第25話 ニュータウン計画
第25話 ニュータウン計画
他の2人の了承を取ったかあさんは、次の日王城に来ていた。計画を遂行する為、国の許可を得るために直談判に来たのだ
マリアさんの話では住民が暮らす土地は大体が、国から与えられた物で、買えない人は家賃を払い、少し裕福になると購入するらしい。一応登記のようなものがあって、土地の範囲や持ち主は管理されているらしい。持ち主には税金が加算されるが、借りたまま賃料を払う事に比べたら、1割くらいに下がるらしい。それに借りたままだと、借地の食堂が大流行りになったりした場合、権力で土地を国から買い上げ賃料を上げると言うようなあからさまな事件も少なくはないらしい。国が取り締まるものの、国益に影響がない為、深く踏み入る事は難しくなっている
「いっちゃん!」いつの間にか国王は一郎のいっちゃんと呼ばれていた。大丈夫かいな…
「しのぶさん昨日はありがとうございました。あの後戻って来て、4人で色々と語り合いましたが…話の内容よりも、目線を子供に合わせると言う事が大事なのですなぁ」
「有意義な出来事だったなら良かったじゃない」
「しのぶさんのおかげです。本当にありがとう。して今日はなんですかな?今、妻も参ります」
「王妃殿下まで来なくても良いのに」
「いやいや…しのぶさんが来てるなら、おめかしして出なきゃって着替えと化粧をはじめてましたよ。はっはっはっは!」
「だから…いいっちゅうのに!」
「まあそう言わずに…妻も感謝しておりますし、何よりしのぶさんのファンなのですよ」
「まあ…そういう事なら来てから話します」
「あらー!こんにちは!しのぶさん!昨日は大変ご迷惑をおかけしました!」
「王妃殿下!頭をお上げください!こんな平民冒険者に頭を下げられてはいけません!」
「私は…しのぶさんに礼を尽くしてるのですよ♪」
「あ、ありがとうございます」
「早速ですが!国王陛下!王妃殿下!貧民街の現状をご存知ですか?」
「見に行った事は無いが…酷い有様と聞いている。家が無いものもたくさん居て、孤児も随分いると…」
「この貧民街に対する国策はお持ちですか?」
「いま、割いてる予算が限界かのぉ…一応、飢死する物が出ないように食料は与えるように国庫を開いて居るが…あまり分厚くしたのでは、今度は普通に暮らしている住民から不満が出る」
「貧民街に食料を与えているのですか?」
「あぁ…結構な予算を割り振っていますよ」
「それは…直談判に来てよかったようですね。恐らくそのお金はほとんど貧民街に落ちていませんよ」
「なんだって?」
「私は貧民街をどうにかできないか?考えて来ましたし、良く歩きました。とても配給があるような現状ではありません」
「なるほど…それならその事は静かに調べておく…事実を闇に葬ったりせんよ」
「それなら着手には待つ必要がありそうですが…アフロディーテとして貧民街の開発をしたいのです」
「貧民街の開発ですと?具体的にはどうするのかな」
「はい!貧民街の住民を労働力にして、街を新しく作り直します。建物を取り壊し、新しい家や学校を作ります。下水道も通して環境を改善します。端的にいえば貧民街のニュータウン化計画です」
「それには莫大な費用がかかりますが…」
「アフロディーテには資産が金貨500万枚ほどあります!半分以上使う事になるかもしれませんが…材料費や賃金をはらい続けても可能だと試算しています」
「それをするなら、現在割り振っている予算も必要無くなるし…国の事業としてやるから協力してくれたら良いではないですか?」
「それこそそうすると、不公平だと声があがります。我らがやる方がスムーズでしょう。むしろ国王としては綺麗になった街の道路にアフロディーテ通りと命名して頂くとか…学校ができあがったら国営として教師を派遣するとか…貴族家に公園を作る費用だけ出してもらって公園名にするとか…後々の風を頂く方が良いかと」
「なるほど…切れ者のしのぶさんらしい発送ですね」
「だがそうなると利権を得ようとハエが飛びますよ」
「それを相談しに来たのです。そういったハエをのさばらせるつもりはありません。来たとして、武力で排除する事も可能でしょう。ですが…住民自体は弱く対抗する術を持ちません。我らが去ったあとに攻撃されればひとたまりもありません」
「確かに…少し吟味してみるが、それなら一旦開発地をアフロディーテが国から買い上げ、わしとアフロディーテの間で調印して、国としての立場を示せば、回避できるかもしれないなぁ…」
「それに盗賊団の1件で、リズベクト商会には貸しがひとつあるので、街に縫製や木工加工、紙の生産など様々な工房を作り、軌道に乗るまでは、一括買取りしてもらう事で、就業を促そうと思っております」
「もちろん国が認可した商会であれば堂々と交渉して頂けば、流通は自由競争で構いませんが…いかなる貴族の介入もさせません」
「しのぶさん…わかりました。横領の調査と共に、わしが責任を持って、最善の段取りをしようじゃないか!」
「して国王陛下…王都の10%にも及ぶ広い土地、いくらで売って貰えるのですか?」
「マイナスしかない土地じゃ…金貨1枚で構わんよ。アフロディーテに対する信頼あっての事じゃがの!」
「では…国にも収入になるように、開発後は譲渡するなり、取り決めた期限を過ぎた、家から税収が取れるようにするなり、考えて提案させて頂きます」
「しのぶさんの打つ手には隙がないの」
「ところで王妃殿下は国王陛下の出生の事は…」
「知っておるよ。妻も2人の時はいっちゃんと呼んでおる」
「では…昨日の朝、私は息子の部屋と言う限定付きでしたが戻る事ができたのです」
「あらぁ!しのぶさん息子さんに会えたのですか?」
「はい!寝ていたので久しぶりに起こしました」
「それは良かったですね♪」
「なら…なんで戻って来たのじゃ!そのまま向こうに居れば良かったではないか…」
「それが…息子の寝顔を見た時には、二度と離れたくないと思ったのですが…話してるうちに、いま帰ると後悔する気がしたのですよ」
「王国としては大事な財産を失わずに助かったがな」
「わかった…ともかく調印の場で、未来はわからずとも、アフロディーテの3人には爵位を与えよう。そうでなければハエも静まらん」
「あと…こちらの要望で悪いのじゃが…国王なんてものはいつどうなるかわからんので…王妃にここらで国民にアピールできる、手柄がほしいと思ってたんじゃよ。カトリーヌをアフロディーテの一員として参加させてくれないか」
「そうじゃな…立場は名誉メンバーとか名誉雑用係とか…なんでも良いんじゃ。開発現場にも行かそう」
「心得ました。貧民街を護衛付きではかっこがつきません。我らも護りますが服の下に最高の防具を着込むなど万が一には備えてください」
「わかった…では早急に準備するので、連絡を待たれよ!」
そしてかあさんがひょっこり思いついた、一大プロジェクトはわすがに数mm動きだした
ついこないだまで、ソファに横たわった涅槃像のようになって、お茶とせんべいを前にして、テレビを見ていたかあさんと、同じ生き物とは思えないなぁと深く頷くつよしだった
第26話 とりあえず冒険にいこう!へ続く




