第11話 ゴブリンを狩ろう!
第11話 ゴブリンを狩ろう!
本気で勇者のつもりになったのか?異世界にできた娘達が可愛いからなのか?真意はわからないが、最高級装備品で武装されたかあさんは、決意していた。やってやる!と…
キャシーさんとの待ち合わせ時間より少し早く受付に来ていた。マリアさんは新人に引き継ぎしつつ受付業務についていた
「マリアちゃんおはよう!」
「しのぶさん!おはようございます♪」
「私!やるわよ!」
「行きますか?ゴブリン退治!」
「いく!あとね…パーティカードは無いの?」
「なぜですか?」
「みんなで同じ依頼をして、討伐数が不公平になるのが嫌なのよ。乱戦になると、綺麗に振り分けなんて出来ないから」
「討伐数やドロップ品を、パーティで一括回収して均等に振り分けたい。という事で間違いないですか?」
「そうよ!そうしておかないと戦闘に集中出来ないわ!」
「パーティ名を決めて貰えば作れますよ。パーティカード!」
「キャシーちゃんももう来るでしょ…そしたら2人に私の考えを話すわ!」
「師匠ー!おはようございまーす!」
冒険者ギルドでは完全武装したおばさんの姿はとても目立っており…既に何者かを噂する声が大きくなっていた。オークを倒したおばさんの存在も加わって、あれがあの!?それは無いよな…と失笑がこだまする中、3人のパーティについての話し合いが始まった
「私の考えから言うわね。私は何がきっかけでここに来たのかわからないように…今後も何がきっかけになって突然もどっちゃうか、わからないと思っているの」
「確かにそうですね」
「だからね。家柄もいい、キャシーちゃんも信頼している。それに子供を庇う為に身体をはれる勇気もある、マリアちゃんがリーダーにはふさわしいと思うの…それでマリアちゃんとキャシーちゃんの可愛いイメージを全面的に押し出して…パーティ名はアフロディーテが良いと思うのよ」
「アフロディーテですか…言葉の響きは良いですね」
「私の世界の愛と美の女神の名前よ!」
「賛成です!師匠!」
「キャシーが良いなら私はそれでいいですよ!名前もかっこよくて…気に入りましたし!」
「それなら早速作ってちょうだい!パーティカード」
「私はあと数日参加できませんよ」
「良いのよ。パーティハウスも契約して欲しいし、色々準備にお金もかかるだろうし、経験値も積んでマリアちゃんもレベルアップして欲しいし…キャシーちゃんもいいわよね?」
「師匠が良かれと思う事なら私に異論はありません」
「ならそうして頂戴!そして行くわよー!覚悟してなさい!ゴブリン!」
「師匠が朝から並々ならぬオーラを放っていたのは、そのせいでしたか…」
「そう!昨日の寝る前に色々考えたのよ!私に期待してくれる可愛い娘が2人もいるなら…しのぶちゃんはこの世界でもかあさんになっるってね!」
キャシーさんとかあさんは森の途中に足を進めていた
「師匠…静かに!この奥です。パトロールは一体のようですね。まずあれを仕留めます」
少し早く気がついたパトロール役のゴブリンがキャシーさんに攻撃してきた。草むらから剣を振りかざして飛びかかってくる。キャシーさんは素早く身体をスライドさせ回避、剣を地面に打ちつけながら着地したゴブリンの延髄あたりから首を飛ばした
「師匠…これが魔石とドロップです。今回のドロップは持ってた剣だけですが、レアドロップすると首飾りやブレスレットなど落とす場合もあります」
「キャシーちゃん…それは良いけど今の回避と攻撃はダメよ。回避動作と攻撃動作に連動性が無い。あの時に仮に認識してない敵が反対側に居たら、怪我くらいはさせられていた。見てなさい」
巡回中のゴブリンをもう一体見つけ小石を投げる。同じようにかあさんに飛びかかって来る。あえてキャシーさんがしたように回避…回避動作をしながらまだ空中にいるゴブリンを短剣で斬り伏せ、投げナイフを素早く持って反対側を向いた
