第22話 王子・王女VS国王・王妃
第22話 王子・王女VS国王・王妃
今日のかあさんは、まだ朝焼けが赤く太陽が登ろうとしている頃目が覚めた。俺の子供の頃の夢を見たのだ。幼稚園に行きだした頃、まだかあさんも働いていて、残業で遅くなる事がちょくちょくあった。1人残った幼稚園では、もうお迎え来るだろうねーって言いながら、迷惑そうな先生をいつも見ていた。到着したかあさんはいつもペコペコとあやまり、先生は必ずキツめの注意をしていた。その光景を見るのが嫌だった俺は、ある日ひとりで帰ろうとしたのだ。その時の事は俺も覚えているが…どっちに行って良いかもわからず、そばにあった公園で座っていただけなのだが、息を切らせて迎えに来たかあさんの必死な顔は今でも良く覚えている。
もし見つからなかったらどうしようって…不安を抱えて走り回ってる夢をみたらしい
「置き手紙が最後だなぁ…ん?」
来客のようだ…ノックをされたので随分早いなぁと思ったが…玄関をあけた
「しのぶ殿!私たちをアフロディーテに入れてください!お願いします!」
「お願いします!」
元気のいい大声に2人も起きてきた。
来訪者は第1王子殿下と第1王女殿下と王子付きのメイドの3人である。ともかく3人を座らせ、お茶を出し、話を聞く事にした
「先生!しのぶ殿!私とシシリアをアフロディーテに入れてください!」
マリアさんとキャシーさんは大変だ!とばかり戸惑っている
「いいわよ!だけどあなた達はまだ魔物の狩りには連れて行けない。戦えないメンバーは何をするの?」
「1日でも早く、強くなる努力と、実戦で戦えるようになるまでは、家事でもなんでも手伝います!」
「そっか…決意はかたいようね。それならお付のメイドさんには帰ってもらいましょうね。見習いが身の回りの世話をしてもらうなんて以ての外…」
「そうですね…わかりました。ソフィ!帰れ!」
「ルイス殿下!わたしはおそばを離れるわけには参りませぬ。ルイス殿下とシシリア殿下が、ここで働くと仰るならお共いたします」
「まず…2人から何があったのか聞くけど…ソフィさんはお引き取りください」
玄関の外まで送っていきソフィさんに伝えた。2人がここにいることは、王と王妃に伝えて欲しい。あと今日中に必ず会いに行くから待っていて欲しいという事を。しぶしぶ了解したソフィさんは王城に向かった
「それで…あなた達に何があったの?ルイス殿下から聞かせてくれる?」
「はい!私はみなさんが、人身売買の組織を潰した事を、騎士団から聞きました。そして父上に言ったのです」
「私も第1王子として、もっと民衆の為に役に立ちたいと」
「そしたら?」
「お前が考える事ではない。それにアフロディーテは特別な存在だから、張り合う必要もない。と」
「それで?」
「張り合うつもりなどありませぬ!私も王家の一員、しかも第1王子という跡取りの立場にあり、父上のお役にも立ちたいのです!と」
「そしたら?」
「ルイスよ…そんなに慌てなくてもいいではないか…それに強さや教養だけが王の器ではないんだぞ。と」
「それで?」
「それも理解しております。ですが時には危険をおかしてでも、先陣を切る覚悟は王族に必要ではないですか!民衆の前に立ち盾となる事こそが誇りではありませんか!と」
「そしたら?」
「もう良い!さがれ!ともうされました」
「それで…決意してここで鍛えようと…」
「そうです!」
「シシリア王女は?」
「はい!私は兄上と同じような話ですが…母上に。傷付いた兵士の治療や、戦う騎士団の援護を早く出来るようになりたいから、魔法士団の訓練に参加させて欲しいと嘆願した所、失笑されまして、寂しく廊下を歩いているところに、兄上がアフロディーテに入れてもらいに行く!と言って歩いていましたので、私も行きます!と2人で来ました。なんでもやります!」
「どうして2人は王族である誇りを武勇で示したいの?他にも方法はあるでしょ?」
「アフロディーテのみなさんは、民衆に大きな被害を及ぼすような、凶悪な魔物を倒されてきました」
「ある時は騎士団よりも活躍され、国でも扱いに困っていたような盗賊団も撃破されました」
「そして今回も人身売買という卑劣な組織を3カ国にまたがって掃討されました。強くなければできない事がたくさんあります!それが全てだなんて、子供っぽい事を言っているのではありません!」
「うん…うん…それはわかるよ」
「なるほどね…気持ちは良くわかったわ」
「私もいいですか?しのぶ様」
「シシリア王女もどうぞ」
「私も王女として生まれた以上、政治の道具として他国に嫁ぐ覚悟もできております。ですが…その事と兵士の役に立ちたいという事は別であると思っているのです」
「母上は、そういう努力をしても無駄になるから…みたいな事しか言わないのです」
「うん、うん…なるほどねぇ」
「そんな時にマリア先生は伯爵家の令嬢でありながら冒険者として見を立て、3級勲章を授与され、叙爵したわけではありませんが、実質分離独立されたではありませんか」
「同じ立場だったとして…私がそれをできるとは思っていませんが…魔法士としてチカラを付けようと努力した事が無駄になるとは思えないのです」
「それは私達もみんなそう思うよ」
「まあ私はあなた達がアフロディーテの一員になる事に反対しないよ。部屋もちょうど2つ空いてる。話が終わったらマリアちゃんとキャシーちゃんと4人で装備を揃えてらっしゃい」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「その上で最後にひとつだけ、今までして来た話とは少し違うのだけど…」
「私が冒険者になったばかりの頃、キャシーちゃんと2人で行ったレストランでね。子爵家の嫌な人と一緒になった事があるのよ。高級レストランに冒険者のカッコで行った私達も悪いかもしれないけど…なんであんなのが店に入ってるんだ!みたいにお店の人は怒られててさ」
「悔しいというより情けないみたいな…ルイス王子とシシリア王女からすればその子爵が間違えてると思うでしょ。貴族としてあるまじき振る舞いだと…私もそう思う」
「だけどね…キャシーちゃんちは騎士爵家、変に問題になれば実家に被害が及ぶかもしれない。結局マリアちゃんが撃退したんだけどさ…そういうのは正しいか?間違えか?ハッキリさせることはできないのよ」
「それを思うとアフロディーテに憧れを抱いてくれる王子や王女がいるのに、それをそのままにして、活躍させてくれる事自体が国王の器の大きさなのよ」
「もしも違う国でアフロディーテが結成されてたら、王家より目立つとは何事だ!って処分対象にされたかもしれない。言ってる意味はわかる?」
「わかります。とてもわかります」
「まあそれだけよ…王子と王女とバレないようにして買ってきなさい」
「マリアちゃん!キャシーちゃん!どうせなら一生使えるような最高の装備を買うのよ」
一通り話を聞いた上でこの国の8歳と7歳はどれほどしっかりしてるのだと驚くかあさんだった
4人を街に出したあと、これから親側との話し合い。
親は子供を心配するが…子供は子供で親の役に少しでも立ちたいと思う。朝見た夢をもう一度思い返すかあさんだった
第23話 王子・王女VS国王・王妃(2)に続く




