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ようこそ 国立あげは学院 魔法科へ  作者: 北虎田ユウジ
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2話

 あげは町にてゲコと初遭遇した翌日、とうとうあげは学院の入学式がやってきた。


 (イロハ)はというと、あの後自分でも驚くほどぐっすりと眠れたおかげで、昨晩の緊張が嘘のように解けており、リラックスしてあげは学院へと向かっている。

 学院の生徒達は皆学院の近辺の住居で暮らしてるからか、次第に同じ制服の人影が増えていく。次第に賑やかになっていく様子は、ありふれた学園を感じさせると共に、気持ちもだんだんと引き締まる。


 人の流れに従うように歩けば、そこは既に学院の門の前だ。



「うっわぁ~…!」



 門をくぐれば見渡す限りの大きな庭園がお出迎えだ。ここだけ見たらどこかにお嬢様みたいな優雅な人がお茶会でも開いてそうな、見事なまでの華やかな庭園だ。

 でも何よりすごいのは、中央に堂々と根を張る白い大樹!動画とかで存在は知ってたけど、実際に見るとすごい存在感というか、神々しい雰囲気を放っている…!

 これが-NIL-(ニル)…学院の生徒の才能を見抜く菩提樹だ…!



「む、君は…新入生だな?」


「ほえ?」



 菩提樹に呆気にとられていると、前方から声を掛けられる。声の主は菩提樹の前に堂々と立つ女性。制服を着てるから先生ではなく生徒なのはわかるけど…どうして竹刀を携帯してるんだ…?



「少し落ち着きはあるが、その眼は初めての物を見る眼だ。丁度いい。新入生をここに集合させたかったところなんだ。これを羽織ってくれ。」



 そういわれ、手触りの良い一つの織物を手渡される。広げてみれば王族が着そうな豪華なマントではあるけど…



「…でかでかと【新入生はここに集合!】って書いてある……」


「そこはすまない。このやり方はまだ日が浅いから、直接文字に織り込む他なかったんだ。もっと根付けばよりよいものを織りなおしてもらうんだが…」



 小恥ずかしく思いながらマントを羽織る。かなり着心地は良く、意識しなければ本当に貴族になったかのような気分になる。



「自己紹介をしよう。私は【一文字(いちもんじ) ヤエ】。この学院の高等部生徒会長を務めている。よろしく頼む。」


「生徒会長…!いきなりすごい人と出会っちゃった…!」


「そんな大層なものではないよ。そのマントのような品を生み出し続ける、他の学院の生徒達の腕の方が輝かしく見える。生徒会長というのも、肩書きのようなものと思ってくれ。」


「えぇー?そんな謙遜しなくても…生徒会長しながら名作を残してくの、すごいと思いますよ!」


「…ふむ、察しは良いようだな。良いだろう。新入生第一号に、少しだけ話をしてあげよう。」



 何かを感づいたのか、ヤエ先輩はこの学院の卒業までの流れを説明してくれた。次第に集まっていく、私と同じ新入生の眼差しが加わると、心なしか生き生きとしているように感じた。



「……つまり、この学院で要求されるのは、人の心を動かす”名作”を、年に3~4作、卒業までに10作生み出すことに他ならない!これを聞いて、そうだな…新入生第一号!どう思った?率直で構わない。」


「あ、はい!えっと、コンクールとかだと1年かけて準備するところもあるし…腕に自信があっても4ヶ月で1作はちょっと不安になっちゃいますね…」


「うむ。実際は個人での製作になるから、部活動のペースよりかは幾分早いだろう。しかし、我々の年齢と経験では、顧問や先輩方を頼れるとしても、どうしても不安は残ってしまうな。…だが案ずるな。そんなお前たちの可能性を示すのが、この菩提樹だ。」



 おぉ~という声と共に、集まった新入生たちの注目が菩提樹-NIL-に集まる。



「菩提樹は御言葉を授ける。その御言葉を記録帳と照らし合わせ、目指すべき単位が決定する。…少なくとも、あげは学院が今の入学条件になってからは、御言葉に従って卒業できなかった生徒は一人もいないな。」


(たしかに…ニュースでもたびたび取り上げられるな…うん年連続正規留年者0とか…それだけの信頼があるってことか……)


「まだ話したいことはあるが…そろそろ時間のようだ。新入生たちよ、一列に並べ!第一号は最後尾に回るように!」


「えぇ!?普通最初じゃないんですか!?」



 かくしてこの待機場はそのまま、菩提樹の御言葉を賜る列に変わった。周囲はその瞬間を見届けようと、先輩たちが集まっている。

 あげは学院の入学式が始まったんだ…!



 待機列はそこまで長くはなかった。まぁ入ろうと思って入れる学院じゃないし、人数が少ないのも不思議ではないんだけど、一般学校の1クラスより少ないのはなんだか不思議だ。

 菩提樹は一人一人、異なる御言葉を残した。その威厳と周りの反応、なにより自分の番が着々と近づいてる事実が、最後尾の私に緊張が重くのしかかる…



(私の番か……)



 菩提樹の前に立ち、深く深呼吸をする。手を菩提樹に近づけると、不思議な感覚が風のように全身に走る。その御言葉は……



『無形、其の才は破魔の木霊となる力。■■(■■■■)…その力は、覇権を握る力なり…』


「……え?」



 御言葉はそこで終わってしまった。周囲が途端にざわつき始める。肝心な所を聞き逃しちゃったけど、それは私だけじゃないのかな…というか私の学園生活どうなっちゃうの!?



