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ようこそ 国立あげは学院 魔法科へ  作者: 北虎田ユウジ
7/7

7話 天道祭

 「二人とも、休暇中、かつこの時間帯にも関わらず来てくれてありがとう。」



 時は8月。あげは学院も"研鑽期"というものを迎え、学院での生活を一旦離れ、全生徒が各々自分のやりたいこと・やるべきことに取り組んでいた。

 一般の高等学校で言うなら「夏休み」にあたるんだろうけど、その実態は毎日が「自由研究」に近い。

 魔法科はどうかというと、決まったイベントは研鑽期の中では一日だけだ。


 今日がその日であり、21時にヤエ先輩の招集の元、私、イロハとトワ先輩で3人が一緒になった。

 三人が揃うのは入学式以来だ。一体何が始まるんだろう…



イロハ「ヤエ先輩から誘いがかかるのって珍しいですね!この時間帯だと肝試しとかですか?」


 ヤエ「残念ながら違う。今日集まってもらったのは他でもない、年に一度のこの日にひらかれる"天道祭"が、私たち魔法科の研鑽期一大イベントなんだ。」


イロハ「天道祭…お祭りか何かですか?」


 トワ「実際にお祭りもやってるんですが~…私たちはまた別のことをしますよ~ ほら、もうすぐ見られますよ!」



 21時になった瞬間、満点の夜空に無数のヒトダマがゆらめきはじめた。いや、単なるヒトダマじゃない…?



イロハ「よくよく見たら…動物?ヒトダマみたいな尻尾が生えてる!」


 ヤエ「来たな。二人とも任務だ。天道祭が終わるまでに1匹でも良い。あの生き物を飼いならすんだ!」


イロハ「えぇ!?いいんですかあんな不思議な生き物飼っちゃって!」


 ヤエ「自信があるか?一応この結果は特別単位として記録されるからな。一筋縄ではいかない事だけ念頭に置いておくと良い。では、健闘を祈る!」



 そういうとヤエ先輩は不思議な景色の元へと向かっていった。



 トワ「うふふ、私からもイロハちゃんに一つ。あの子達を一匹でも飼うと、魔法の力が強くなりますよ~ アニメで言うなら契約、みたいな感じでしょうか?」


イロハ「なんと!めちゃくちゃ大事じゃないですか!」


 トワ「()()()()()、数は特に意味はないのかもしれませんね~ それと、うまくいかなかったら、ヤエ先輩の元へ行ってみてもよいかもしれません。コツとか教えられるかもしれませんよ~」


 トワ先輩もまた、夜空を駆けて行ってしまった。

 契約…そう言われたら使い魔に見えてきたな…よーし…私も張り切って飼いならしてみせるぞー!



 … … …



 … … …



 … … …




イロハ「全っ然つかまんないよーーー!!!」



 何の進展もないままあっという間に30分が経過した。

 あの使い魔…空をふよふよしてて一向に降りてこないんだもん!先輩達みたいに空飛べるわけでもないし…

 かといって地上の子を狙ったらめちゃめちゃ逃げられるし…



イロハ「…先輩達の様子を見に行くか…」


 私はアプリを使い、まずはヤエ先輩の様子を見に行く。

 お悩み相談に使う「MoM」というアプリは、実はひっそりと自分だけ見えるピンを利用していたりする。先輩達はもちろん、今日だとターゲットである使い魔にもピンを打っているのだ!


 ヤエ先輩の邪魔にならないよう、物陰からそっと覗く。発生源からかなり遠く離れている場所だ。



 ヤエ「どうした?群れからはぐれてしまったのか?」



 その使い魔は他のにくらべて大人しいというか…臆病そうな雰囲気だった。



 ヤエ「いや、群れを避けているのか…?経緯は分からないが、このままいるのも寂しいだろう。どうだ?私としばらく一緒に過ごさないか?その分キッチリ鍛えて、仲間を驚かしてやろう。」



 大人しい使い魔は、ゆっくりとヤエ先輩に近づき、顔を擦りつけている。無事にヤエ先輩は飼いならせたっぽいな…

 流石はヤエ先輩…あの姿勢は動物だろうと変わらないんだな…


 ヨシ…次はトワ先輩の様子を…



 「バウッ」


イロハ「どひゃあ!なんだなんだ!?」



 急に吠えられてつい体勢を崩してしまった。振り返ると、いつの間にやら使い魔がすぐそばまで近づいていた!尻尾のゆらめきまで綺麗に隠してるから気づかなかったのか…



イロハ「ふっふっふ…近づいたのは失策!大人しく私の使い魔になっちゃえ!」



 先手必勝!私はすかさず体勢を立て直し、使い魔を捕まえるべく飛び掛かる。

 …結果どうなったか。使い魔は小さく飛び跳ねて私の腕から逸れ、同時に体を方向転換したことにより…私の顔に、再び揺らめきだした尻尾を当てられる形となった。



イロハ「うお熱っつ…くない?結構ひんやり…じゃない!使い魔はどこだ!?」



 その頃にはもはや使い魔の姿はなく…外れの町のような静けさがとても痛い。

 私はMoMをいじったあと、気を取り直してトワ先輩の元へと向かうことにした。



 … … …


 … … …


 … … …



イロハ「…えぇ?」


 トワ「よ~しよしよし、皆素直でえらいですね~ い~っぱい甘やかしちゃいますよ~」



 発生源付近で、トワ先輩が使い魔にめちゃくちゃ懐かれまくっている!

