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強族の王4
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「ちっ! こんな所に落とし穴なんて普通作るかよ!」
毒突くように吐き捨てて、つい今しがた仲間が落ちた床を蹴りつけるのは、茶髪を揺らす美女だ。床を何度かコツコツ蹴り、部屋の配置と今自分が立っている落とし穴の位置を見て、女は唇を噛んでいた。
「まさか、落とし穴だなんて……罠?」
同じく床をポンポン叩いて仲間を見上げるのは長髪の男だ。男の言葉に女は短く息を吐いた。
「この位置で言うと牢の真上……か。そしてベッドすぐ横の落とし穴……。成程な……恐らく犯した女が用済みになれば、このまま牢屋に落とす仕組みだ」
言うが速いがもう一度サイドテーブルのボタンを押すが、落とし穴はピクリともしない。
「ち、時間制限付きか。自分が落ちないように考えたのかもな……下衆め」
「どうする? 床壊す?」
問いかける男に一瞬迷うが首を振り、瞳を紫色に揺らしながら女は動き出していた。
「いや、牢の真上……破壊したら下の女達が危険だ。行くぞ」
言うが速いが駆け出す相棒に、長髪の男もすぐに立ち上がり後を追っていた。