「…以上をもって入学式を閉式する。御言葉を受けた者は顧問の案内に従うように。…新入生第一号。君は私の案内に従ってくれ。」



 ヤエ先輩も深刻そうだ…

 後をついていくとそこは生徒会室。一瞬校長室か何かだと錯覚してしまうくらい、荘厳な部屋に案内されちゃった…これも名作の数々なら、私今その名作に気圧されているわけなんだけど…



「ソファに座ってくれて構わない。少しでも気を楽にしてから話をしよう。茶の用意をするからそれまで緊張をほぐしておいてくれ。」



 私今、名作だらけの部屋に気圧されてるんですけど?!無茶言わないでよ~!


 … … …


 5分もすると、ヤエ先輩がお茶を持って戻ってきた。きめの細かい泡の立った抹茶だ。科目に茶道でもあったりするのかな?



「…あれ?茶碗が3つある…」


「あ、あぁ…分量を少しな。」



その言葉に若干の慌ただしさを感じた気がした。そうか、今回あったことはそれだけ深刻なことなんだ…



「…さて、新入生…いや、姫赤イロハ。国立あげは学院へようこそ。菩提樹から御言葉を授かった以上、我々はあなたを歓迎しよう。」


「あ、ありがとうございます…でもその御言葉の方は…」


「あぁ。今回のようにノイズがかかった事例は初めてだ。何を伸ばし育むべきか、誰もが分からない状態になってしまったからな。」


「そう、ですよね…」



 平静を求めるように、茶碗に点てられたお茶に口をつける。心を動かす名作がこのお茶にも!…と思ったんだけど、『旅館で出されるものより美味しい』という感想だけが浮かんだ。いや、亭主に引けを取らないって十分すごいことなんだけど…



「ただ、あの御言葉が記録帳にないわけではなかった、それだけでもまだ導くカギはある。私がこうしてイロハを案内したのも、実質的な顧問が他でもない、私だったからだ。」


「ヤエ先輩が顧問…なんですか?それって一体…」



 そう問いかけると、ヤエ先輩が深く呼吸を入れる。その緊張感はすぐに私のところまで伝わった。



「…落ち着いて聞いてほしい。記録帳に該当する科目は、この学院の中でも特例とされる…【魔法科】というものだ。そして私もまた、その魔法科に所属している。」


「魔法科…え!?入ることがないって言うあの魔法科ですか!?」


「何?そこまで知っていると?いったい誰が…」



 言葉の先を遮ったのか、はたまた答えるかのように、生徒会室の扉からノックの音が鳴り響く。



「入ってくれ。」


「失礼します~」



 その声に覚えがあった。制服姿ではあるものの、彼女は…



「あれ?トワ先輩?」


「ふふ、昨日ぶりですね、イロハちゃん。」


「…トワが教えたんだな。それなら話が早い。」



 … … …



ヤエ「魔法科について教えよう。魔法科は私とトワの二人が所属する。菩提樹が示した力を魔力として操り、あげは町に蔓延るゲコを退治する科目だ。基本的には力の研鑽とゲコ退治の2つのみであり、単位の取得はあげは町の人々が任意で提出する報告書の枚数がそのまま使われるんだ。」


イロハ「ゲコ……あぁ、アレを私は相手にしないといけないんだ……アハハ…ハ……」


トワ「まぁまぁ、ゲコ退治はあくまで魔法科の任務ですから。報告書さえもらえれば、もしかしたら戦わずして卒業、なんてこともあるかもしれませんよ?」


ヤエ「トワ。あまり非現実的な話をするな。希望を持たれたらどうする。」



 …ハイ、一瞬希望を持ちかけました、ええ…



トワ「失礼いたしました~ …とは言えイロハちゃんの力は誰も聞けてはいないのですから。暫くは力が何か、探す時間が多くなるんじゃないかしら?」


ヤエ「そうだな。今回は特例の中でも異例の事態だ。…イロハ。不安をかけさせてすまない。単位に関しては恐らく先生方から特別な措置がなされるはずだ。イロハの力が何かについては、我々もなるべくサポートしよう。それでいいか、トワ?」


トワ「もちろんですよヤエ先輩。…イロハちゃん、しばらくは私たちのゲコ退治に同伴してくださいね♪ いつでも退治する側に回れるよう、現場にいた方が良いでしょうから。」



 その言葉を聞いた私、多分ひきつった笑顔でメッチャ青ざめてた…と思う…


 … … …


 初日が終わり、家に帰ると一通の封筒が届いていた。ヤエ先輩が言ってた、単位の徳悦措置に関するものだった。


 【年ごとの必要取得数を撤廃。3年を通して10単位の取得を目指すように】とのことだ。


 こうして、私の学院生活は異例の幕開けとなった。まったくの未知の領域と、あの恐ろしい魔物(ゲコ)を相手しないといけないことに、不安しかない。


 …私、卒業できるのかなぁ…?

読んでいただきありがとうございます。

イロハの未来は一体どうなってしまうのか…!

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