第15話 激突!地域最大盗賊団
第15話 激突!地域最大盗賊団
王都南門前
「はじめまして!しのぶ様!リズベクト商会のカーター・リズベクトと申します。本日はご依頼を引き受けて頂き、誠に感謝申し上げます」
「こちらこそご指名ありがとうございます」
「カーター様お久しぶりです」
「マリア様も立派になられましたね」
「私はキャシー・ベネティクトと申します。よろしくお願いします」
「ベネティクト家のお嬢様のご活躍もお耳にしておりますよ。こちらこそよろしくお願いします」
「アフロディーテの皆様…あちらに居る5人は我が商会の用心棒にございます。主に斥候、付近の警戒を担当します。敵襲があれば笛でお知らせしますのでよろしくお願いします」
「最後に数名居る騎士の方々は、王都とガラの両方からこられた騎士隊長と早馬の連絡係の方です。賊が現れたなら後発で追従する騎士団と連絡を取り、一網打尽にする予定です」
「随分と準備がよろしいのですね」
「はい…予め申しておきますが、想定している相手はこの辺りの最大の盗賊団なのです。こちらに情報が入っておりまして、リズベクト商会の荷と金を狙っているらしいのです。騎士団やギルドとも協議した結果、最強パーティと名高いアフロディーテにお手伝い頂けるのであれば、少し危険ですが囮となって、一網打尽にしようという結論になったのです」
「カーター様…昨日お父様からも聞き及んでおります。身辺警護をパーティの任としますが、それでよろしいですね」
「もちろんでございます」
諸々の堅苦しい挨拶を済ませ一団はガラに向かって出発した
「マリアちゃん…こういうのよくわからないけど、夜営の時が濃厚なんじゃないの?少し旅行みたいな感じは悪くないけど…」
「そうですね…夜営を狙われるのは一番警戒している所ですが…夜は敵も暗闇を動き回る必要があります。それに夜営地も決まっていて後発の騎士団もガラからくる騎士団もこの一団にかなり接近して配置する予定になっています」
「向こうも情報が少なくなるから周囲を狭くできるって事か…こういう作戦に参加すると、有名になったもんだと思うわね」
「そうですね…Aランクパーティは王国に3つしか存在しませんし…残りの2つは戦闘力よりも規模の大きさでAランクになってますから…しのぶさんの戦闘力が如何に凄いか…という事ですよ」
「一昨日の夕方…着替えに部屋に行ったじゃない。あの時息子が部屋に居たのよ。仕組みはよくわからないけど…あの子の部屋と私の部屋がドアで繋がってたらしくてね」
「師匠のご子息はどのような方なのですか、お会いしたいです」
「それが無理そうなのよ。私があなた達と話してたのも私の声しか聞こえなかったって。つよしも私の部屋から出ようとすると、何も無いのにぶつかるの。あの子が来たドアも私には見えなかったし」
「それは残念ですね」
「マリアちゃんと同じ歳だけど随分子供だよ。だけど…かあさん頑張ってるみたいだね。あと…いつもありがとうねって言って帰って行ったわよ」
「へぇー!親に感謝を告げるのは、なかなかに照れくさいですよ」
「そうね、毎日顔を合わせても話もしなくなってたのに…それだけでもこっちに来たかいがあったけど、扉が見えないなら、まだここにやる事があるんじゃないかって…頑張ってね。だってさ」
「それで昨日からご機嫌なのですね」
「ご機嫌と言うか…早くこっちにある使命を果たして、ご飯作ってあげなきゃと思ってさ」
「あの…お話盛り上がってる所よろしいですか?」
「カーター様…どうされました?」
「あの…いま向こうの世界とかこちらの世界とか…」
「カーター様…しのぶさんは異世界に住んでらっしゃって…気が付いたら王都に転移してたらしいのですよ」
「噂で聞いた事はありましたが、実際その方を目の前にすると不思議な気分になりますねぇ」
「私もびっくりしましたよ。見た事も無いような服装の人が、突然暴漢から私を救い出したと思ったら、今度はオークを素手で倒すんですから…おとぎ話でも見ているようでした」
「あれが若い男性の方なら一目惚れして恋が始まったのかもしれませんが…」
「悪かったわよ…こんな小太りのおばさんで!」
「いいえ…その姿に魅了された事には違いありませんよ♪」
「そうです!師匠ほどかっこいい人はこの世には存在しません!」
「お2人とも、しのぶ様が大好きなのですね」
「あと…ギルドマスターが国王が興味を示してらっしゃるような事を…」
「マリア様、それは王城としては仕方ないのですよ。いまや、アフロディーテというパーティ名と、しのぶ様という冒険者を、知らない王都の民はいません」
「国としてはどうしたものか?と言う話にはなるのです。もう少し我らのような商会や貴族と接点ができて、その人となりを見せた方が静かに暮らせるかもしれませんね」
「私を話だけで想像する人はガッチリした男の冒険者と思うだろうけど…挨拶する時に不思議な顔をしてニヤケられるのが、もう嫌よ」
「はははっ!確かにそれはありますけど…それもまた人気に拍車をかけているのですよ」
「もう少しで休憩だね…休憩の時や、敵襲があれば私は馬車の上に立つからマリアちゃんとキャシーちゃんは障壁を張って馬車の中をお願いね。休憩中も出ないようにね」
かあさんは強い責任感を持っている。仕事と同じで評価されるかどうかの前に、失敗は自分が許せないのだ。休憩場所についたので、馬車の運転手や斥候隊、騎士団の人が休憩を取った。馬車の上から辺りを見渡した。少し遠くに見張りを発見した。おそらく敵の賊だと思われる。視野を広げるとその見張りを物陰から狙っている味方の斥候隊の1人が居る。短剣を持って襲いかかろうとしている。
口を塞いだ
「しっ!今はだめ…ここで相手の見張り役を仕留めたら相手にこちらの動きがバレるわ。一旦戻るわよ」
斥候隊員を連れ戻した
「あなたはあなたの、考えもあっただろうけどごめんね…だけどあそこで仕留めるのは得策じゃないのよ」
「いえ…こちらこそ考えが及ばず、止めて頂き助かりました」
再度、斥候隊、騎士隊長と打ち合わせをした。斥候隊は情報収集のみに集中し敵に手は出さない事で話がついた。かあさんて意外と切れ者なんだよなぁ
「戻ったよ。こちらは何も無かった?」
「少し外で話されてたようですが」
「斥候隊の1人が賊の偵察の1人を始末しようとしたのを私が止めたのよ。それで各隊の動き方を再度徹底してたのよ」
「来そうですか?」
「主婦歴16年の経験と勘を頼りに考えたら…多分…夜営場所についた時に、夜を待たずにくるわ」
「しのぶ様の世界には主婦という軍隊があるのですね!」
「1人で戦うという意味では特殊部隊ね」
おいおい( ̄▽ ̄;)
そして夜営地についた。かあさんの読み通り斥候隊の笛があちらこちらから鳴り響く…予め距離を詰めていた騎士団も一気に輪を縮めて集まってくる。かあさんは馬車の屋根から火の玉を連打する!
「敵襲!敵襲!」
前後から挟まれている騎士団の隊もある。一気に混戦になった夜営地周辺は戦場と化す!
さて…かあさんの活躍に乞うご期待!
第16話 地域最大盗賊団掃討作戦!に続く




