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ようこそ 国立あげは学院 魔法科へ  作者: 北虎田ユウジ
3/3

3話 浦波 トワ

「失礼しま~す…」



 入学式も終わり、次の日が訪れる。学院はさっそく新入生達を迎える流れとなり、廊下を通るたび、室内から盛り上がる声が聞こえてくる。

 あげは学院は実のところ、学年ごとの教室が用意されておらず、代わりに科目単位でそれぞれ設備の整った部屋が用意されている。同じ道を目指す人達が学年関係なく同じ空間に集う…どちらかというと部活動の雰囲気に近い。

 しかし、魔法科というのはここでも特例だった。そもそもが最近できた科目であり、部屋も急遽用意したものらしく、その部屋の前にたどり着くまで、何度もマップを確認しながら迷っていたくらいだ。


 (イロハ)は今まさに、魔法科の戸を開けるところなのであった。



「こんにちは、イロハちゃん♪ そしてようこそ、国立あげは学院【魔法科】へ!」



 温かく迎えてくれたのは、2年の【浦波(うらなみ) トワ】先輩。入学式の前日に私を助けてくれた魔法少女であり、今日学院の案内をしてくれる魔法科の実質的なトップ…と言っていいのだろうか?



「ごめんなさい。ヤエ先輩、やっぱり忙しいみたいで。私一人での案内になっちゃって…」


「いやいやいや、そんな謝らなくても…昨日あんなこと起きたら、忙しくもなりますって…」


「ふふ、イロハちゃんは気配り上手さんですね~」



 そう言われ、若干照れ臭くなる。普段から周りを意識する日々だったからかなぁ…



「…さて!今日はどこもかしこも歓迎ムードなので、私たちは学院内で起きる小さな問題を解決していきますよ~」


「なんだか裏方に回る感じですね…」


「魔法科は滅多に人が増えませんから、他の科目と違い、素晴らしい作品も作れるとは限りません。代わりに普段の活動を見せて、学院の皆にイロハちゃんを正しく知ってもらうのが、現状で一番の得策かと思いまして…」


「そうか!私、いろんな意味で目立っちゃってるんだった…!」


「この学院、魔法を扱うだけあってすごいんですよ?卒業なされたエンジニア科の先輩方が、専用のアプリを作ってくれたんです!イロハちゃんもスマホに落としておいてくださいね?」


「えぇ!そんな軽々とそんなもの落としちゃっていいんですか!?…あ、よくみたらダウンロードコードもある!」



 意外にも身近なものとして触れていることに驚きながら、私は「MoM」というアプリを落とす。開いてみれば、掲示板を思わせる悩みやトラブルといった、そこまで重大ではないものがリストアップされている…もしかしてお悩み解決?



「イロハちゃんがなんの力を持っているのか…魔法科に選ばれた以上、その力はきっと内に秘められているはずです。それを見るためにも、まずはこのリストにあるもの、ぜ~んぶ消化していきますよ~」


「ぜ、全部…ざっと20はありそうなものを、全部ですか…」


「ふふ、些細なものばかりですから、()()()()()()()()()()()()きっと大丈夫ですよ♪」



 流石あげは学院。ハードな下積みはどこの科目でもあるんだな…

 確かに人の為と動くことはあれど、単位への道に取り込まれるとなると話が変わってくる。



「…よぉーし、何事もやってみなきゃ分からない!やってやるぞー!」


 ピコーン♪



 アプリから、何やらまた増えたらしい通知音が鳴った。

 ……やっぱり不安になってきたかも…



「まぁまぁ、そう肩を落とさないで。まずは内容を…… !?」


「どうかしました…… かぁ!?」



 新しく入ってきた内容。それは料理部の備品管理室からゲコの声がする、というものだった。



「行きましょう、イロハちゃん。これは最優先で片づけてしまいましょう。それに初仕事にしては身が入るんじゃないでしょうか?」


「勘弁してください~!トラウマになってるんですって~!」



 そういいながらも同伴が既に決まっていた私は渋々付いていくしかなかった。たしかにあげは学院初の活動としてはちょうど良いのかもしれないけどさ!どうしてよりによってゲコ絡みなんだ…

 足早に現場に向かい、扉を開けると料理部員達が一カ所に固まっている。空いてる場所を見てみるとちょうど備品管理室の扉が見えたから、まあそういうことなんだろう。というか仮にゲコじゃなくてネズミだったとしても慌てふためくよね…料理部なら…



「さぁ、もう大丈夫ですよ〜 【まじかる☆お悩み解決さ〜くる】参ります!」


(そんな名前だったの!?それに名前が微妙にダサい!)



