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リアル人生すごろく『スタートに戻る』での人生リセット

作者: 赤め卵
掲載日:2023/01/20

※すごろくを知らない人がいるかもしれないので、念のため説明します。

 

 すごろくとは、サイコロを振って出た目の数字の数だけコマを進めて、動かした先にあるマスに書いてある行動をするゲームのことです(諸説あり)。


 人生ゲームの亜種みたいなもんです。

 

 ……あ、今更ですが、知っている人はこんなとこ読まなくて大丈夫です。全然問題ありません。


 この世には、すごろくという素晴らしいゲームがある。

 

 大勢でやるとかなり盛り上がり、一人でやってもまあまあ楽しい。

 まさに、至高のゲームというわけだ。



 ーーえ? 何だって? トランプ?


 何じゃそりゃ初めて聞いたな俺は知らんっ!!



 ま、ともかくすごろくというものがこの世にはあるわけだ。

 それを俺は、命と同じぐらい大事にしているといっても過言ではない。


 そして、そんな俺は今、とてつもない窮地のど真ん中に立っている。

 

 ……そう。それこそこのマスの『スタートに戻る』だ。

 すごろくの出た目で生きている俺にとって、『スタートに戻る』というのをどうすればいいか、さっぱりわからない。

 わからないからこそ、大事件なのだ。


 だが、君は俺のその言葉を聞いて、そんなことよりもきっと疑問に思うことだろう。

 ーーどうして、すごろくなんかに人生を預けてるいるのか? と。

 ーーどうして、そんなすごろく中毒になってしまったのか? と。


 ん? 頭がおかしい? おい! 今すぐ出て来い!! 俺がこのすごろくというゲームのすばらしさを特別に教えてやるーーと、言いたいところではあるが……そう言って友達を続けてくれた人が一人もいないので、今回はやめておこう。

 良かったな。今日は運がいいぞ?



 ま、冗談はさておき話がずれてしまった。


 ともかく、俺にとってはすごろくの出目こそがその日ーー人生の目的となるのだ。

 いや、正確には目的だけではない。

 すごろくに書かれている行動だって、俺は文章通りに実行している。


 例えば、『人助けをしてお礼に2マス進めてくれた』と書いてあったら、俺は迷わずに困ってる人を探しに行く。

 困ってる人を助けるまで、俺は家に帰らない。

 他にも、『仕事をさぼってしまった。上司に迷惑をかけてしまい、1マス戻る』と書いてあったときは、本当に仕事をさぼったんだったな。


 あの時はやばかった。

 本気でやばかった。

 やらなきゃ良かったってマジで思った……。



 ……おっと、俺としたことがまた話がそれてしまった。

 

 ここまで聴いてくれた人の中にはもう気づいた人もいるかもしれないが、このすごろくは社会や身近にある生活を元にしている。

 確か、名前も歩き方すごろくとか言ったか。

 つまりだ。

 ゴールへと到達することによって俺はきっと素晴らしい人になれるに違いない。



 ーーえ? 人生ゲームだって? 何だいそれは??

 生憎と、俺の記憶領域には保管されていないな。


 ーーいや、まぁ実のことを言ってしまうと、人生ゲームも試してみたのだ。

 けど、あれは1マス1マスに書かれている出来事が大きすぎた。

 何だ結婚って。

 そもそも、俺はそんな豪遊できるほど金持ってないっつーの。


 という理由で、今のところはすごろくに落ち着いている。



 さて、そろそろ諸君も気になっているであろう、なぜすごろくなんかで人生を決めているのかーーという話をしないといけない。


 ーーあれは、やっと桜が開花したといえど、冷たい空気の残る日だった……と、物語風に行きたいところだが、さすがにその日の気候なんて覚えちゃいない。

 当然だ。

 なぜなら、それを思い出せなくなってしまうほど、俺にとっては印象的な日だったのだ。


 その日ーー俺は会社で働いていた。

 多分、そこそこまじめな方だったと思う。


 そんな時だ。

 見覚えのない人物が、俺の席を訪ねてきたのだ。


「ちょっと、今から会議室へと来てくれないかい?」

「……はい。わかりましたけどーーどんな要件でしょうか?」


 確か、その時俺がした質問はうまくはぐらかされてしまったような気がする。

 

 もちろん、俺は大いに不安を感じていた。

 だって、個別の案件で、その上会議室までと来たもんだ。

 終わりじゃねえか! どう考えたって!!


 実際、その予想は当たっていた。

 

 ーー俺は、その日クビを言い渡された。


 ……あの時、俺はどんな気持ちだったのだろうか。

 憎しみか、悲しみか、苦しみか……


 今はもう、わからない。

 思い出したくもない。


 どうやら、以前来た新入社員が何かをやらかして仕事を辞めてしまった時の腹いせに、ほとんど無関係だった上司という関係だけの繋がりの俺にパワハラを受けたと嘘の申告をしたらしい。

