おしくらまんじゅう
今、俺はおしくらまんじゅうの真っ只中にいる。
こうなった理由はわからない。気付いたら、知らない人々と共におしくらまんじゅうをしていたのだ。
寒い冬だ。燃料も使わず身体が温まる。今の子供達にもぜひやってもらいたいものだが、問題はそこではない。何故、俺はいまここで、全然知らない人々とおしくらまんじゅうをやっているのか。
適度に身体も温まっているが、収まる気配はない。
「おしくらまんじゅう、押されて泣くな」
「おしくらまんじゅう、押されて泣くな」
どのくらい、時間が経過しただろう。もう身体は熱く、汗も流しきり、このままでは脱水状態になってしまうというのに、収まる気配はまだ、一向に訪れない。
このままでは死んでしまうと考え始めたとき、この状況に変化があった。
おしくらまんじゅうの圧迫力が強まってきたのだ。みんな苦しそうにしているのに、悲鳴を上げているものすらいるのに、誰もやめようとしない。
なんだこれは。理由もわからず押し込められ、理由もわからずおしくらまんじゅうをさせられ、理由もわからず死ぬのか俺は。
そもそも、おしくらまんじゅうってのは、外に出たらその時点で脱落するという遊びじゃなかったのか。
そう思い、俺は集団の外側に移動した。外に出るどころか、透明な壁に遮られて、これ以上進めなくなっている。
理解した。ここは、処刑場なのだ。俺達を押し込め、殺すためだけの場所なのだ。おしくらまんじゅうではなく、これは処刑なのだ…。
そうして、俺達は全員が潰され、死んだ。
……
…いや、死んでいない。なんだろう、とても身体が軽い。清々しい気分だ。今までの身体はなくなってしまったが、そんな些末なことなど、どうでも良いと思える。
新しい自分を見出した。俺は、俺達は新しい次元に進化したのだとすら思える。素晴らしいことだ。これから俺達の、新しい世界が始まるのだ…。
……
こうして絞られた質の良い菜種油が、今日も全国、全世界に運ばれていきます。