闇に潜む守護者
薄暗い回廊を抜けた先に現れたのは、無数の機械仕掛けの護衛者──ゴーレムたち。
鍵は反応せず、二人は自力で防衛機構を突破するしかなかった。
だがリゼットの「助けたい」という強い想いがトリガーとなり、鍵は自律的に閃光を放つ。
第6章では、初めて鍵が完全に自覚的ではないながらも力を解放し、“真の守護者”への道を切り拓きます。
――祭壇の扉をくぐり抜けた先は、天井が低く抑えられた細長い通路だった。
壁面には半円形の龕が無数に並び、ランタンの揺らめきが歪んだ影を映し出す。
ひんやりとした空気が、砂漠の灼熱とはまるで別の世界を感じさせた。
「音がする…静かに進もう」
カインは短剣を構え、足音を抑えながら一歩ずつ前へと進む。
リゼットは鍵を胸に抱き、薄暗い床石をそっと踏みしめた。
回廊の奥から微かな金属音が響き、先端部の龕がひとつずつ開いていく。
次の瞬間、小型の機械仕掛けのゴーレムが隊列を組んで滑り出した。
胸部にはリゼットの鍵と同じ刻印が浮彫りされ、ぎらりと光を反射する。
「来るぞ!」
カインが咄嗟に前に出て、刃先を構えながら迎え撃つ。
ゴーレムは鋼球や短剣を投げつけ、二人に襲いかかる。
リゼットは瞬時に鍵を胸に押し当てたが、青白い光は一切発動しない。
数に押され、ゴーレムの一体がカインの腕に鋭い一撃を入れる。
カインは痛みをこらえつつも、顔を曇らせて言った。
「今は…鍵が反応していないみたいだ。となると、まずは自分たちで何とかするしかないな」
リゼットは深く頷き、即座に視界にあった重石を引きずり出す。
カインはゴーレムの注意を引きつけながら、次々と落石を誘発。
崩れた岩で通路がふさがれると、数体のゴーレムが動きを止め、瓦礫の隙間から再配置を試みる。
だがその瞬間、リゼットの胸の鍵が微かに震え、最後のひとつだけが淡い光を漏らした。
同時刻、カインがリゼットをかばい、鋼の刃がゴーレムへ振り下ろされる寸前――
――リゼットの強い「助けたい」という想いがトリガーとなり、鍵は自律的に蒼白い閃光を放った。
――バァンッ!
眩い光の波動が走り、部屋中のゴーレムを吹き飛ばす。
機械の動力が断ち切られ、散った破片が音を立てて床に落ちた。
二人は思わず顔を伏せ、光の余韻が消えるのを待つ。
やがて静寂が戻ると、リゼットは震える手で鍵を抱きしめ、息を整えた。
カインも血染めの剣を鞘に収め、彼女の横に駆け寄った。
「…大丈夫か?」
カインは優しく問いかけ、リゼットは弱々しく微笑む。
「ありがとう…本当に、助かったわ」
通路の最奥から、ゆっくりと巨大な影が現れた。
金属と結晶が融合した鎧を纏い、胸には鍵と同じ刻印が深く刻まれている。
その姿はまさしく、この場所を守護する“真の守護者”――。
守護者は沈黙のまま一歩ずつ近づき、静かに問いかけた。
「汝、この鍵の導きを受け入れる者か?」
リゼットは胸の前で鍵を握り締め、震える声で頷いた。
「はい……私は、この鍵の導きに従います」
守護者は無言で頷き、祭壇の壁に刻まれた階段を示すように一礼した。
光が再び集まり、隠された階段の入口が淡く浮かび上がる。
カインがリゼットの手を取り、「行こう」と囁く。
二人は静かに光の階段を昇り、新たな試練の先へと足を踏み出した。
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ゴーレムの群れを前に、鍵はリゼットの覚悟に呼応し、防衛機能を全開しました。
そして姿を現したのは、鍵と同じ刻印を胸に刻む“真の守護者”──次章では、その正体と言葉が二人をさらに深い謎へと誘います。
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