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優しいエルフのトーリさん〜怖い顔のおっさん、異世界に転生したので冒険者デビューします〜  作者: 葉月クロル


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第87話 木の実やさんの才能は

「そうだ、もうひとり……いや、ふたり、スキルの確認をしなくちゃいけない人がいましたね」


 トーリは『教会に連れて行く手間が省けますから、可能なら僕が鑑定してしまいましょう』とひとり頷いた。


 これはもちろん、木の実売りのヘラルとその妻アリスのことである。

 ヘラルの売る木の実は、仕入れ先は冒険者ギルドであり、他の木の実の店と変わらない。それなのにとびきり美味しいのだ。

 これはなにかスキルを持っているに違いない、とトーリは考えている。

 

 この世界には特殊技術、ゲームではスキルと呼ばれる能力を持っている人が多く、教会に行って調べてもらうことができる。また、『鑑定』というスキルを育てた者なら人も鑑定できるので、そのような人に料金を払って見てもらうこともできるのだ。


 トーリはすでに『神鑑定』というスキルを持っているので物の鑑定に活用していたが、リスにもかけられたのでヘラルの鑑定もできそうだ。


「ガンジョーさん、素晴らしい武器をありがとうございました。これから用事を一件片付けて、武器を試しに行ってきます」


「おう、気をつけてな」


「あと、何か欲しい素材があれば、冒険者ギルドの方に連絡をください。新しい武器が手に入ったので、そろそろダンジョンに挑戦してみようかと思っているんです」


「そうか。ダンジョンの魔物は変わった素材をドロップするからな。浅い場所なら魔物はそれほど強くないし、慣らしで入ってみるのもいいかもしれん……あれだけデスウィンドマンティスを狩れるやつだからなあ……むしろ、ぬるいと感じてしまうだろう。だが、ダンジョンの狩りは森とは訳が違うことを忘れるなよ」


「はい」


「す」


 トーリとベルンは武器屋をあとにして、木の実売りの店へと歩いていった。



「あっ、いたいた。ヘラルさん、こんにちはー」


「すー」


 木の実の味にうるさいリスには、このヘラルは町で一番貴重な人物なので、愛想よく挨拶をしている。


「こんにちは、トーリさん。木の実をどうぞ」


 以前、彼の妻のアリスを助けた代償に、トーリたちには無料で木の実を渡しているのだ。

 紙の袋に入った木の実を、リスが「す」と受け取った。


「今日はよく売れたので、在庫はこれだけなんですよ。店を閉めて、いったんうちに戻ろうと思っていたんです」


「そうなんですね。それでは家まで一緒に行ってもいいですか? 実は、ヘラルさんとアリスさんにお話があるんです」


 トーリはさりげなく店じまいを手伝いながら、ヘラルに夫婦を鑑定したいという話をした。

 ヘラルはもちろん、「トーリさんは鑑定もできるなんて素晴らしいですね! ええ、喜んで」と快く了承した。


 ヘラルの家に着くと、アリスと娘のティアが歓迎してくれた。


「トーリお兄ちゃん、いらっしゃいませ! お母さん、お兄ちゃんにおやつのクッキー出してもいい?」


「もちろんよ。トーリさん、いらっしゃい」


「お邪魔します。アリスさん、体調はどうですか?」


「すっかり元気になりました。ありがとうございます」


 トーリが上級回復薬を使ったので、アリスは全身が健康になって、少女のようにバラ色の頬をしている。この一家で一番元気かもしれない。


「あまりお砂糖が入っていなくてお恥ずかしいのですけれど、よかったらお召し上がりくださいね」


 アリスがお茶とクッキーを出してくれたので、トーリは遠慮なく食べた。


「……うん? 香ばしくてとても美味しいです。アリスさんにはお菓子作りの才能があるのかな?」


「まあ、嬉しいわ」


「お母さんはね、なんでも美味しく作るの」


 トーリの膝によじ登ったティアが、クッキーを食べて「美味しーい」と笑った。


「もしかして、アリスさんが木の実を炒っているんですか?」


「いいえ、それは夫の仕事なんですよ。わたしが手伝うと味が変わってしまうらしくて」


「なるほど」


(ということは、やっぱりヘラルさんになにかスキルがあるみたいですね)


 トーリはアリスにも鑑定をしたいという説明をした。


「おふたりのプライバシーの問題もありますので、特殊技術のみ見えるような鑑定をしたいと考えています。大丈夫でしょうか?」


「もちろんですよ。トーリさんは大恩人ですからね、なんでも見てくださって大丈夫です」


「ありがとうございます。それでは失礼して……」


 彼は「特殊技術スキルだけわかるように……『神鑑定』」と、ふたりを鑑定した。


「やっぱりそうでした。ヘラルさんには『木の実マスター』というスキルが、そしてアリスさんには『小麦マスター』というスキルがありましたよ」


「わたしたちに、スキルが!」


 ヘラルとアリスは顔を見合わせた。

 トーリはにこにこしながら言った。


「もしよければ、おふたりで力を合わせて僕がお勧めするお菓子を作ってくれませんか? きっととても美味しくできると思うし、高く売れると思うんですよ」


「それはもちろん」


「作りますけど」


「それじゃあ、材料を買ってきますね! ヘラルさんは、いつも通りに木の実を炒っておいてくださいね」


 そう言うと、肩にリスを乗せたトーリはうちを飛び出して市場へと向かった。そして、鑑定してよいものを見つけると、小麦粉と砂糖、バター、生クリーム、卵を購入してマジカバンにしまい、木の実屋のうちに戻った。


「ただいま戻りましたー」


 そして、トーリの指示でヘラルは炒った木の実を荒く刻んで、生クリーム、バター、砂糖を煮詰めたものに絡めてキャラメルナッツを作る。

 アリスが小麦粉、卵、バター、砂糖で作ったクッキーだねを薄く伸ばしたものの上にキャラメルナッツを広げて焼いて、冷めたら食べやすい大きさに切った。


「これは……なんて美味しい食べ物なの!」


「すごい、これは、すごいな」


「このおやつ、美味しーい。王様のおやつなの?」


 アリスとヘラルとティアは、できあがったナッツクッキーを試食して、その美味しさに驚いた。


「大成功! これは素晴らしいお菓子です」


「す! す!」


 トーリもリスも、大喜びで食べた。

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