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都市の下の痕跡と光の都のゴブリン少女

サント・ヴェレンの門の下に広がる暗闇は、単なる光の欠如ではない。それは生き、呼吸し、そして腐臭を放つ一つの実体だ。病んだ都市の動脈から流れる黒い血のように汚水が流れる湿った地下水道の迷宮の中を、水と空気の摩擦を無視するかのような速度で、白い影が疾走していた。


ストームクローだ。


彼は全裸だった。普段は美しい純白の毛皮も、今は下水の泥と汚物にまみれてくすんでいる。燃え盛る屋上でのレヴェンとの死闘で負った傷は塞がっていたが、毛皮の下に新しく形成された淡紅色の瘢痕はんこんが、遅くとも確実な再生を示していた。しかし、肉体の傷など、魂に穿たれた巨大な穴に比べれば何の意味もなかった。


「ハァ……ハァ……」


荒い息遣いは疲労のせいではない。胸の内で溶鉱炉のように燃え盛る怒りのせいだ。彼は錆びついたパイプを飛び越え、滑りやすいコンクリートに爪を立てながら、必死の捜索を続けていた。


あの臭いを探しているのだ。『イモータル』の臭いを。


「どこだ……マスター?」


彼の唸り声が狭いトンネルに反響した。


彼の鼻――いかなる眼球よりも鋭敏なその感覚器――が、地下水道の腐った空気を解剖していく。汚水の臭い、病気のドブネズミの臭い、不法投棄された化学薬品の臭いをより分け、一つの特定の香りを探し求めた。微かなオゾンの匂い、古代の墓の埃、そして……言葉にするのが難しい、冷たい虚無のような何か。


彼は港湾地区の地下システムを一寸の隙もなく嗅ぎ回った。無駄だった。地上に出て、路地裏の影に潜み、爆発後で警戒を強めているエボニー・ガードの巡回を避けて回った。


そしてついに、彼は見つけた。


雨水と油が混じり合う孤立した狭い路地で、ストームクローは急停止した。鼻がひくりと動く。


「ここだ……」


イモータルの臭いの痕跡がある。強い。明確だ。だが、その臭いは別の何かと混じり合っていた。ストームクローの首筋の毛を逆立て、指先から静電気の火花を散らせるような、何かと。


消毒液の臭い。合成血液の臭い。狂気の臭い。


「レヴェン」


その名は、舌の上で毒のように感じられた。


彼は視線を落とし、地面を観察した。争った形跡がある。レンガに残された爪痕。そしてそこで、イモータルの香りが唐突に……消えていた。まるでその存在がこの世界から切り取られたかのように、ぷっつりと途切れている。


「馬鹿な……」


ストームクローは再び、より深く、より必死に鼻を鳴らした。イモータルの臭いが消えたのなら、どこへ行った? 彼はそこに残された別の痕跡――高級なコロンとクローブ煙草が混じった、強烈な吸血鬼の臭いを追った。


数メートル先、路地の隅に転がった巨大な金属製のゴミ箱へとその臭いは続いていた。乱暴な手つきで蓋を開ける。


中には、腐った残飯の間に不自然に折り畳まれた吸血鬼の死体があった。顔面は鈍器――あるいは凄まじい剛腕――で何度も殴打されたかのように粉砕され、原形をとどめていない。衣服は剥ぎ取られていた。


ストームクローは冷ややかな目で死体を見下ろした。彼が探しているのはこれではない。だが、死体の上、そしてイモータルの痕跡が消えたエリア周辺に、新しい臭いが漂っていた。


未知の臭いだ。


イモータルのそれに似ているが……違う。もっと鋭い。もっと「生きている」。強烈な麝香じゃこう、攻撃的なフェロモン、そして乾いていない新鮮な血のような甘い香り。それは捕食者の臭いだった。


「一体ここで何があった?」


ストームクローは一歩後ずさり、思考を巡らせた。レヴェンがここにいた。イモータルもここにいた。そしてイモータルが消え、この新しい臭いが現れ、吸血鬼の服を着て(新しい臭いに上書きされつつある吸血鬼の残り香を感じ取れた)、去っていった。


レヴェンがマスターに何かしたのか? まさか……彼を改造したのか? 俺にしたように?


