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ようこそ 国立あげは学院 魔法科へ  作者: 北虎田ユウジ
4/6

4話

前回のお話から大分間をあけての投稿になってしまい申し訳ございません。

ここからはローペースになります。また、全13話の予定としますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

 魔法科、そして魔法少女。

 今までにそういった漫画やアニメは何度か通ってきたけど、いずれも毎度事件を解決していて、それが日常だと思っていたものだ。



 「そりゃ、もう少し平和じゃないと街も大変かぁ…」



 魔法科室にて、そんな言葉をぼそりと呟く。山盛りのタスクを片づけた後なのだからこんなものである。

 あげは学院の各科のカリキュラムは、高等科3年間にしてはかなりハードめに組まれていて、だからこそ、体験入学のノリで他のクラスに立ち寄る、なんてこともできないようになっている。

 せめて希望学科の一つくらいはやってみたい思いもあるけど、最初のタスク…調理室を訪ねた際の備品の管理具合を見るに、下手に取り扱えないんだろうな…



 (次の休憩時間、あれに挑戦してみるか……)



 それは、所謂正真正銘のお悩み相談である。

 ハードなカリキュラムなのだから、それに音を上げる場合があってもおかしくはない。問題は時間帯…

 この類だけは、緊急でもない限り休憩時間の間しか話を聞くことができないのだ。

 いつもならトワ先輩の専売特許だが、それでも解決してないということは、それだけ苦戦しているのだろう。


 … … …


 ふと、外でなにやらざわめいているのを耳にした。

 グラウンド…いや、もっと遠くからだな…



 コン コン コン


 「失礼する。イロハはいるか?」


 「ヤエ先輩!お忙しいのにどうしたんですか?」


 「私が出るということはそれだけ事が大きいということだ。今すぐ準備をしてくれ。貴重品はもっていかないようにな。」


 「ま、まさか……」


 「ようやく見学の機会だ。駆除するぞ、ゲコを。」



 入学してから2か月目…

 とうとう来てしまった。平和を乱す、怪物退治が……


 「場所はここより東に約1.5km…ちょうど()()()()()()西()()といったところか。」


 「え、すごい地理力!そこまでわかってるんですか!?」


 「先導する者としてはこのくらいは当然だ。イロハ、私のそばを離れるなよ。」


 そういうとヤエ先輩は魔法科室のバルコニーの窓を全開にした。穏やかな風が流れるそれは、ある種の嵐の前の静けさも感じられる…

 ヤエ先輩が竹刀を地面に突き立てると、そこから魔法陣が浮き上がる。それと同時に、ヤエ先輩の装いも着物のような、魔法少女らしいものへと変化していく…



 「ほ、ホントに魔法少女みたいだ…!」


 「今更何を言う。さぁ、一気に直行するぞ。」



 私たちは既に魔法陣の中。その魔法陣が、目的地に向かって、いきなり空へと飛びあがった!



 「わぁ!っと…あれ?」


 「不思議だろう?反動もなく空を翔ける感覚は。」


 「すっごいです!魔法少女の力って最初から扱えるんですか?」


 「無論、制御する訓練もした。これも最初の数回はトワを空に飛ばしてしまったしな。」


 「え。」


 「…そう、才能は磨かなければ光らない。イロハの場合は御言葉がない分、すぐに魔法少女にはなれないかもしれないが…それを責めるものはいない。時間をかけて、ゆっくりと自分を見つめればいい。」


 「才能…うーん……」



 演算樹がのこした御言葉は、結局ないからああなったのか、それともあった上での結果なのか…

 それに悩む暇もなく、我々は商店街入り口にたどり着いた。

 そこは慌ただしい雰囲気であふれていた。ゲコがどうこう以前に、街のみんなが混乱している…!



