36/247
雪国の集落4
寝ているのか起きているのか、よく分からなかった。体の自由が全くない。でもなんだかとてもあたたかい。眠気を誘う温度だ。起きた方がいいのか、寝ていた方がいいのか分からなくて、ひとまず耳を澄ます。
――遠くで怖い声がする。でもそれは壁の向こうから聞こえてくる。低い声で、泣いているのだろうか、それとも怒っているのだろうか。聞けば聞くほど、その声がなんだかよく分からない。誰かを呪っているような、酷い声も聞こえた気がする。それが怖くて、私はもっと強く瞳を閉じた。
ああ、そうだ。きっとまだ夢の中……まだ、起きちゃ駄目だ。今起きたら、怖いものに遭う――。
そう思って眠気に誘われるまま意識が闇に溶けていくと、自然と怖い声が聞こえなくなった。それに安堵する一方、このまま起きれないんじゃないか、なんて一抹の不安が意識をかすめる。けれどそれもすぐに通り過ぎると、私は深い眠りに落ちていった……。