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優しいエルフのトーリさん〜怖い顔のおっさん、異世界に転生したので冒険者デビューします〜  作者: 葉月クロル


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第60話 小鳥と一緒に

 トーリは右肩にリス、左肩に青い小鳥を乗せて、ダンジョン都市を歩いてヘラルの家へと向かった。途中で見覚えのある集団に出会う。


「トーリじゃん、なにしてるんだ?」


「おはよう、トーリ」


「おはよう」


「あっ、マーキーにジェシカにアルバート、おはよう。ギドはどこ?」


「昼に食べる携帯食を買いに行ってるぜ」


「そうなんだ。携帯食か、冒険者っぽいね。僕は今、病気の人の治療を請け負ってるんだよ」


「病気の治療をするのか! トーリはいろんなことができてすげえな」


「まだまだだよ、今回は特別なんだ」


「わたしたちは、草原に狩りに行くんだよ」


「トーリがいないと前衛三人に後衛がひとりになっちゃって、バランスが悪いから大物を狙うのは難しいんだよ。力押しをするにはまだまだ僕たちじゃ攻撃力が足りなくって。もしよかったら、今度一緒に狩りに行こうよ。トーリは回避タンクっていうの? 魔物をうまく引きつけてくれるから助かるんだよね」


 槍を持ったアルバートが言い、マーキーは「うん、なんか、そういうことなんだぜ」とわかっているのかいないのか微妙な合いの手を入れてから「頼むよトーリ!」と彼の背中を叩いた。その勢いが良すぎたので、肩のリスと小鳥がぴょんと飛びあがる。


「おまえは平和そうな装備だな」


 だが、リスと小鳥は装備ではない。


「その子たちはペットなの? 可愛いね」


 ジェシカに頭を撫でられて、リスのベルンは「す」と得意げに鳴いた。


 そこへ串焼き肉をかじりながらギドが戻ってきた。


「よお、トーリ! 肩にお弁当乗せてるんか?」


「す!」


 ベルンが怒って尻尾の毛を逆立てたので、トーリは「やめてよ、ベルンが気を悪くしちゃうよ」と抗議した。

 ベルンはどこかに隠していた木の実の殻をギドに投げつけて、かじろうとした肉の串にくっつけたので、ギドは「あー、やられた。リスの復讐だ」と笑った。


「あれ? この小鳥はよくできた作り物だね?」


 めざといアルバートにバレてしまったので、説明している時間がないトーリは「ごめんね、これから患者さんのところに行くから。またね」と片手を上げて、その場をあとにした。


「トーリ、冒険者ギルドに伝言を残しておくから、狩りに行く日を調整してくれよー」


「わかったよ、一緒に狩ろうね!」


「す!」


 大忙しのエルフとリスであった。





「おはようございます」


「トーリさん、おはようございます。よく来てくれました」


「お兄ちゃん、おはようございます」


 彼はドアを開けたヘラルと奥から駆けてきたティアに招き入れられる。


「アリスさん、おはようございます。身体の具合はどうですか?」


 彼は寝室で横たわるアリスに声をかけた。


「とても調子がいいです。今朝は久しぶりに、椅子に座って朝食をとることができました。でも、少し疲れてしまって……」


「そうですか」


 トーリは心配になったが、肩の小鳥がベルナデッタの声で「身体を動かすのはいいことよ。血の巡りが良くなるし、固まっていた場所をほぐすことができるの」とアドバイスしてくれた。


「わあ、今、鳥さんが喋ったよね?」


 ティアが驚きの声をあげる。


「賢い鳥さんなの?」


 すると、小鳥は笑い声をあげた。


「違うわよ、お嬢さん。わたしはベルナデッタ。遠いところからこの小鳥を通してお話をしているの」


「ベルナデッタさん? トーリのお友達なの?」


「トーリが持っている上級回復薬を作った薬師よ」


 それを聞いたヘラルが驚愕した。


「ええっ、高名な薬師のベルナデッタ様ですか!? こんな狭い家にお呼びするような方ではないのに、ああ、どうしたらいいんだ……」


 アリスもぽかんと口を開けて小鳥を見ている。


「ベルナデッタ様って、もしかすると魔女様なの? 小鳥に変身したのね、すごい!」


 ティアは小鳥の瞳を覗き込んで「すごいすごい、魔女様はお空も飛べるのね」と楽しそうだ。


 小鳥は首を傾げて「ちょっと違うけれど……まあ、似たようなものね」とさえずった。


「さて、アリスさんを少し診てみましょうか。トーリ、この人の手首に立てた指をそっと当ててみてちょうだい」


「ああ、脈を診るんですね」


 トーリの返事を聞いた小鳥は驚いてチチッと鳴いた。


「あなた、詳しいのね。そうよ、脈がしっかりと打っているかどうかと、飛ぶことなく安定しているかを診て欲しいの」


 トーリはアリスの腕を「失礼しますね」と取り、手首にそっと指先を当てて脈がわかる場所を探した。


「……しっかりした脈です。飛んでもいません」


「次は、下のまぶたの裏側を見て」


 トーリは親指をアリスの目の下に当てて引き「赤いです」と言った。


「今朝は食事をしっかりと食べましたか?」


「はい、美味しくいただきました……」


 呆然としながらも、アリスは答える。


「血も不足していないわね。トーリのアクアヒールが効いたのかもしれないわ。これならすぐに上級回復薬を使うことができるわ。旦那さん、飲み水を多めに用意してちょうだい」


「わっ、わかりました!」


 ヘラルは台所に行くと、カップにたっぷり二杯の水を持って戻ってきた。小鳥はトーリに「こっちのカップに、上級回復薬を……そうね、だいたい瓶の四分の一くらいを入れて。目分量で構わないわ。そうしたら、アリスさん、ひと口お飲みなさい」


 アリスはカップを受け取ると、恐る恐る口をつけた。


「まあ、なんて美味しいのかしら! それに、おなかから温かなものが身体中に広がってきたわ」


「身体の調子を整えながら、病気のもととなるものを消しているのよ」


「そうなんですね」


 そのままアリスの様子を見て、身体の温かさを感じなくなったらさらに五口の薬入りの水を飲ませる。


「今度は胸がとても熱くなりました」


 アリスの顔は真っ赤になっている。


「アリスさんは咳が酷かったから、肺に感染していたんでしょうね」


「その通りよ、トーリ。肺にいる悪いものをアリスさんの身体が叩いているから、全身が熱くなっているの」


 説明する小鳥は、いつの間にかトーリを呼び捨てにしていたが、もちろん彼はそんなことを気にしていない。


「発熱していると思うけれど、アリスさん、大丈夫?」


「はい、大丈夫です」


 しばらくするとアリスの熱が下がり、彼女は「胸の変な感じがすっかりなくなりました」と嬉しそうに言った。

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