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優しいエルフのトーリさん〜怖い顔のおっさん、異世界に転生したので冒険者デビューします〜  作者: 葉月クロル


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第27話 青春

 その後、ジェシカ、ギド、アルバートの三人も木製の武器を使って手合わせを行い、グレッグの指導を受けた。


 ジェシカは火の魔法使いなので、魔法攻撃と、敵と近接してしまった時の杖を使った立ち回りを見てもらう。

 彼女の火魔法の威力は的の真ん中を焦がすくらいだがコントロールが良く、連続して当てることができた。


「風の魔法も少し使えますが、まだ不安定で実用できません」


「そうか。その年齢でここまで扱えれば上等だぞ。実践で使っていくうちに威力も上がるから、まずは草原で魔物狩りをするといい。簡単な護身術も身につけているのはいいな。後衛でもある程度の戦闘力がないと、冒険者としてやっていくのは難しい。そのためにも体力の向上を目指すことも忘れるなよ」


「はい」


「風魔法も、できれば毎日同じように使って慣れていけ。あとで魔法使いの講習会も受けてみろ。火と風の複合魔法は強力だから、そこまでレベルを上げられるように精進しろ」


「はい」


 杖を握りしめて、ジェシカはますますやる気になった。


 ギドは体格が良く力があり、扱いが簡単だからという理由で棍棒を使っている。彼のマイ棍棒は先の方が金属で覆われていて、棘のようなごつごつがついている。鬼の持つ金棒のようだ。


「単調な攻撃だが、重さがある。この調子で鍛えていけば、魔物にも打ち負けないようになるだろう。できればフェイントも使えるようになるといいな」


「難しいけどがんばるっす」


「いろんな人と手合わせをして、そこから学び取るといい。強い魔物の方がフェイント攻撃が巧みだが、大きな怪我をしては元も子もないからな」


「やってみるっす」


アルバートは魔法付与槍士で、金属製の槍の刃先に雷属性の魔力を纏わせたり、毒性を付与することができる。


「面白い攻撃法だが、毒を使って殺した魔物は食べられなくなるから、気をつけて使った方がいい。うっかり料理して食ってパーティが全滅なんてことになったら、泣くに泣けないぞ」


「そんなの、絶対に嫌です」


「慣れてきたら、雷魔法の強弱をコントロールできるようになるといい。弱い魔法でも魔石の近くに槍を刺し、そこに撃ち込めば即死する。魔石の周辺に魔物の急所があるからな。魔力を節約して、効果的な攻撃ができるように訓練しておくと、長時間活動できるようになる」


「はい」


 教官を務めるだけあって、グレッグは博識で教えるのが上手かった。

 熱心に指導を受けると、子どもたちは頭も身体もパンクしそうになった。今日の初心者講習はここまでとなり、明日は草原に出て実践的な戦闘訓練を行うことになった。


「このメンバーはなかなか実力が高いな。全員、戦闘訓練に参加を認める。午前は草原の浅い場所で弱いウサギやネズミとやり合って、魔物狩りの基礎を身につける。その出来によって午後の訓練を決めるから、しっかりと学べよ。昼は簡単な自炊についても教える」


 想像以上に丁寧な講習内容に、トーリは内心で驚いた。


「では、解散だ。充分に休息を取り、武器の手入れをしておけ」


「はい。グレッグ教官、ありがとうございました!」


 そう言ってトーリが頭を下げると、子どもたちも同じように頭を下げた。

 グレッグは『おや、ずいぶんと礼儀正しいな』と感心して、これはトーリの良い影響だとまだ幼い顔をしたエルフを見た。




「はあ、疲れたぜ」


 元々体力があり身体強化もできるため、本当はさほど疲れていないのだが、マーキーはカッコをつけているのかそんなことを言い、肩をぐるぐると回した。


「みんなはこれからどうするんですか?」


 トーリが尋ねると、「まずは昼メシ」「午後は初心者向けの簡単な依頼を受けるつもりだよ」「俺はもう少し剣の訓練をするぜ。何かをつかみかけているところなんだ」「わたしは魔石に魔力を入れる仕事を受けているから、ギルドの中で働いていくよ」とギド、アルバート、マーキー、ジェシカが答えた。


 なぜかトーリの肩に戻ったベルンも「す!」と答えた。


「そうなんですね。よかったら、一緒にご飯を食べませんか? せっかくこうして友達になったことだし」


 トーリがそう言うと、子どもたちとリスも「お、だよな、友達、だな」「食べようぜ、食べようぜー、へへっ」「そうよね、ふふっ」と照れたように同意する。

 なぜかリスも「す」と照れていた。


「……トーリよう」


「なんですか、マーキーくん」


「俺とダチだっていうならよう、そのスカした喋り方はよせよなー」


 こちらも少し照れているマーキーが、そっぽを向きながら言う。


「座りが悪いっていうか、よそよそしいっていうか、落ち着かねーんだよ!」


「そうですか……じゃあ、マーキー!」


「なんだよ?」


「その、一緒に、ごはんを、食べよう、ぜ?」


 トーリが真っ赤な顔をして、懸命に『馴れ馴れしい口調』で話すのを見て、マーキーは目を丸くし、そしてゲラゲラ笑いながらトーリの肩を叩いた。


「おう、んじゃ、みんなでメシを食いに行こうぜ!」


 トーリがさらに赤くなりながら「行こうぜ……」と呟き、「なんか恥ずかしい」と両手で顔を覆ってしまったので、子どもたちはとてもリラックスして楽しい気分になり、大きな声で笑いながら「行こうぜ!」「行こうぜ」と声をかけ合って、また笑った。


 そして、その様子を見ていた訓練場の冒険者たちも「なんだよ、青春かよ」と言いながら楽しそうに笑ったのであった。

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