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アンノウン その後

2017年秋。


TVの懐かしのアニソン特集を、半ば惰性で眺めていた俺にとって、

東映スパイダーマンの「誓いのバラード」の次に流れてきた

「ジャッカー電撃隊のテーマ」は、初めて耳にする曲だった。


何気なく画面を見ていると、

背後に差し込まれる戦隊の戦闘シーンが目に入る。


爆発も、決めポーズも、どこか噛み合っていない。

演出としては粗いはずなのに、なぜか目が離れない。


――妙に、引っかかる。


俺はその違和感ごと、

この作品の世界観に興味を抱いていた。


たぶん、となりで毛づくろいをしている猫も、

同じ感覚を共有していたのだと思う。


明日から、選挙スタッフとして動く。

それなりに忙しくなるだろう。


だが、その前のこうしたリクリエーションの時間も、

フォーカスの観点から見れば、決して無駄ではない。


高専から無事に大学へ編入して、はや二年目。

俺の在籍する国立大学ではカリキュラムの関係で、

実質的には二年編入扱いとなる。


結果として、

セナと同じ年に卒業することになるわけだが、

4月1日という微妙な早生まれの身としては、特に気にもならない。


相変わらず、

あいつが厄介ごとを持ち込んでくる件についても、

最近では一種の気分転換として処理している。


そのせいか、口コミ経由で

さまざまなトラブルシューティングの依頼が舞い込むようになった。


とはいえ――


「動く標的」の私立探偵、リュー・アーチャのように、

制御できる範囲の危険こそが俺の好物であって、

すべてを引き受けるつもりはない


そうあくまで、

制御できる範囲だけだ。


そして、明日からの依頼は――

衆院選に出馬する女性候補者のガード。


依頼主は、真里谷流の先生。

本来なら凱先輩が適任だが、あいにく渡米中で、

凱先輩からの指名らしい。


候補者とは一度会っている。

印象としては、どちらかといえばアギトさんに近い。


正直、この人外の威圧感を感じる候補者に

本当にボディーガードが必要かどうかは微妙だ。


だが、

彼女の掲げるスローガン――

「富国強民」には、強く共感した。


半導体や太陽電池技術の海外流出。

郵政民営化による郵便預金の海外ファンド運用。

消費税が、実質的に輸出大企業向けの還付制度になっている現実。


このままでは、

農協やNTTが解体され、外資の餌食になる。


それを可能にしているのは、

中国やアメリカ、

グローバリスト官僚とマスコミが絡み合った利権複合体であり、


――十年後、日本は鶏ガラになる。


そう言われても、

過剰な危機煽りには聞こえなかった。


翌朝、

世田谷区桜新町の家のガレージから、

郷ひろみの「バイブレーション」を

口づさみながら、

ガンメタのMGBを出す。


クラシカルな外観とは裏腹に、

中身はエンジンを含めて、ほぼユーノス・ロードスターに入れ替えてある。


名古屋とは違う道路事情だ。

取り回しのいい、こういう小さな車の方が、しっくりくる。


そして親父もいよいよ独立し、

昨年からこのコートハウスに住んでいる。


桜新町駅から南へ五分ほど。

五十坪の角地の大半を占めるのは、

RC擁壁を利用したガレージだ。


その奥に、

申し訳程度に配置された親父の事務所と玄関。


二階と三階は木造の居住スペースで、

コルビュジエの近代建築五原則を踏襲している。


オブジェのようでもあり、

周囲からは、少し浮いた建物だった。


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