 「イロハ。どのみちゲコを探すのに時間がかかりそうだ。街の人々を落ち着かせるよう、動いてくれないか?流石にイロハをいきなりゲコと接敵させるのは…」


 「危ないですよね!!!そうですよ!私もそう思います!!!」


 「…ヤケに食い気味だな…」


 「ゲコさえ関わらなければお安い御用です!任せてください!」



 …だってゲコなんて見たくもないし。


 … … …


 ヤエさんがゲコを探しに向かったところで、私もこの騒ぎをどうにか収めないと!

 まずはどうにか注目を集めて、どうにか落ち着かせてからどうにかこうにか……



 「…キミ、最近この街に来た子だね。」


 「へ!?そうですけど…」



 不意に壮年の男の人から声をかけられた。ここの人の中ではだいぶ落ちついている様子の人だ。



 「騒がしくてすまないね。騒いでる連中は大体新入りか若い子だ。キミもまだ慣れていないだろう。この町についても、カエル共についても。」


 「それはそうですけど…皆さんは避難とかしないんですか?危ないんじゃ…」



 町の人々が複雑な顔になる。それに伴い、ざわめく声は一旦落ち着いてくれたようだ。



 「あげは町はね、家はアトリエそのものなんだ。あげは学院でも道具の扱いはかなり厳しかったはずだ。…それは住宅であっても同じ。大事なもんが詰まってる持ち場を離れるようなことはまずしない。」


 「ゲコがやってきても、ですか?」


 「ああ。俺からすれば、魔法科の子が来ればカエル共は家に湧いた虫くらいの感覚だな。」



 そうか。

 私、てっきりゲコは不意に襲い掛かる災害か何かだと思ってた。

 とりわけ私がカエルが大嫌いだからというのもあったかもしれない。

 だけど、普段からゲコに見舞われてきた人たちにとっては、トラブルみたいなもので、

 もっと大事なものを、この人たちは持ってる。

 そして…その人たちがこうして身を案じられるのは…先輩たちが……



 「…なんとなくわかりました。私はまだ先輩方みたいな魔法は使えませんけど、そんな私にもできるものはあります。ヤエ先輩に、任されましたから。」


 「なに、新入りがいなければ俺もこうしていなかっただろう。今のところは大丈夫だ。唐突にカエル共が現れない限りは……ん?」



 おじさんの視線が、上へと移った。

 私も皆も、つられて上の方に目をやる。商店街を覆う、大きな屋根まで見上げると…



 「…ねぇ、アレってもしかして…」



 一人が声を振り絞る。張り詰めた空気から、嫌な予感を感じずにはいられなかった。


 影が、屋根から落ちてくる……!

 ズドン、とはいかない衝撃と共に。



 ゲロッ


 「例のカエル野郎だ!自分の身の安全に努めろ!」



 あまりにも不意の出来事に、辺りは再びざわつき、混乱状態になる。その場から逃げる人。指示に従う者。なにより、声が届かなくなる程の雑音で溢れかえった。


 … … …


 私が今、この状況を落ち着かせるには…


 一歩、踏み出すことだ。



 「…おいキミ、魔法が使えないんだろう?なぜ前に出る?」


 「…怖いです。大嫌いなカエルが、めっちゃ大きな身体で目の前にいるわけだし。

  でも……私はこの場を落ち着かせる役目を担いました。そして、この町には守るべきものが沢山あることだって知りました。だったら…」



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 「皆さん、ゲコから、私から、離れていてください。」



 なんだろう。勇気をもらったのかな。…一帯の不安を流すような、あったかい風が吹いてきた…



 「キミ…その姿は…?」


 「私が時間を稼ぎます。ヤエ先輩が戻ってくる、その時まで!」


 あったかい風の正体。私の背後に現れた、巨大な手のオーラ…

 その手は、ゲコが放つ嫌なオーラを受け取り、私の元へ伝わってくる…

 どうしてかはまだ分からない。ただ、今は別に関係はない。

 自分の手足のように動くその手を、拳に変え、目の前のゲコに照準を合わせる。


 それで、皆を安心させられるなら…!