レヴェンの冷たい実験室、煌めくメス、体を切り刻まれ電気で繋ぎ合わされた時の想像を絶する激痛の記憶が、脳裏に溢れ出した。規律と肉体的な鍛錬の下に葬り去ったはずのトラウマが、再び表面へと噴き出したのだ。


「グアアアアアッ!」


ストームクローはきびすを返し、地下水道へと駆け戻った。自身の無力さを嘲笑うかのような外の空気に耐えられなかったのだ。


広い水路の合流点に着地すると、彼は立ち止まり、激しく震えた。制御不能になった黄色い電流が体の周囲で荒れ狂い、トンネルの天井の電球を破裂させる。


彼は自分の掌を見つめた――猫の爪と人間の指が融合したその手を。


「俺は……俺は強くなったはずだ」


声が震える。


「修行した。瞑想もした。制御していたはずなのに」


だがレヴェンは戻ってきた。あの悪魔のような女は戻ってきて、いとも容易くすべてを破壊した。リリーは死に、マスターは行方不明だ。そして彼は……逃げることしかできなかった。


「クソッ!」


ドゴォォン!


彼の拳がコンクリートの壁に叩きつけられた。蜘蛛の巣のように亀裂が走り、衝撃で天井から埃が舞い落ちる。


「クソッ! クソッ! クソッ!」


ドゴッ! ドゴッ! ドゴッ!


彼は何度も壁を殴りつけた。拳の物理的な痛みが、心の痛みを紛らわせてくれることを願って。手からは血が滴り落ち、足元の汚水と混じり合っていく。


壁が瓦礫と化した後、ストームクローはそこに立ち尽くし、肩で息をした。


「あの新しい臭い……」


闇の中で、彼の黄色い瞳が鋭く光った。


「あの臭いは駅の方へ向かった。もしあれがマスターなら……あるいは、マスターの成れの果てだとしても……俺は必ず見つけ出す」


一瞬の後、彼はトンネルの闇へと疾走し、背後に破壊と絶望だけを残していった。


『乗客の皆様にご案内申し上げます。大陸横断魔導列車は、まもなくヴェスペリア中央駅に到着いたします。お手荷物の置き忘れにご注意ください。また、ご自身の魂が肉体に留まっているかどうかもご確認願います。当列車のご利用、誠にありがとうございました』


滑らかで自動化されたアナウンスの声が、デヴォンを浅い眠りから引き戻した。


「んぐっ……」


デヴォンはゆっくりと目を開けた。豪華な客車の天井が視界に入る。体を起こすと、長時間座りっぱなしで凝り固まった筋肉を伸ばすたびに、関節が「ボキボキ」と音を立てた。サント・ヴェレンの門からヴェスペリアへの旅は予想以上に時間がかかった。このエコノミークラスの座席は柔らかいものの、新しく手に入れた彼の背が高く幅広な体格には不向きだったらしい。


「あー……寝ちまってたか」


彼は充血した赤い目をこすりながら呟いた。


周囲を見渡す。車両は空になり始めていた。乗客たち――そのほとんどは身なりの良い吸血鬼や中流階級の悪魔たち――が荷物をまとめ、整然と出口へ向かっている。混乱も叫び声もなく、ただ冷徹で文明的な効率性があるだけだ。


デヴォンは立ち上がり、少し皺になった盗品の黒いスーツを整えた。ショルダーバッグを手に取り、乗客の流れに従って外へと歩き出す。


列車から降り、ヴェスペリア中央駅のプラットホームに足を下ろした瞬間、彼の目がわずかに見開かれた。


サント・ヴェレンの門が陰鬱で怪物だらけの19世紀のロンドンだとするなら、ヴェスペリアはゴシックの悪夢の上に築かれた未来の大都市だった。


駅そのものが驚異的だ。天井は巨大なガラスドームで、永遠の夕暮れの空を映し出しているが、ここの空気は澄んでいる。スモッグもなければ、下水の臭いもしない。床は磨き上げられた白い大理石で、柱は金と銀の柔らかな光を放つ魔導ネオン(マギテック・ネオン)で装飾されていた。


駅から出たデヴォンを待っていたのは、圧倒的な都市の景観だった。摩天楼が空高くそびえ立ち、そのデザインは古典的な大聖堂と流線型の近代建築が融合している。広い道路は清潔で、馬車ではなく、地面から数インチ浮いた魔導車両が行き交っていた。


「なるほどな……前の街よりずっと近代的だ」


デヴォンはそう思いながら、スーツのポケットを探ってタバコを探した。


これが違いというやつか。サント・ヴェレンの門は観光向けの顔――クラシックなモンスターの世界のスリルを求める客のために、わざと古めかしく「本物っぽく」作られた場所。だがヴェスペリアは……エリートたちが住む場所だ。本物の金と権力が集まる場所。ここでは、快適さとテクノロジーこそが王なのだ。


