沢山の恥ずかしいと感謝・感謝・大感謝!!
いつもと違う日常に戸惑いながら、感謝をささげるミヲ。
私は、初めて自分の姿を見た。今まで私だと思って見てきたものはいったい何だったのだろう?
井戸や水溜まりに映った私とは、全然違っていた。
自分の髪に触れてみた、いつもなら硬くごわごわしていたのに柔らかい。自分の髪がこんなにも美しいものだとは思いもしなかった。手で触れるとサラサラと音を奏でているような気さえする。
サラサラの黒髪は、他の人と違った色をしている。奇麗だけれど、忌み嫌われる色。
(これが、本当に私なんだろうか?)
足元のリオルも奇麗な毛並みになっていて、まるで違う犬のようだ、なんだか柔らかい。
私とリオルは、温泉という魔法にかかったような気がする。そう、この世界には魔法が有るから。
巾着袋にリオルを入れるわけにもいかないので抱え上げて抱いてやる。リオルが甘えて来る。
「ふふっ・・擽ったい、舐めちゃダメだよ」
仕返しにリオルの鼻をなめてやった。
「さぁさ、きっと坊ちゃんが、首を長くして待ってますからいきましょうねぇ」
「はい」
「それじゃ、リオ様は、私の後ろをついてきてくださいねぇー、坊ちゃまを驚かしちゃいましょう」
今度は、手を繋いでもらえない・・ちょっとだけ寂しい。でも、リオルを抱いてるから無理か~。
人と手を繋いだ事など無くて最初は驚いたけど、実は嬉しかったのは秘密だからね。
「今日は、お天気も良いですからお外で食事しましょうねぇ~」
「外で・・?」
「えぇえぇ、ここには、千年桜と呼ばれる それは、それは大きな桜の木があるんです~」
「千年桜??ハルカがとても奇麗だって言ってた。」
「この桜の木は、悪いものから私たちを守ってくださっているって言い伝えなんですよ~」
「そうなんだ」
「はい~」とにっこり微笑みながら桜の話をしてくれる。
廊下を出ると目の前が開けた。そしてそれは、いきなり私の視界を埋め尽くした。
「この浴衣の花は、桜だったんですね・・・」
浴衣の柄と桜を見比べた。
桜を見ていると傍に、大きなテーブルが何卓かおいてあり、真っ赤な布が、敷かれていた。
その一つに 先ほどまで一緒だった銀髪のハルカを見つけて大きく手をふった。
私に気付いたハルカは、大きな目を尚更に開いて落ちるんじゃないか?って位に目一杯に開いて、驚いたような顔で 硬直して・・こちらをみていた。
「坊ちゃん、お待たせいたしました、ミヲ様ですよ~」
「嘘だろう・・・だって、ミヲは男の子で・・。」
「ははーん、やっぱり坊ちゃんも騙されたくちですね~」
と言ってマリアは、朗らかに笑った。
「・・いや、騙されたとかじゃなくて・・・」
そしてハルカは、椅子から立ち上がり私に頭を下げた。
「ごめん、俺が、勝手に男の子だと勘違いしてた本当にごめん」
「いえ、別に謝ることじゃないと思うけど?・・」
何故、この程度の事で謝るのか?私にはわからなかった、それとも、男の子じゃないと何か問題でもあるのかな?こてん?と首をかしげてみる。
「女の子だと判っていたならもう少し優しくしたのに・・」
と頬を赤く染めて俯くハルカ。
「ハルカは、とっても優しかったよ~誰よりも本当に優しかったから・・」
言ってる私も なぜか恥ずかしくなってきて、頬が熱い。
なんだか、いたたまれないぞ・・。
「うっほん!」とマリアがひとつ咳をした。
「それじゃ、坊ちゃんお食事の用意をしてまいりますねぇ」
そういうとマリアは、ニヤニヤと笑いながら足早に去って行った。
それをみたハルカは、大きなため息をついた。
「食事の支度が、整うまでお茶でも飲みながら話をしようか?」
ハルカは、見慣れないティセットから可愛い茶碗にお茶を入れてこちらへと・・私の前にお茶碗が、おかれた。中のお茶は、緑色だった。
「これは、緑茶だよ。さっぱりするから飲んでみて。これは、ティカップじゃなくて湯呑みっていう。」
そういわれて恐々少しだけ口に含んで飲んだ。口に含むと優しい緑の香りがした。朝から水も飲まずに居たことを思い出した。それにお風呂で汗をかいたのでかなり喉が、渇いていたらしい。緑のお茶は、染み込むように私の喉を潤していった。
「じゃ、改めて自己紹介させてもらうね。イオの騎士。ハルカ・アンダーソンだ。第三竜騎士団の班長をしている。イオの他にもグリフォンのクーの騎士でもある。今後の為にもミヲのことを教えてほしい。」
(まだ、17歳なのに班長なんてハルカはすごいんだな)と思った。
「うん、いいよ。でもあんまり話せることは無いと思う・・」
「話辛いこともあるかもしれないけど、話せる範囲でいいからね。」
「・・名前は、ミヲ。年は15歳って聞いてる。誕生日とか解らないから・・」
「え?15歳?もっと小さいと思ってたよ・・あ、ごめん続けて・・」
(うん、大体年を聞くとみんな驚くんだよねーーー泣)
それから、私の事を話した。親や兄弟がいないこと、最初の記憶は、森の中に居たこと。
そんな私は、孤児院に保護されて暫くは、孤児院で過ごした事。
でも、平和は続かなかった。ある晩、孤児院に盗賊が入り、私は奴隷として売られ・・あの牧場で働いていた。・・本当に過去三年程度の記憶しかない。森に立っていた目絵の記憶は、まったく無い。
私のことなのにハルカが、辛そうな顔で聞いてる。どこか痛いのかな?