「わかる?回避~攻撃~警戒…ここまでの動作に小休止が入ってはだめ」
「なるほど…師匠!やってみます。とはいえあとは洞穴の入口に見張りが2体ですね。あれは同時に片付けないと中に知らせに戻ります」
「キャシーちゃん…逆に一体逃したらダメなの?」
「なぜですか?」
「静かに洞穴に入る事は敵に気づかれて居ない。という点においては評価できるわ…だけど何体居るか?どんな広さか…通路はどうなっているか?開けた場所はあるのか?様々な情報不足を秤にかけると得策ではないわ」
「なるほど…ではどうすれば…」
「あえて逃がして誘き出すのよ」
「なるほど…それだと洞穴入口の開けた場所で戦えるし…急に囲まれる心配もないという事ですね」
「そう!それに数が減らせる」
「マリアは大きい集落なら深追いせずにと言ってましたが…」
「それもダメよ。どの程度の知能があるのかわからないけど…仲間がやられたら多分、恨みのこもった反撃が無差別に人を襲うわ。やるなら徹底的に全滅させなきゃ」
「少し違うけど…私の居た世界にもゴキブリって言う災厄が居たわ。なかなか全滅しなくて突然襲われたものよ」
「師匠もそのゴキブリという魔物との戦いでその強さを手に入れたわけですね…心得ました」
「やるわよ…キャシーちゃんはバラけて近づいて来たのをお願い」
見張りの片方の額にナイフを投げ突き刺した。かあさんの読み通りもう一体が洞穴に報告に入る。数十秒後15体程のゴブリンが飛び出してきた。残りのナイフ2本で、なるべく大きい個体から仕留める。ファイアーボールを2発打ち、混乱しているゴブリンに突っ込む。拳で顔面を潰し、回し蹴りで山肌に打ちつけ、後ろから来る敵は身体を回転させながら短剣で斬った。
キャシーさんに向かう数体のゴブリンも個別なら脅威もなく、あっさりと斬り伏せていた。
「一段落ね…」
かあさんがナイフを回収しているとキャシーさんが魔石を拾い始めた
「キャシーちゃん…それはあとよ。踏み込むわよ」
「入ったら私が炎を纏って前に行くから、まずキャシーちゃんは剣が振れるか確認して…振れないようならいつでも突きで対処できる構えでついてきて」
通路は1本だ…横穴もない…じわじわと足を踏み入れる…少し広くなった空洞に出た。待ち伏せしていたゴブリンが左右からかあさんめがけて襲いかかる。右に移動しながら右のやつを正拳突きで仕留める。振り返るとキャシーさんが左側のやつを突きで仕留めていた
「さておおずめね…奥にいる少し大きいのがボスかしらね…」
「あれはホブゴブリンですね」
「ファイアーボール!」
たまらず突進してくるホブゴブリン…正面からかあさんと対峙する。ホブゴブリンはチカラに任せて大きめの剣を振り回す。避けては足にローキック、離れては腕にナイフを投げ少しづつ削るが確実に追い込まれて行くホブゴブリン…どんどん大振りになる剣を手を蹴り落とす。掴みかかろうとするホブゴブリンに得意のラッシュ!正拳突きも回し蹴りも自由自在にヒットする。最後はハイジャンプで額に踵を落とす…決着だ
「こんなもんね」
空洞を全て照らし出すように周囲に火のついた薪を配る。全滅を確認する
「キャシーちゃん…色々拾って早くでるわよ。空気が薄くなる。私のせいじゃないからね!」
「師匠のせいですか?」
回収を済ませ走って表に出た。キャシーさんに回収させながらかあさんは入口を塞ぐように山肌を割っていった…数分の出来事だった
「師匠のせいとはなんですか?」
「いや…つよしが良く言ったのよ。かあさんが隣りに来ると酸素が薄くなるんだよって」
「そういう事ですか!はははっ!」
「笑い事じゃないのよ…地味に傷つくのよ」
2人は報告する為帰路についた。かあさんの戦い方はまさに女神のように華麗に美しく愛と美を兼ね備えていた…そう!戦い方はねぇ(汗)
第12話 なんじゃそらー!に続く




