謎につながる遺跡2
「……どうしよう……。これからどうしたらいいの……?」
倉庫から外に出て開口一番、私は不安からそんな言葉が漏れた。しかし私の言葉に、誰ひとり答えなかった。ミズミを見ればあの垂れ目を鋭くして地面を睨んでいるし、メイカは空を見上げて真顔のまま。ハクライは私を目が合うと、困ったようにへの字口して肩をすぼめていた。
ヒントはあった。どうしてこんなにも独族に絶望感が広まっているのか。それは王とその従者たちがやはり同族を喰っていて、この大きな街だけでなく辺境の町々にまでその影響が現れているからだ。そして、どうして独族の王がそんな風に変わってしまったのか、そのきっかけ――なんだか遺跡の解読がどうとか言っていたけれど――が何かあったということは見えてきた。でもその変化が何故起こったのか、それはさっぱり見えない。
あの男の人の話に出てきた遺跡ってなんだろう……そう思って、それを問いかけようと口を開きかけた時だった。
「……メイカ、お前何か知ってるんじゃないか?」
唐突な言葉はミズミだった。驚いて彼女を見れば、ミズミは鋭い目線で従者を見ていた。
「…………もしかして、さっきの人が言ってた古代遺跡のことかい?」
そう小さな声で答えるウリュウは、珍しく笑っていなかった。その表情に驚いていると、主はそんな男を見て目を細めた。
「独族の王が変わったきっかけを探らねばなるまい。お前なら……遺跡も知ってるな?」
その言葉に、私は再び驚いて今度はウリュウを見た。
「え……ウリュウ……さっき話にあった遺跡……知ってるの?」
私の問いかけに一瞬あの細目を私に向け、男はため息まじりに主を見た。
「……はあ……。スティラ様には、嘘通用しないもんねぇ……」
その言葉に私はあることを思い出してはっとした。そうだ、ミズミはあのエンリン術とかいう特殊な術故に人の心の声も聞こえるんだっけ。以前私も心の内を暴かれたことがあったけど、それはあのウリュウに対しても同じなんだ。ミズミは彼が心の中で思っている考えを見抜いて、そんな問いかけをしたんだ。
でも……どうしてウリュウは古代の遺跡のことなんて知っているんだろうと首を傾げている間にも、二人の会話は続いていた。
「多分、この大陸にある古代遺跡に異変があったんだろうねぇ。……原因探すのは、楽じゃないよ、スティラ様?」
その問いかけに、茶髪の美女は鋭い目線のまま問いかけた。
「どうしたらいい?」
その問いに、従者は俯くようにして答えた。
「まずは独族が解読したっていう火山の遺跡を探そう。それから各地の遺跡も調べる必要はあるだろうね……」
「火山の遺跡か……それをこの付近で探る必要があるな……」
そう言って、茶髪の美女は顔を上げ、深く息を吸うと振り向くようにして私達に向き直った。その表情に迷いはない。強い瞳で私達を見て、彼女は強い声で私達に指示をした。
「ハクライ、ティナ、この町で一晩過ごせそうな場所を確保してくれ。メイカ、お前は俺とともに例の遺跡探し……手伝ってくれるな?」
「分かった」
「うん」
その指示に、ハクライと私は素直に頷き、従者の男の方はため息まじりに答えた。
「嫌だって言ったら、ボクの命も危なそうですしねぇ……。……行きますよ」
それから私達は手分けして行動に移った。私とハクライは、町の中をうろついて、一晩過ごせそうな場所を探したわけだけれど……ハクライってばあっさり、一つの家を選んでそこを勝手に占領していた。
「ええ〜、人様のお家なのに、勝手にお邪魔して家具まで引っ張り出しちゃって大丈夫?」
思わず心配になって問いかければ、長身の男は何処吹く風だ。
「どうせ町の人、誰も居ないし。この家広いし食べ物色々ありそうだし、丁度いいね。家の中から必要そうなもの全部借りちゃおう」
そう言って、その家の中から食器やら薪やら引っ張り出して、勝手に人の家に上がりこんで、食事の準備も寝床の準備も、その家の広い部屋を一つ間借りして整え、一晩快適に過ごせる環境を作り上げていた。
そして夜になる頃には、ミズミもウリュウも戻ってきて、翌日の動きについて話し合った。
「行くべき場所は分かった。この町の裏にある火山だ。その火山の中に遺跡がある。明日は朝とともに出発するぞ」
ミズミの指示を、私達は食事を取りながら聞いていた。