「とりあえず、コーヒーが必要だ」


彼は結論づけた。


広い歩道を歩きながら、蜘蛛の糸で織られたシルクのドレスや血晶石の宝石を飾ったショーウィンドウを眺める。腹が鳴った。


街角にコンビニエンスストアらしき店が見えた。ロゴはウィンクする目玉のデザインだ。


デヴォンは店に入った。デジタルの入店音が鳴る。店内は明るく、冷房が効いていて涼しく、棚にはカラフルなパッケージの商品が並んでいる。元の世界のコンビニとよく似ているが、商品のラインナップが少々……違った。


彼は飲料コーナーへと歩いた。


「缶入りO型陰性血液……カイコジュース……エクトプラズム・ソーダ……」


彼の目は、ウィンクする人魚のイラストが描かれたマリンブルーの缶に留まった。


「『人魚姫のコーヒー牛乳』?」


デヴォンはその缶を手に取り、重さを確かめた。


「なんだこのふざけた名前は。まさか直搾りか……いや、よそう。カフェインはカフェインだ」


彼は二つのおにぎり(具材には『激辛イカの触手』と書かれている)と、『墓場のミント』味のガムを手に取った。


買い物をレジへ持っていく。


レジカウンターの向こうには、一人の老人が立っていた。ゴブリンだ。だが、森に住む薄汚くて猫背の野生のゴブリンとは違う。このゴブリンは背筋が伸びており、綺麗なフランネルのシャツに緑のエプロンを着けている。深い緑色の肌は皺だらけで、長い耳の先には白い毛が生え、曲がった鼻の先には老眼鏡が乗っていた。いかにも「雑貨屋の店主のおじさん」という雰囲気を強く醸し出している。


デヴォンが商品を置くと、老ゴブリンは顔を上げた。老眼鏡の奥にある知的な黄色い瞳が細められる。彼はすぐに商品をスキャンせず、デヴォンをじっと見つめた。


その視線はデヴォンの頭のてっぺんから、側頭部にある小さな赤い翼、厚い前髪、死人のように青白い肌、そしてスーツ姿へと舐めるように移動した。


「ふむ……」


ゴブリンはしゃがれた、しかし親しげな声で唸った。


「普通の人間にしては肌が白すぎるな、若いの。ノクターヌス(夜の住人)の基準で見てもだ」


彼は自分のこめかみを指差した。


「それに頭には鳥の翼がある。だがハーピーの臭いはしない」


ゴブリンは少し身を乗り出し、前髪の奥に隠されたデヴォンの目を覗き込んだ。


「その厚い前髪の下に何を隠しているんだ? あんた一体何者だ? 錬金術師のラボから出てきた新型のハイブリッドか?」


デヴォンは薄く笑い、ガムを手に取って指で遊んだ。


「まあ、俺はユニークなんですよ」デヴォンは気楽に答えた。


「ふむ……ユニークか」


ゴブリンは乾いた紙を丸めるような音でクツクツと笑った。


「ユニークな奴は好きだ。普通ってのは退屈だからな」


彼はデヴォンの商品をスキャンし始めた。


「で、あんた旅行者か? この地区でその顔を見たことがない」


「ああ、そうですね。着いたばかりです」デヴォンは短く答えた。


「どこから来たんだ? サント・ヴェレンか? それとも海の向こうか?」


ゴブリンはさらにお喋り好きの店主特有の好奇心を向けてきた。


「ヴェスペリアに来た目的は? 仕事探し? それとも嫁探しかな? ここの嬢ちゃんたちは金がかかるぞ」


デヴォンは軽くため息をついた。


「ただの……観光です。新鮮な空気を吸いに。あと、少しの平穏を求めて」


考えつく限り最もまともな答えを返した。


「平穏? このヴェスペリアで?」


ゴブリンはデヴォンの買い物を紙袋に入れながら、また笑った。


「幸運を祈るよ、若いの。この街は眠らない。ここの政治は、うちの婆さんの薬の調合レシピより複雑だからな」


デヴォンは袋を受け取った。


「どうも。それじゃ、先を急ぐんで」


「えっ? もう行くのか?」


ゴブリンは驚いた様子だった。


「着いたばかりだろう! 見て回らないなんてもったいない。都心の空中庭園地区は夕暮れ時――まあ、ここでは『昼』の時間帯だが――とても美しいんだぞ。永遠歴史博物館だって見る価値がある」


デヴォンが丁寧に断って立ち去ろうとしたその時、店のドアが突然開いた。


ウィーン!