 そんな名前も愛嬌の内なのか、はたまた信頼が厚いのか…特にそこに言及されることはなく、よろしくお願いしますの一声が返され、私達は備品管理室に入る。カエルの鳴き声が割と大きく響き渡っていて、確かにただのカエルではないような雰囲気だ…

 それよりも問題は備品の密度である。積み上げられた鍋類にズラリと並ぶ食器棚。奥側には均等に吊るされた調理器具がこれでもかと並び、触れない方が難しい密集具合だ。ここからヤツ(ゲコ)を探さないといけないのか……



「イロハちゃん、丁度よいです。この景色からゲコがいそうなところに、スマホでピンを立ててくれませんか?吊るされてる物が多いので、ゲコが動く時に分かるかもしれません。」


「あ、確かに!それなら私でも何とか…」



 さっき入れたアプリには学院内のマップが入っていて、要件の数だけピンが立つ仕様だ。その機能を使って怪しいところにピンを打ち、トワ先輩に共有するというわけか…

 流石にアプリ操作で遅れをとるわけにはいかない!培ったのはソシャゲとかだから大層な物じゃないけど…


 カエルの鳴き声が一声、また一声と部屋に鳴り響く。しばらくすると金属が触れ合う音が耳に入り、同時にほんの僅かな、調理器具の揺れを確認した。



「ここです、トワ先輩。」


「ありがとう、イロハちゃん。あとは私が退治するだけです。」



 トワ先輩が悠々とピンを打った場所に足を運んで近づく。またあの時みたいにド派手な魔法でも使うのかな?でもあんまり動いたらモノ壊しちゃいそうだし…

 そんなありきたりな不安を抱えつつ迎えたゲコ退治は……



「えいっ」


 ゲコッ



 …瞬く間に決着がついてしまった。まるで普通のカエルを捕まえるかのようなあっさり加減…



「イロハちゃん、捕まえましたよ〜」


「!?」



 トワ先輩がにこやかにこちらに向けて捕まえたモノを見せつけてきた。それはゲコ…ではなく、ちょっと大きなただのカエルだったんだけど!



「…イロハちゃん、そんなにカエルが苦手なんですか…?」


「当たり前じゃないですかぁ!!!」



 カエルから距離のとる速さに、トワ先輩のみならず、料理部一同も若干ざわついた。今の一瞬で私は料理部員達の集団に混ざっていたのだから…



… … …



「この度はご迷惑をおかけしました。普段は虫一匹入らせない備品管理室ですから、まさかカエルが忍び込んでいたとは思わず…」


「いえいえ〜 ケガ人がでなくてこちらも安心しました。」


「…改めてお礼を。さぁみんな、ここからが大変だぞ!備品の調理器具を全部掃除しつつ、今仕込んでいる料理を完成に持っていく!テキパキいこう!」



 一同の阿鼻叫喚の声を背に、私達は料理室を後にする。…私が仮に料理の道に行ってたら、あんな洗礼を受けてたんだな……



「どうかしましたか?イロハちゃん。」


「あぁいや、なんというか…私が目指そうとしていた所があれだけのハードワークなのを見て…魔法科に入るくらいの何かが、本当に自分の中にあるのかなって……」


「…やっぱり不安ですよね。-NIL-のノイズは一体なんだったのか…でもこの学院は、御言葉に従って進路が定りますから。信じ続ければ、きっと分かる日が来ると思いますよ〜」


「やっぱり…自分が思ってた道と違う場所を言われることも、あったりするんですかね…?」


「もちろん事例としてはあります。そういう生徒は、飲み込みが早い場合もあれば、理想と現実に苦しむ人だっています。」



 やっぱり、本人の思うように行かないことも起こり得るんだ…



「でも、そんな人たちを導く為に、私達がいるんです!私は元々お悩み相談は良く受けていたので慣れていますが…イロハちゃんはまた、私にはないやり方で解決してくれそうですよ〜」



 …トワ先輩は優しい人だ。心からそう思ってくれているような安心感で、不思議とリラックスできる。



「…ありがとうございます。ちょっとだけ気持ちが晴れました!」


「それならよかった!では、私たちもテキパキ解決していきますよ〜 【まじかる☆お悩み解決さ〜くる】はこれからが本番です!」



…でもやっぱりそのネーミングセンスはどうにかならないだろうか……

創作意欲の秋ですね。色々創作を形にするのに夢中で、投稿が大幅に遅れてしまいました。ペースが落ち気味になると思われますが、話数としてはそこまで長引かせる予定はないので、完結まで気長にお待ちいただければと思います!

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