 数は関係ないとは言ってたけど…ああも素直に好かれているのはそれはそれで羨ましいな…なんか1匹くらい転がり込んでくれないだろうか…



イロハ「いやいやいや!ここは自力でいこう!ヤエ先輩に何言われるかわかったもんじゃない!」



 私はおもむろにMoMを開き、そして…


 近くに表示されたピンの方に向かい、声をかける。街路樹の中だったが…そこにはたしかに淡い光があった。



イロハ「そこにいるんだよね?でてきなよ。()()()()()()()()()()()使()()()。」



 そう呼びかけると、木から使い魔が姿を現す。しかし、何のことやらみたいな様子で、大げさに首をかしげている。



イロハ「とぼけても無駄だぞ~ あの時アプリで、近くにあったピンの色を変えておいたんだ。私から離れてくピンの色をね。これでもう、いつでもキミを探し回れる状態になった。逃げも隠れもできないよ!」



 使い魔はふよふよと高く空を漂っている。捕まえられない位置を完璧に把握しているぞ、と言わんばかりに…



イロハ「…決めた。私はキミを私の使い魔にして見せる。といってもエサとかわかんないし、先輩たちから聞くつもりだけど…」



 使い魔は再び地上の、大きなパネルの上に降り立つ。あえて選んで乗っているように見えるその看板は…長崎(ながさき)さんとこの、喫茶店への誘導パネル?ちょうどよく料理の絵に身体擦りつけてるし…


 もしかしてアイツ…それなりに人の料理も食べられるの…?

 となれば、ここは一発…



イロハ「ふっふっふ…これでも私、その人から料理を教わり始めたんだよね~ プロには程遠いけど、美味しい料理は作れると思うけどな~ その前に契約してもらわないとな~」



 動物に向かってこんなこと言うとは思わなかったけど、一応単位になるほど重要なイベントなんだ。一時の恥くらい、なんてことない!


 そして使い魔はというと、こちらをじっと見つめながら、じりじりと歩み寄ってきた。

 警戒心なのか、はたまた猜疑心なのか…私を見る目がなんかかわいくないというか…

 いや、料理に食いつく動物がそんな可愛くないか…



イロハ「それで、何が食べたいの?パン系?」


 「・・・」


イロハ「うわぁ無関心…卵とかいけるのかな?」


 「・・・!」フリフリ


イロハ「じゃあ……」



 何度か問いかけをした後、オムライスを出したら無事、使い魔が頭に乗っかってくれた…


 … … …


 … … …


 … … …



イロハ「ってなんでだよー!私の使い魔すごい人間臭いんだけど!」


 ヤエ「イロハ、まずはおめでとう。この子達は個性が色々あるからな。そういう個体がいてもおかしくないだろう。」


イロハ「ぐぬぬ…もっと愛くるしい生き物を期待していたのに…!」


 トワ「イロハちゃん。いざとなったら私たちも一緒にお世話しますから。頼ってくださいね~」


イロハ「そういうトワ先輩は、結局1匹だけにしたんですか?」


 トワ「やっぱり一度にお世話できるわけではないので…でも、来年は沢山お世話できるようになりたいですね~」



 あんまり実感がわかないけど、何とか使い魔を従えることができた。時刻は23時。天道祭はもうじき終わりを迎えようとしていた。



イロハ「よ~し、時間だいぶ持ってかれたけど、残りの天道祭を思いっきり…痛ぁ!」


 ヤエ「ふふっ、早くご飯を食わせろ、とでも言いたげだな。イロハ、普通の生き物でなくても、1つの命だ。大切に世話するんだぞ。」


イロハ「くぅ~… わかりましたよぉ。ホラ使い魔、オムライス一緒に食べよっか。」



 今こそ…ヤエさんも誘って3人で過ごせると思ってたんだけどなぁ。

 でも、仕方ないか。先輩方もお世話で忙しいだろうし、私もコイツのお世話しないとなぁ…


 …あれ?天道祭のこのイベントって毎年あるのかな?トワ先輩達は去年も使い魔を…ということは?

 どうにも、この使い魔との生活が、長いものではないように思いながら、私は使い魔と共に家に帰ったのであった…

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