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優しいエルフのトーリさん〜怖い顔のおっさん、異世界に転生したので冒険者デビューします〜  作者: 葉月クロル


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第68話 頼りになる先輩?

 その後、リシェルから丁寧な指導を受け、自分が『変質者的な振る舞い』をしていたことを理解したイザベルは、テーブルに頭をめり込ませるほど落ち込んだ。


「すまなかった。今まで変な男に言い寄られて、散々不愉快な目に遭っていたというのに、同じようなことをトーリにしていたとは……部族の名を辱める行いをしてしまった……」


「す」


 リスが『その通りだ、今後は気をつけるように』と追い討ちをかける。


「ごめんねー。イザベルはこの通りの見た目でしょ、今はDランクに上がったから大抵の火の粉は振り払えるけれど、若い頃は大変だったみたい。ちょっと笑顔を見せると馬鹿な男たちが勘違いして絡んでくるから、ほら、この通りの無表情になっちゃったしね」


 リシェルの説明に、無表情エルフは頷いた。


「舞い上がった男たちを拳で追い払うのが大変だった。主にヤった後の始末が」


「そうだったんですか。さぞや血の雨が降りまくったんでしょうね」


「そうだな。基本的に流血沙汰であった。そこまでやらないと諦めないのだ」


「うわあ」


 トーリの脳内に、黙々と拳を振るってから、物言わぬ姿になったならず者たちを山と積んでいく無表情なイザベルの姿が浮かんだ。


(ベルナデッタさんも言ってたけれど、ここは美人には生きにくい世界なのかな)


「トーリくんも気をつけたほうがいいわ。この町はかなり治安がいいけれど、他所に行ったら町を歩くだけでも危険がいっぱいよ。誘拐されるかもしれないからね」


「さらわれるんですか! それは怖いですね」


「す!」


 保護者のベルンも警戒している。


「残念な話だけど、エルフが自分の故郷からなかなか出てこられないのは、悪い考えを持つ者が多いせいなのよね。見目麗しいことが災いするなんて嫌な話ね。イザベルみたいに攻撃的なエルフじゃないとやっていけないのだと思うわ」


 その攻撃的な美女は「身体のわかりやすい場所に、武器を装備しておく習慣をつけろ」とトーリにアドバイスした。今夜の『烈風の斬撃』は武装していないが、イザベルは腰にナイフを下げていた。


「トーリよ、顔にこうして、倒した相手の血をつけておくのもいいぞ。わたしは初めての町に行った時には、最初の獲物……倒した奴の血をこうしてなすりつけて歩くことにしていた。こんな感じで模様にするのもいいな」


 イザベルが、指についた血を頬につけるカッコいいやり方を教えてくれたが、トーリは無言になった。

 リシェルもマグナムも無言で、デリックは両手で顔を覆って「今、獲物って言った……おまえはどこの蛮族だよ」と呟いた。





 翌日、トーリはマーキーたちと待ち合わせをしているので、狩りの準備を整えるとリスを肩に乗せて、冒険者ギルドが鳴らす二番目の鐘に間に合うように銀の鹿亭を出た。


「おはようございます、シーザーさん」


「おう、おはようさん」


 朝のこの時間は、いつも遠巻きにされがちなギルドマスターも忙しい。トーリは総合受付から離れた、奥まったところにある待合場に行った。


 そこに置いてある簡単な木の椅子に腰かけて、トーリは臨時のパーティメンバーを待つ。


「森の中から釣るのにいいのは、定番のカタコブイノシシに加えてバッファローバードかマッドボアでしょうか」


 カタコブイノシシは、コブの中に質の良い魔石を持っていることがあるし、さっぱりした赤身肉や丈夫で柔らかな毛皮も人気なので高値で売れる。

 バッファローバードは角が二本ある好戦的な鳥で、怖いダチョウといった感じの魔物だ。鳥肉なので味が良い。

 マッドボアはカタコブイノシシよりもさらに大きなイノシシ型の魔物だが、興奮すると木とか地面とか岩とかに意味もなく体当たりする傾向があり、動きを見定めれば簡単に倒せるらしい。こちらは脂がのった肉が美味しいので、人気がある。

 両者とも身体が大きな魔物で、群れを作らない。そして、肉が美味しいので、買い取り所で高値で引き取ってもらえるのだ。


「ドクヒョウの魔石は高いけど、五頭から下手すると十頭以上の群れで出てくるというから、まだ僕たちだと危ないですね。それに毒攻撃というのも不安材料ですからやめておきましょうか」


 トーリは水系統の回復魔法が使えるため、毒の浄化はできる。だが、まだ耐性が低い今、戦闘中に毒をくらってしまったら即動けなくなるだろうし、治療する余裕がないかもしれない。


 ダンジョンに潜るようになると、倒した魔物が消える時に発する気が倒した者の身体に馴染むため、扱える魔力量もだが毒や精神汚染に対する抵抗力や耐性が上がってくる。そのため、ダンジョンに潜れるか否かで冒険者の実力に大きな差がついていくのだ。


 ドクヒョウは草原のような開けた場所を嫌うため、滅多に森から出てくることはない。わざわざおびき出さなければ大丈夫なはずだと、あらかじめ魔物について調べておいたトーリは考える。


「念のため、みんなには解毒薬を用意してもらわないと、ですね。出かける前に店に寄りましょう」


 回復薬や毒消し、魔物除けといった備品の準備にもお金がかかるので、初心者が冒険者をしながら資金を貯めるのはなかなか大変なのである。

 マーキーたちは皆、ダンジョン都市に来る前に普通の動物を狩ったり、採取をしたり、魔石に魔力を込める仕事をしたりしてお金を貯め、武器を用意したので優秀だと言えよう。


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