「お父さん! ただいま!」


その声は明るく、エネルギーに満ちていて、とても女性的だった。


デヴォンは振り返った。


一人のゴブリンの少女が入ってきた。だが彼女は……違った。皺だらけの父親とは似ても似つかない。


少女は(肉体的には)デヴォンと同じくらいの年齢に見えた。肌は瑞々しく滑らかな薄緑色。スタイリッシュなボブカットの白い髪。ツンとした小さな鼻と、キラキラと輝く大きな黄色い瞳を持つ愛らしい顔立ち。彼女はアカデミーの制服を着ていた――紺色のブレザーに、長い脚と……そう、かなり発育の良い体を強調する短いプリーツスカート。


猫背でもなく、醜くもなく、邪悪にも見えない。彼女は……セクシーだった。一般的なファンタジーアニメで描かれるような小柄で不気味なゴブリンとは大違いだ。これはまるで……ゴブリンの『ワイフ』枠か?


デヴォンは二度瞬きをした。


『あれ? 結構可愛いな……』


少女は通学カバンをレジカウンターに置き、父親の頬にキスをした。


「今日はもうヘトヘト! 錬金術の教授ったら、三時間も金属変成理論について喋り続けるんだもん!」


その時、彼女はデヴォンの存在に気づいた。彼女は振り返り、その大きな瞳でデヴォンを上から下までスキャンした。緑色の頬がほんのりと赤らむ。


「あ……こんにちは?」


少し恥ずかしそうだが、好奇心に満ちた声で彼女は挨拶した。


「エララ、こちら新しいお客さんだ」


老ゴブリンは黄色い歯を見せてニカッと笑った。そしてデヴォンの肩をポンと叩く。


「彼は旅行者だそうだ。着いたばかりでもう行くと言うんだよ。まだヴェスペリアの美しさを見る暇もなかったというのに」


エララの目が輝いた。


「本当? もったいない! ヴェスペリアは見どころがいっぱいなのに!」


突然、老ゴブリンに名案が浮かんだらしい。その目に悪戯っぽい光が宿った。


「そうだ、エララ! ちょうどいいところに帰ってきたな」父親が言った。「お前、案内してあげたらどうだ? ええと、名前はなんて言ったかな、若いの」


「デヴォンです」デヴォンは反射的に答えた。


「デヴォンさんだ! このデヴォンさんを少し案内してあげなさい。中央広場とか、お前がよく行くカフェとか。駅とこの古ぼけた店しか見ないで帰るなんて気の毒だろう」


デヴォンは断ろうと手を挙げかけた。「あ、いや、お構いなく。俺は――」


「それイイ考えだね、お父さん!」


エララは熱烈に割り込んだ。彼女はすぐにデヴォンの方に向き直り、満面の笑みを浮かべた。口の端から小さな可愛い八重歯が覗いている。


彼女は近づいてきた。少し近すぎる距離まで。デヴォンは彼女から漂うバニラと古書の香りを感じ取ることができた。


「行きましょう、デヴォンさん! 街で一番美味しい『イチゴ血液ケーキ』を出すお店を知ってるの! それを食べずに帰るなんて絶対ダメですよ!」


デヴォンは、あまりにもテンションの高いゴブリンの少女を見つめた。そして、ニヤニヤしながら親指を立てている父親を見た。


デヴォンはため息をつき、肩を落とした。ハイパーアクティブな女子高生と議論する気力は残っていない。それに……どうせこの後の予定なんて決まっていないのだ。


「ああ……わかった。いいよ」彼は観念して答えた。


「やったぁ!」


エララは歓声を上げた。迷いもなく、彼女はすぐにデヴォンの腕を組み、ぎゅっと抱きついた。


「さあ! 私の車、外にあるから!」


「行ってらっしゃい! 遅くなりすぎるなよ!」


カウンターの奥から手を振る老ゴブリンを背に、デヴォンはセクシーなゴブリンの少女に店から引きずり出されていった。


デヴォンは、自分が計画していなかった冒険(デート?)へと連れ去られながら、ヴェスペリアの灰色の空を見上げることしかできなかった。


『俺の人生……どんどん変な方向に向かってないか?』


彼はそう思いながら、身を任せた。


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