素敵」
それに、と言ってディアは私の髪の毛を触る。
「この純白な髪の毛も好きよ」
私の髪の毛は真っ白。生まれた時からそうだった。 それはこの瞳もそう。
オッドアイってやつ。
さっきディアが言ってくれたけど、私の右目は白で、左は黒。
これを素敵とか綺麗とか言ったのはディアが初めて。変な施設にいたときは不気味がられてたからさ。それが普通なんだと思ってた。
初めて会った時も綺麗だって言われて……その時は、ディアはなぜか泣いてた。
確か雨が降ってた夜だった。
施設を脱走して、運び屋の人を捕まえては移動して、それを繰り返して地球に来た。
異世界との交通網が確立されてるから、飛行機でも行けるし、車でも行ける。
ほんと世界が広がったよね。
お陰でここに来られた。そしてディアと出会えた。
そうそう、ディアと出会った時ね。
地球に初めて来て、行く当てもないから適当にぶらぶら歩いてた。
そしたら急に雨が降ってきた。
この世界にもあるんだぁって感心したのを覚えてる。
雨足が強くなって、前が見えないほど勢いが増して、さすがに歩けなかったから、近くの建物に避難した。
雨が止むまで暇だったから、鼻歌を歌って過ごしてた。その鼻歌をどこで覚えたのかはわからない。
けど、物心ついた頃から自然と音程が頭の中に入ってた。
雨やまないかなぁ、って鼻歌を歌ってたら、後ろの扉が開いたの。
カランカランって音が鳴って。
出て来たのがディアだった。
『あら、どうしたの?』
『お姉さんこそどうしたの? 何で泣いてるの?』
ディアは泣いてた。目を赤くして、しくしくと泣いてた。
『ちょっとね、悲しいことがあっただけよ。それより、そこだと風邪ひくわよ、中に入って』
『やったー!』
『そこに座って待ってて、何か温かい飲み物を持ってくるわ』
私は言われた通り、近くの丸くてクルクル回る椅子に座って待った。
『はい、ホットミルク。それと、お口に合うかどうかわからないけど、おでんも』
『いいの? そんなに私に優しくして。もしかしたら私、悪い子かもしれないよ?』
『そうね、こんな可愛らしい悪者がいるなら、大歓迎だわ』
『へー、変わってるね』
私の右目にはね、悪魔の力が宿ってるの。
その力は、相手の嘘を見抜くもの。もし嘘をつけば、嘘をついた回数だけ相手から何でも奪うことができる。
例えば腕や足、幸運と言った概念すらも奪える。
でも、ディアは嘘つかなかった。
『私はイハイ。お姉さんは?』
『ディア・インウィよ』
『ねぇ、ディア、これなに?』
『それは大根よ、そっちは卵、隣がこんにゃくで、それは巾着ね、中にお餅が入ってるの』
『ふ〜ん、よくわかんないけど食べよー』
おでんはどれも味が濃くて美味しかった。
施設ではほとんど味のしないものばかり食べてたからさ。
そんな私をディアはジッと見つめてきた。
『なに? 私の顔に何か付いてる?』
『ごめんなさいね、つい見惚れちゃってて。あなたの素敵な瞳に』
『これ? 初めて言われたよ』
『そうなの? とっても綺麗なのに。羨ましいと思っちゃうくらいよ』
『ディアは変わってるよ』
ってことがあったの。
「肉じゃがおかわり!」
「はーい」
それからは、ここが私の宿になってるわけ。
お風呂はあるし、ベッドもあるし、食事も付いてくる。
「ほんと至れり尽くせりだよ」
「うふふ、嬉しいわ、そうやって頼りにされてると、生きてる実感が湧いてくる」
ディアは微笑みながら、追加で肉じゃがを持って来てくれた。
「あとはカクテルさえ飲めれば最高なんだけどね」
「それはダメよ。未成年にアルコールは禁止されてるんだから」
「もー、たぶん成人だよ私」
「たぶんじゃダメなの」
「むぅー」
まぁでも、肉じゃが美味しいし、満足かな。