「ごめん、もう話さなくていいから・・。辛い思いをしたんだね・・」
横を向いたハルカの目には、うっすらと涙がにじんでいた。
「ところで、リオは動物やドラゴンの声は、いつから聞こえるの?」
「今日から~、今日初めて聞こえたの、ビックリしちゃった。」あはは、と笑う。
「そうなんだ、何か、変わったこととか無かった?」
「変わったこと??」 探るようにハルカが尋ねる。
「なぜ君だけあんなところに隠れていたのかな?って思ってね。」
「うーん、それはね、誰かの声がしたの・・」
「誰かの声?」
「うん、初めて聞いたんだけど、その子が、逃げろじゃなくて隠れろって教えてくれたんだ。」
「隠れろって??」
「そう、それで蛇は火が嫌いだから竈の中ならって・・」
「それは、とても良い半だったね・・」
まだ、何か聞きたそうだったけど。
マリアが、料理を運んできた。私は、運ばれてきた料理が気になって話処ではなくなってしまった。
だって、朝から何も食べていなかったから「キュルキュルーーー」と私のお腹がなった。
(恥ずかしい、、逃げ出したくなった。)
「あらあら、可愛いお腹の音が・・」
どうやら、みんなに聞こえてしまったらしい。
「すみません、朝から何も食べてなくて・・。」
その言い訳を聞いてハルカが慌てた。
「そうか、ごめん食事の事まで気が回らなかった、許してほしい。」
と、ターブルに頭をぶつけそうな勢いでハルカが謝まる。
(いや、許すとかそういう問題なの??)
「はいはい、坊ちゃんは・・気が利かないですからね~、じゃ、全部並べちゃいますねぇ、」
ハルカを揶揄いながら料理を並べ始める。
「ミヲ・・沢山食べて!」
「そうですよ~ミヲ様は、瘦せすぎですからどんどん召し上がってくださいねぇ~」
目の前には。色とりどりの料理が並ぶ。どれから食べようか・・。
「今が、旬なんですよ~。今年は、寒かったせいか、まだ春の物が取れるんです。」
「筍の煮つけと筍ご飯。お肉の方がよかったかしら?こちらが、鰆の煮つけ、野菜の天ぷらです。沢山ありますから、遠慮せずお替りしてくださいましねぇ」
初めて見る料理に・・ドキドキしながら箸を運ぶ。
「美味しい!!・・・あれ?私・・いつから橋が使えるようになったんだろう??」
(初めてなのに・・なんだか懐かしいそんな感じ。)
「ゆっくりよく噛んでくださいねぇ~」
マリアの言葉にがっついて食べる自分が、急に恥ずかしくなった。
一体、今日何度目の恥ずかしいだろう・・・。
眼の前のハルカに視線を移すと とても奇麗な所作で食事をとっていた。
またまた、恥ずかしい。そして、又顔を赤くするのだった。
それにしても・・ご飯がおいしい!!楽園かもしれない。
美味しいご飯に感謝!ハルカに出会えたことに感謝!!
ハルカとマリアに大感謝!!
ミヲは、女の子です。主人公です。
幸せと苦しみは、同じ数だけある・・・だったらこれからは、幸せの方が多いはず。
幸せさがして、ミヲは明日も頑張ります。