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邪悪な王は偽れる  作者: Curono
第2章 戦う女、相棒の男
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囚われた奴隷4

「見つけたぞ、侵入者! トッファ様に楯突く無礼者め!」

 叫びながら槍を振るう大柄な男に、ハクライは逆に自分も突っ込んでいき、ミズミは私の手を引き逆に距離を取っていた。さっき話していた通りの作戦だ。

敵は槍を突き刺すように振りながら、それをかわしたハクライの動きを追うように横へと細かく槍を振る。長い間合いに、長髪の男はそれをジャンプでかわして、逆に間合いを詰めていた。

「くうっ!」

 近づいたハクライに気付いて、敵は槍を持たない手を構えた。その腕めがけてハクライは鋭い爪を薙ぎ払うが、腕につけていた金属の鎧がそれを弾いていた。

「おっと、鎧か」

 攻撃が効かなかったことに気付くハクライに、逆に男はその鎧の付いた腕を構え、体当りしてきた。防御の体制をとっていたとはいえ、体格の大きい大男だ。よろめきはしなかったが、槍の当たる間合いにハクライは押し返されていた。

「援護は」

「大丈夫」

 ミズミの短い問いかけに同じく一言で返すと、ハクライは腰を落としその両腕を低い体制で構え、指を広げた。ハクライが本気で構えた姿は、もしかすると初めて見るかもしれない。妙に低い体勢で、指を鳴らすように動かすその動きは、まるで獲物を狙う肉食鳥の鉤爪のよう。爪が尖って見えた。

その時だった。敵がまたしても槍を素早く薙ぎ払って来ると同時に、ハクライは低い体勢のまま、また敵に突っ込んでいった。

「甘い!」

 槍を素早く振る敵に、ハクライはそれをまた跳び上がってかわすけれど、それは敵の想定内だったようだ。素早く槍を少し手前に引き、即座に空中の長髪の男めがけて突き刺した。

 ――空中では避けようがない! ハクライに当たる!――と思った瞬間だった。

空中の体制で、ハクライはその槍をそらさず見ていた。そして体に突き刺さると思ったその体制のまま、両腕が槍めがけて構えられていた。敵が突き刺すその動きに合わせ、ハクライはその槍を両腕で掴んだのだ。自分の腹に当たる瀬戸際で。

「捕まえた」

 槍は彼の重みで自然と高さを落とした。槍を押さえたまま床に着地したハクライは、その掴んだ槍を逆に押し返し、敵の腹に突き刺すように素早く押し込んだ。

 流石に鎧を着ていた敵には致命傷にはならなかったが、急な反撃に敵はよろめいた。その隙を、彼が逃すわけがない。

 槍を押し込むように掴んだまま、一気に敵の間合いに入ると、ハクライはその両手を槍から離し、右手を脇に引くように引っ込めていた。そして次の瞬間、敵の脳天めがけて突き出していて――鈍い音が響いた。音に驚いて思わず私はゴクリと喉を鳴らしていた。

気がついた時には、首が異様な曲がり方をした敵が動きを止め、静かに仰向けに倒れていくところだった。

「硬いヤツだった。頭砕けなかった」

 途端、またいつもの間抜けな声に戻るハクライに、ミズミが腕を組んで歩み寄っていた。

「仕留めたなら問題ない。手は大丈夫か」

 その言葉に、ハクライの手を見れば、槍を掴んだ時に切ったのか、手のひらから血が滴っていた。

「これくらいなら大丈夫……って、あ。傷治ってく!」

 私の施した術が効いているのだろう。ハクライの切り傷は光りながらその傷口がふさがっているところだった。それを見て、私も思わずホッとしていた。

「よし、ちゃんと発動してるわね。良かった!」

「わー、これおもしろーい」

「なかなか使える術じゃないか。ティナ、頼りになるな」

 ミズミが珍しく褒めてくるものだから、私は思わず胸を張って頷いた。

「もっちろんよ! ちょっとは役に立つんだから!」

 薄暗い城内の中、私の声だけが明るく響いていた。




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