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優しいエルフのトーリさん〜怖い顔のおっさん、異世界に転生したので冒険者デビューします〜  作者: 葉月クロル


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第24話 トーリの腕前

「ただ、今の攻撃ならば低級の魔物には効くが、少し強いやつには難しいかもな」


「連射するか、矢の数を複数にすれば対応できるかな……」


 トーリは弓をかまえると、的の中央に二連続、三連続、四連続、と矢を増やしながら放つ。さらには上、下、右、左、真ん中と綺麗に射ち分けてみた。


(このキャラはかなり弓スキルのレベルを上げておいたから、上手いもんですね)


 桃李は弓に触った経験などないが、技術はしっかりと身体に馴染んでいるようだ。


「さすがはエルフ、器用なもんだ」


 シーザーが感心している。この世界でもゲームと同じように『エルフは弓の扱いが得意』らしい。

 

「次は矢の形を変えてみますね」


 トーリはそう言うと素早く弓を構えて、身体の一部を動かすようなまったくりきみがない自然なフォームで次の矢を放った。リスのベルンも安定した彼の右肩で居心地良さそうにしている。


 それは音もなく的の中央を破壊してから、後ろの壁を少し削って消えた。


「あっ、今度のは強すぎたかな。すみません、壁をやっちゃいました」


「気にするな、修復魔法もかかってるからなんてことない。ここの領主様は太っ腹で、冒険者ギルドにけっこうな額の助成金を払ってくれるんだ」


 シーザーは的に近づいて穴を見ると「この威力なら草原に出るくらいの魔物にはほとんどに通用する」と満足そうに言った。


「むしろオーバーキル(やりすぎ)かもな。勢い余って味方を傷つけないように注意した方がいいぞ。無音でこれだけの攻撃力だ、充分使えるな」


 遠くから音もなく飛んできた光の矢を、避けるのは難しい。


「遠距離は合格だ。攻撃の強度を自由に調整できるように、フィールドに出る前に訓練をしておけよ。近接の方は、俺と無手でやってみるか。ちょっと動きを見せてくれ」


「はい」


 トーリは弓をしまうと、笑顔でシーザーと向かい合い「そんな嬉しそうな顔で俺と戦おうとする奴、見たことねえんだが」と呆れさせた。




 手合わせをした結果、身体強化を使った回避能力でなんとかなりそうだということがわかった。


「リスを頭に乗せたままで、見事に全部避けやがって……おまえ、本当に見習いかよ」


 軽く一発当てるつもりだったシーザーは、新人らしからぬトーリの能力に驚いた。


「見習いですよ。僕、殴るのは苦手みたいです。殴った手触りとか嫌なんですよね」


 殴った相手の体内にむちゅっと拳がめり込むところを想像すると、鳥肌が立つトーリである。


「ナイフは使えるだろう」


「そっちの方が得意ですね。やって見ますか? ちょっとくらい切れちゃっても、回復魔法で治しますから」


「馬鹿野郎、人を魔法の練習台にする気かよ」


「あれ、わかっちゃいましたか。でもほら、モリーさんに段階を踏んで練習するようにとアドバイスをもらったんです」


 てへ、と笑って誤魔化そうとするが、しかめ面のシーザーに「可愛顔をしても駄目だ。ったく、油断ならねえ野郎だな。おまえと真剣でやり合ったら、身体中を薄く切られた挙げ句に嬉々として回復魔法をかけられそうだ」と文句を言われただけだった。


「だが、トーリは腕はいいが魔物との戦闘経験がまだまだだな。おまえみたいなやつが判断を誤ってころっとやられちまうんだ。大事な仲間を傷つけてしまう恐れもあるぞ。まどろっこしいかもしれねえが、モリーの言った通り、段階を踏んで自分を育てていけよ」


「はい。仲間を攻撃することだけは避けたいし、僕も痛い目に会うのは嫌なので、命を大切にしながら経験を積んでいこうと思いますが……」

 

 トーリは訓練場に入ってきたグループを見ると、シーザーに「あの子たちはなんですか?」と尋ねた。

 年配の男性が率いるのは、外見が中学生くらいのトーリよりも、歳下に見える男の子や女の子だった。


「あれは無料の初心者講習会だ。まだ若い見習いの冒険者を集めて、冒険者になるための知識を教えている。子どもが死ぬのは嫌なもんだからな、採取メインでやる奴にも基本的なことを叩き込んでおかないと……なんだ?」


「ほら、僕! ここにも見習いの子ども! ここにもいますよね!」


 目をキラキラさせながら、トーリは子どもアピールをする。


「僕も初心者講習を受けたいです!」


「えー、要るか? おまえ、腕はそこそこあるし世慣れてる感じがするし、自分でなんとかできるんじゃねえか? 文字も読めるから、本を読んでおけば講習会を受けるより知識が早く身につくだろう」


「中身はおっさんでも、見た目が子どもですからいけますよ」


「なにがいけるんだよ」


「お友達を作りたいんです。一緒に勉強すれば、お友達になれると思うんです。僕はこの町に来たばかりだから、知り合いもあまりいなくて。このチャンスは逃せませんよ」

 

 彼は友達を作る機会を逃さない男。相手がギルドマスターだというのにまったく臆さずにぐいぐい迫る。


「僕にも基本的な知識を授けてください。これは未来への投資です、きっと立派な冒険者になりますから。 ね? ね?」


「ね? じゃねえよ……まあ、人脈作りも必要か。仕方ない、入れてやるか。おーい、グレッグ、こいつも混ぜてやってくれ」

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