 「えーい!いっぺんお空を飛んでこーい!!!」



 巨大な拳は振り上げられた。ゲコを捉え、空へと向かう、アッパーブローとして…!

 ゲコは宙を舞った。商店街の屋根に当たるまではいかないものの、流れるように弧を描いて吹っ飛んでいく…



 「…そこにいたか。」



 刹那、彼方まで飛ばされるかに思われたゲコの動きが宙に浮いて止まった。

 いや、魔法陣に張り付けられているようにも見える。

 そこにもう一つの影がゲコの元へと向かう。きっと誰もが望み、信じて疑わないだろう。



 「…ヤエ先輩!良かった、間に合った…!」


 「我が力が示すは「先導」―――迷えるものよ、我が光に続け!」


 ―――グランド・サイン!


 魔法陣を伝うように、無数の斬撃が飛び交ったような気がした。


 ゲコが再び落ちてくる。今度は特に動く様子もなく、地面に倒れたまま動かない。


 ヤエ先輩は、私を運んだ時と同じように、魔法陣を使い、こちらの元へ合流する。


 退治、できたんだ…!



 「その様子だと無事に成し遂げられたようだな。…しかし驚いた。土壇場で力を扱えるようになるとは…」


 「アハハ…手ごたえは全くなかったですけどね。ヤエ先輩の力もあってこそです!」


 「うむ、それについても話すことができたな。とりあえず、町の皆さんもご協力に感謝します。」


 「こちらこそ、その子がいなければここまで冷静に立ち回れなかっただろう。改めて礼を言わせてくれ。」



 周りから感謝の言葉が次々に飛び交う。足を引っ張るかに思われた今回のゲコ退治だけど、まさかこんなことになるなんて思いもしなかったなぁ…



 「…あ!帰る前に、町の皆の名前を覚えないと!皆さん、もうちょっとだけ時間をください!」



 この学院生活に慣れ始めてきた時から、私が習慣にしていることだ。

 私は今いる町の人の顔と名前を覚え、ヤエさんと共にその場を後にした…

 ゲコは気づいたころには影も形もなくなっていた。…本当に不思議なヤツだ。


 … … …



 「ヤエ先輩、帰りは徒歩なんですね?」


 「あぁ、歩きながらになるが、一つ伝えておきたいことがあるのでな。」


 「うーん…自分の魔法について、ですか?」



 ヤエ先輩がこちらを見て頷いた。



 「イロハ。私やトワが持つ力は、本来なら菩提樹の御言葉に従い、自身で把握している力を使っている。トワが言うに、要は思いの力というものらしい。」


 「思いの力、ですか?確かに私、町の皆をなんとかしようとして…それで…」


 「一方でイロハの持つ思いの力は、依然として御言葉は伏せられてしまっているままだ。その思いの力は何なのかよくよく振り返ってほしい。なにせ、把握しなければコントロールもできないからな。」


 「うっ……おっしゃる通りです……」


 「そして、自分の力がどんな形になったか…そこにも意味はあるだろう。」


 「え?そうなんですか?」


 「ああ。我々魔法少女の力は象徴として具現化する。

 私は剣、トワは杖による魔法、イロハなら拳だ。

 トワならともかく…我々の象徴は、扱い方に気を付ける必要がある危険なものだ。

 その力で()()()()()―――この考え方が、イロハの持つ力のヒントになるかも知れないな。」



 それを最後に、ヤエさんからのお話は一旦区切りがついた。



 「ではまた明日。今回の件で、卒業へ一歩近づくだろう。色々振り返ってみて欲しい。」


 「はい!また明日!」



 今日は色々ことが起きすぎた。帰ったら久しぶりに、日記帳を掘り出してみよう。

 …少なくとも、御言葉が私にもある可能性が分かったんだ。前向きに、その正体を探っていこう!

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