 ご丁寧に、ちゃんとした書類まであった。


 ーー俺は、いつの間にかニートになっていた。


 あの後、何をしたのかはいまいち覚えていない。

 実は、クビを言い渡されても、数週間は勤務できるらしい。

 引継ぎがどうとか、そんな感じのことをほとんど何もすることもなく、決められていった。


 だが、俺はもうそんなものどうでも良かった。

 辛うじて、学生時代の友達が慰めてくれたから、自殺とまでは行かなかったが、それでも結構落ち込んだのを覚えてる。


 本当に、どうでもよくなった。

 何もかも、嫌になった。


 幸いなことに、俺は特に金をかけるような趣味もなくずっと貯めていた貯金に手を伸ばすことで、どうにか食いつないで行けたが、それもついぞ底を尽きようとしてきた。


 そうして、ようやく頭に一つの可能性が浮かんだのだ。


 ーーこのままじゃやばいんじゃね? と。


 当たり前だ。

 やばくないはずがない。


 ニートの上に資金が底を尽きようとしていたのだ。

 ……かといって、親のすねに噛り付きたくもなかった。


 俺はその時、長く失っていた危機感というものを取り戻したのだ。


 

 ーーその日から、就職活動をしていった。

 だが、そう上手くいくはずもなく、面接で落とされるは、書類選考も落ちるはで大変だった。


 そこで、再び来てしまったのだ。


 そう。ーー本当にどうでもよくなる.セカンドタイムが。


 ……俺が、すごろくを少ない荷物の中から引っ張り出してきたのはその時だ。

 どうやら、当時の俺の頭は壊れていたらしく、ひたすらに1人ですごろくを遊び倒した。

 

 やっていく内に、思っていった。


 人生も、こんなすごろくのようだと良かったなーーと。


 次の日のことだ。

 俺は、すごろくの最初のマスに書いてあった、『友達とサイクリングに行く。1マス進む』というのを無意識に実践していた。


 楽しかった。

 もう、それはそれはめちゃくちゃ楽しかった。


 で、その結果素晴らしいことに気づいたのだ。

 すごろくの人生って、素晴らしいと。

 あぁ、なんて素晴らしいのだろうかーーと。


 そこからの行動は早かった。

 なにせ、その友達から、行動力の化身と呼ばれたほどだ。


 『自動販売機の近くで100円を拾った。ラッキー! 1マス進む』では、そこら中の自動販売機の下を見て回った。


 『熱がでた! 1回休み』では、熱を出すまで水風呂に浸かっていた。

 あれは流石に死ぬかと思った。


 『テレビを見たが、特に何もなかった』というかマスに止まれば、俺はひたすらテレビを見続けた。意外と面白かった。

 ちなみに、もちろん会社はちゃんと行っている。


 今度クビになったらと思うと……体が震えてくるね!


 まさかの就職の欄に止まったときは、しっかりといい感じの企業うの面接に申し込んだ。

 すると……


 何と、本当に受かってしまったのである。

 祝! 脱ニート!! である。


 それから、ずっとすごろくの出た目の通りに生きてきた。

 

 毎朝朝食を食べる前に机の端に置かれたサイコロを振り、出た数字の数、駒を動かしていく。

 このすごろくがゴールまでかなり長いものであって助かった。


 ーーそして今日、ついにゴールが見えてきたというところで止まった増すにはなんと書かれていただろうか。


 『スタートに戻る』だ。


 もし、これが普通のすごろくだったのなら、「あー残念でしたー」と言いながら悲しみの涙に暮れて駒をスタートに戻して終わりなのだ。


 だが、忘れてはならない。

 このマスは、俺の人生の次の1ページなのである。


 ーーじゃあ、俺のスタートとは何なのか?


 生まれる前か?

 死ねばいいのか?

 それは絶対に嫌だな。


 まず、残念なことに人は過去に戻れない。

 もし、戻れたんだったら俺はあのクビにされた原因のクソガキを殴りに行く。


 そう。

 俺には、何がスタートなのか、そしてどう戻ればいいのかがわからなかったのだ。


 いつも、考える前にすごろくを振って、その日の行動を生み出していた。

 こうして、自分のことを考えるのはいつぶりだろうか。


 俺は、一度視線を高くして、すごろくのマスのすべてが目に入ってくるようにする。

 これが、俺の人生の印であり、俺の生き方なのだ。


 ーー!!


 そこで、思いついた。

 スタートへと戻る方法を。


 これまでの人生を振り返り、新しい道を開く方法を。


 俺は、机に広げられたそれを丁寧に持ち上げ、畳んでいった。

 仕舞う機会が無かった箱をもう一度引っ張り出し、それをきれいに箱の中に入れる。


 軽い紙製のはずなのに、それはとてつもなく重く感じられた。

 ーーいや、それもそうか。

 なんと言ったって、これは俺の人生の重みなのだ。

 軽いはずがない。


 そして、少しだけ震える手で、その箱のふたを閉じた。


 文字通り、俺はスタートに戻ったのだ。


「じゃあな、俺の人生の道しるべ」


 その言葉が、どこか寂しげに部屋を漂って、消えていった……。


 次は、俺がマスを作っていく番なのだ。

 好きなように進み、好きなように戻る。

 1回休んでもいいかもしれない。


 俺は、その決意を忘れない内に、玄関の扉を開けた。


 まずは……そうだな。

 スタートに戻ったらしく、友とサイクリングにでも行ってみようか。 

 

 そうして、外へと足を踏み出したーー



 最後まで見てくれてありがとうございました。 


 皆さんも、生きるのに困ったら是非すごろくで人生を決めてみるのもいいかもしれません。

 ただ、推奨はしませんが……。


 ちなみに、筆者は人生ですごろくを遊んだことは2回ぐらいしかありませんでした。


 初短編でしたが、良かったらメインで書いている『誰もが憧れるこの異世界で、無力な俺は主人公になれない』も読んでみてください。

 

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