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宙を舞う試練と空の門の兆し

宙に浮かぶ大理石の螺旋路――そこは風と光が織り成す試練の場。

守護者の導きで飛翔の覚悟を固めたリゼットとカインは、追い風に背中を押されながら断絶の隙間へ身を投じる。

雲海を越えて見下ろす大地、遠く霞む空の門――第8章では、宙を舞う試練を乗り越え、次なる目的地“安息の島”への扉をくぐります。

――壁面が音もなく消え去り、視界いっぱいに広がったのは紺碧の空と、果てしなく続く大地の遠景。

螺旋を描く大理石の道は宙に浮き、太陽光を受けた無数の結晶が星屑のように煌めいている。


リゼットは胸の前で鍵を抱え、その淡い翼状の紋章をそっと指先でなぞった。

「ここ…本当に飛べるの?」

声はか細く震えていたが、その言葉に応えるように、カインは真剣な瞳で彼女を見つめる。

「怖くても大丈夫。俺たちなら一緒に――さぁ、行こう」

彼の言葉に背中を押され、リゼットは小さく頷いた。


――遠く、螺旋路の先方に浮かぶ守護者の姿。

淡い光の瞳が、二人の行く手を静かに見守っている。


突如、螺旋路に吹き抜ける風が突風となり、二人の体をぐらりと揺らした。

突風は渦を巻き、足元の縁をすり抜けるように吹き抜ける。


「風の祝福を受けよ。翼は自ら育むもの」

守護者の低い声が空間に響き渡り、その淡い光が螺旋の上方で揺れた。


リゼットはとっさに鍵を胸に抱き寄せ、小声で「助けて…」と願った。

すると鍵の紋章から微かな追い風が生まれ、彼女の背中にそっと力を与えた。

二人は息を合わせ、静かに一歩ずつ前進する。


――次の瞬間、足元の縁が揺らぎ、宙へ飛び出す断絶の区間が姿を現した。

リゼットは思わず後ずさりしそうになったが、カインが背中を強く押した。

「行け! 一緒に飛ぼう!」

その声に応え、二人は腕を大きく広げてその隙間へ身を投じた。


ひんやりとした風が全身を包み、リゼットの体がふわりと浮き上がる。

鍵の紋章が淡い光の翼を羽ばたかせ、追い風に乗って螺旋路の続きが先に浮かび上がる。

カインも歓声をあげつつ、リゼットをしっかりと見据えながら宙を舞った。

「うわあ!」

その声は歓喜と緊張が混ざり合い、二人の間に不思議な一体感を生んだ。


やがて二人は浮遊する結晶片に包まれながら、次の段へ着地した。

そこには銀白の雲海が果てしなく広がり、その向こうに青緑の海と大陸が遠望できる。

見渡す限りの雲海の上、小さな浮遊島がぽつりぽつりと浮かび、それらの先に巨大な円環状の門が霞んで見えた。


「見える…あれが空の門?」

リゼットは息を切らしながら指差す。


カインは肩で息をしつつも地図を取り出し、空の門のシルエットを確認する。

「間違いない。次の鍵は、浮遊島――安息の島だ」


鍵から微かな囁きが聞こえた。

「辿りつけ…」

その声がリゼットの胸に響き、彼女の目にさらに強い決意の光を灯した。


二人は螺旋路の上、再び腕を広げてひらりと飛び越える。

鍵の紋章がふんわりと翼を広げ、風が背中をそっと支える実感に、リゼットは目を輝かせた。

「信じられる…私たちの羽で飛べるなんて!」


カインはその言葉に笑みを返し、リゼットの手をしっかり握った。

「行くぞ。俺たちの旅はまだ始まったばかりだ」


螺旋路の最上部に立つと、そこにそびえ立つ巨大な円環状の門が視界に飛び込んできた。

門の輪郭は眩い光を帯び、風がざわめく。

扉の隙間からは、静寂を破るような低い響きが漏れ聞こえた。


「辿るべきは安息の島。次なる鍵はそこで試される」

守護者の声が最後の宣告を響かせる。


リゼットは鍵を胸に高くかざし、結晶片の雨に目を細めた。

扉の光がゆっくり吸い寄せられるように広がり、その瞬間を二人は息を呑んで見守った。


「行きましょう、私たちの羽で」

彼女はひときわ明るい笑顔を浮かべ、カインと共に門の中へと足を踏み出した。

ご閲読ありがとうございました!

風の祝福を受け、二人はまるで翼を得たかのように宙を舞いました。

雲海の上に浮かぶ空の門が、新たな鍵と試練の地――安息の島を暗示します。

次章ではいよいよ島へ降り立ち、鍵を巡る新たな冒険が幕を開けます。

ご感想やお気づきの点があれば、ぜひお聞かせください。次回もどうぞお楽しみに!

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