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鍵が呼ぶ声

廃都アレシアンで出会った“銀色の鍵”──その力に導かれ、リゼットはギルド〈クロノス〉の門前に立つ。

だが扉は堅く閉ざされ、鍵の声のみが彼女を後押しする。

次第に震え出す鍵の光が解く扉の先に、無数の謎めいた遺物が並ぶ倉庫空間が待ち受けていた。

第2章では、鍵の真価が初めて顕在化し、リゼットの前に新たな“同じ刻印を帯びた鍵”が姿を現します。

――夜を越えた廃都を背に、リゼットは静かに歩を進めていた。

瓦礫と化した石畳が朝日に長い影を落とす。足元で砂利が小さく転がるたび、胸の奥の不安が震える。


“仲間を探せ──”

昨夜、鍵が囁いた声を反芻しながら、リゼットは指先でポケットにしまった鍵に触れた。淡く銀色が揺れるその感触に、何度も勇気づけられてきた。


「まずは、ギルド……」


かつて賑わった〈クロノス〉の看板を目指し、一歩一歩を刻む。

やがて見えるのは、重厚な木製扉。通常なら活気づく広場が、今は誰一人いない静寂に包まれていた。


扉の前で立ち止まると、突如、扉の向こうから年若い書記官が飛び出してきた。

大きな瞳は恐怖に揺れ、手には報告書らしき紙束を握りしめている。


「来訪者はお断りです!」

書記官はそう叫び、入口を必死に防ごうと身構えた。


リゼットは黙って扉を見つめているだけだった。

すると、掌に吸い込まれるように、鍵が小さく震え始め──


――銀色の表面が突然、淡く蒼白い光を放った。


光は次第に強さを増し、鍵全体がほの白いオーラに包まれる。

扉枠に走る繊細な文様が、鍵から放たれる光と共鳴するかのように浮かび上がり、軋む音をたてて錠前が解放された。


書記官は腰を抜かしたように後ずさり、震える声で「こ、これは……どういうことですか!?」と叫んだ。

そのまま扉から距離を取り、漏れ出す光と蒸気に吸い寄せられるように眺めている。


リゼットは深呼吸を一つだけして、静かに扉を押し開けた。

中からは熱気と淡い光が漏れ出し、無数の金属製遺物が並ぶ倉庫のような空間が姿を現す。古びた試作品の数々には、夜露に濡れたようなしっとりとした文様が刻まれている。


「ここは……?」

リゼットは息を呑み、胸の前で鍵をかざしながら一歩足を踏み入れる。すると鍵の光は一瞬だけ強く瞬いた。


書記官は震える手で報告書を握りしめたまま、「触らないで……! 危険です!」と叫ぶが、その声も揺れている。


リゼットはそっと振り返り、「ごめん……でも、これが何なのか、確かめたいの」とだけ告げると、倉庫奥へと歩を進めた。


――そのとき、奥の暗がりで、リゼットの鍵と同じ刻印を帯びた別の鍵がほのかな橙色の光を放っているのが見えた。

それは天井近くの棚で静かに佇んでいた。


リゼットがそっと近づこうとした刹那、背後で甲高い金属音が鳴り響いた。

振り向くと、暗がりに鎧をまとった何者かが、じっと彼女を見据えていた。

お読みいただき、ありがとうございました!

鍵の光が扉を解放し、未知の遺物倉庫へと誘ったリゼット。

そこに佇むもう一つの鍵──彼女の“仲間”なのか、はたまた別の所有者なのか。

次回、第3章では倉庫の奥深くで待つ真実と、密かに忍び寄る影の正体が動き出します。

感想やご意見をお待ちしています。次回もどうぞお楽しみに!

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