第26話 とりあえず冒険にいこう!
第26話 とりあえず冒険にいこう!
「ただいまー!」
「どうでした?国王陛下の反応は」
2人に王城であった事を話した。誰かが横領してる可能性が高い事や、開発方法について説明した
「なるほど…それなら細々したことや、街を整備したあとの事も充実していますね」
「アフロディーテが大損する形にはなるけど、開発が終わったら国に戻そうと思ってるけどね」
「なんの問題もないですね♪」
「大事な点がふたつあるのよ…ひとつわね、カトリーヌ王妃を、アフロディーテの一員にして欲しいらしいのよ。開発の目玉として、国民にアピールしたいみたい」
「それは…王都の1割もの土地の開発ですから当然でしょうね。国王陛下にすれば、渡りに舟って所じゃないですか?」
「あなた達はお貴族様だからか…若いのにそういう政治の事には敏感よねー!日本の15歳は国の代表者の名前もしらないわよ」
「私達にはわかりませんが…そっちの方が平和なんじゃないですか?師匠!」
「立場をどうする?」
「名誉マスターでいいんじゃないですか?」
「誰の目から見ても象徴である事は明らかですし…」
「そうね…開発地にどれだけ長く居るか、という方が大事だね」
「だけど…アフロディーテもすごい事になってきましたね」
「私は…冒険者ギルドに居るより、2人と一緒の方が楽しそうだなぁくらいに思ってたのに、社会の悪を根絶し、もらった勲章や感謝状…国宝までもらって、さらに街の開発まで」
「全ての段取りは、王様がして連絡くれるらしいから…王妃の名前で名誉マスターの称号と、名誉Sランク冒険者の称号でももらって…カードと証明書でも作ってもらおうか」
「いいですねぇ…協力してくれるでしょ」
「タイミングはマリアちゃんに任せるはね、早いと情報が漏れると良くないから」
「では、その辺はおまかせください」
「土地をアフロディーテに売却したり、王妃がアフロディーテの一員になることや、開発をアフロディーテに任せる。と言うような契約書の調印式はあるらしから、その場で逆に私達から贈呈しましょうかね。王妃に似合う花でもあしらった、美しい剣も贈呈しましょう」
「盛り上がりそうですね!師匠!」
「あと…もうひとつなんだけど…流石に開発が国家事業で進めるような案件なので、アフロディーテがどんなに実績があって、どんなに有名でも、納得しない者が出る可能性があるから…3人をそれぞれ叙爵するって」
「叙爵ですか?」
「そう…爵位は聞いてないけど…」
「それは驚きましたね。しのぶさんはともかく、まだ若い私達まで…」
「私は下手をすると…分離独立して実家の地位を超える可能性がありますね」
「キャシーちゃんは、そうか…」
「気まずい…とかあるの?」
「いえ…気にするのはやめましょう」
「私も気にしませんよ♪」
「そしたらあなた達が当主だから…配偶者は婿養子をとるんだね!すごいね!」
「私は…しのぶさんと居るようになって…今を一生懸命生きると決めています♪先の事はその時に考えます」
「師匠!私もそうです。薬草を取りに行ったあの日から、ずーっと夢の中に居るような気がしています」
「私もそうだけどさ…2人ともいつもありがとう!」
「よし!そうと決まったら、王様から連絡が来るまでの間、稼ぐわよー!」
「まずは薬草の群生地に行って、ビネガー攻撃を伝授しましょうか?あれ地味に稼ぎが良いから…」
それから、かあさん達は走り回った。新人研修には難色を示したが、もともと面倒見は良い方である
スライムにビネガーを吹きかけては、新人冒険者が質問してくると説明して、ストックの霧吹きを渡した
落ち着くと、そこから次のランクの冒険者が、居そうな場所を探して、助太刀したり、アドバイスしたり、広い魔物の生息地を駆け回った
途中ストロングボアに追いかけられたり、オークロードに出会ったりもしたが…3人の連携は見事なものだった
「なに!このでっかい豚は!」
「師匠!それがオークロードです!」
「ならんだら兄妹みたいに見えるじゃん!」
「くっくっ!戦闘中です!笑いはお控えください!」
「私が後ろに回って投げ技を決めるから、トドメはキャシーちゃんお願い!」
次の日もまた次の日も
「あなた達!大丈夫?オーガに手こずってんの?」
「は、はい!助けてください!」
かあさんがさっと2人組を両脇に抱え回収する。入れ替わるようにキャシーさんが切り刻む。マリアさんからは回復でもブーストでも、動きに合わせて飛んでくる
さらに深くに進んだ…滅多に冒険者にもエンカウントしなくなり、この辺りが限界かな?っと思っていた時、上級冒険者らしきパーティが襲われていた。
地べたをはうもの、岩を背に動けずに座る者、何とか踏ん張って盾を構えるもの、魔法詠唱するもの、20名程の大パーティがほぼ壊滅している
「助けなきゃ!」
「師匠!魔族です!」
「魔族か、なんだかしらないが…好き勝手にさせるもんか!」
瞬間移動で背後に回ったが素早くかわされる
「ほほぅ…少しはやれる奴が来たようだな」
「あなたは何者なの!?」
「冥土の土産に教えてやろう!我は魔王軍特攻隊長ルシウスである!」
「特攻隊長だかなんだか、知らないけどね!あなたにやられるほど、わたしもやわじゃないのよ!」
魔族は巧みに飛行しながら魔法を繰り出してくる
闇のような玉の連打である。かあさんも炎を纏い魔法を弾き返した。その隙にキャシーさんとマリアさんはパーティの回収と避難、治療を急いだ
「わしの魔法を弾き返すとはお前、人間か?」
「失礼な事をきくな!みて判断しろ!」
「そ、そうか…では本気で行くぞ!」
魔族の魔法と爪を生かした攻撃が襲いかかった
爪を交わし魔法を弾き、防戦一方であるが…かあさんの集中力はどんどん増していった
防戦しながらも反撃の機会を伺う
振り下ろされた右手…魔族の爪がかあさんを狙う。左手のプロテクターで受け止める
「ガキっ!」と鈍い音がする
その瞬間、回し蹴り姿勢から、魔族の左後方へ移動する。延髄斬りが決まり魔族が地面に叩きつけられる。素早く背後から馬乗りになった、かあさんのラッシュが始まる
馬乗り姿勢とはいえ、かあさんの突きは丸太に窪みを作るような一撃、それでもあまり効いていない。闘争本能むき出しのかあさんは、仕方なく背中の羽を両方掴んで引きちぎった!
「ぐおぉぉぉーーー!我が負けるとは!」
絶命した後に、見た事のない形と色の魔石と、魔族の羽というドロップアイテムが出た
「師匠!大丈夫ですか?」
「しのぶさん!」
「はぁ…そっちは?大丈夫?みんな無事?」
「今のはなに?言葉も普通に喋ったし」
「ここ200年は現れてなかったのですが、大陸北部に人類未踏の地があり、魔族が暮らすと言われています。おとぎ話の産物とみな理解していたのですが」
「はい!小さな角に、背中から羽…身体は濃い紫色に包まれ、長く鋭い爪を持つ!伝承のままです」
特攻隊長というのが、どれほどの位置なのか?さっきの戦闘を振り返り、ギリギリだったと実感する。強者同士が戦えば、常に一瞬なのである。お互いに高い攻撃力を持つが故に、必殺の一撃をどちらが入れるか、という紙一重の戦いになる。とりあえず、いまは冒険者の無事に胸を撫で下ろしたが、魔族という驚異にどう対処するかを考えていた
第27話 調印式に続く




