表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪悪な王は偽れる  作者: Curono
第8章「偽りの器を持つもの、真の器を持つ者」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

196/247

異変の森2


「まさかとは思いますが……ミズミ様、皆様と一緒にこの森の奥に行かれるおつもりですか?」

 先程までの私達の会話を聞いて、少々不安げに鬼の青年が問いかける。その問いに、ミズミは彼を見てニヤリと笑った。

「実はその石版に用があってな。行かなくてはならない。キセン殿、情報感謝する」

「待ってください!」

 お礼を言い、頭を少し下げるミズミに歩み寄り、鬼の青年は心配そうな様子で口を開いた。

「我らにとっても危険な場所でした。いくらミズミ様やハクライ殿が強いとは言え……そう易々と入るべき場所ではないと感じております。せめて、行かれるのであれば、我らにもお手伝いさせてください!」

 その申し出に即座に突っ込んだのはウリュウだ。

「いやいやいや、一度憤怒状態になってるキミ達連れてったら、また元の木阿弥でしょ。ボクらだって余計なお荷物しょって石版調べたくないよ〜。キミ達はおとなしく帰んなさい」

「しかし……」

 まだ食い下がる自警団団長に、ミズミは思ったよりも優しい雰囲気で答えていた。

「気持ちは嬉しいが、これは俺たちの問題だ。それに何より、実はキセン殿の隊にはお願いがある」

「お願い……ですか?」

 思いがけない言葉に、鬼の青年はその童顔の大きな瞳を更に丸くしていた。

「実はここにくる前にキエラ殿にお会いしていてな。恐らくキセン殿の自警団のことを言っていたんだと思う。この森で行方不明の自警団がいると言って心配しておられた。まずは隊の皆の無事を報告してほしい。頼めるか?」

 その申し出に、鬼の青年は眉を寄せ複雑な表情を浮かべていた。

「キエラ様が……。そうでしたか……キエラ様の耳に届くほどの大事になっていたんですね……。それは確かに急がねば……。ミズミ様、ありがとうございます」

 そう言って頭を下げる青年は、主の鬼族王への敬意と恩義、そして申し訳無さも感じているように思えた。

「では、我々は一度この森の拠点にしていたキャンプ地に戻ります。しばらく憤怒状態だったとしたら、あそこに残した馬たちも心配ですし……。キャンプ地の確認が終わってから、キエラ様のもとに戻りたいと思います。もし、ミズミ様達もこの森にしばらくおられるのでしたら、我らのキャンプ地をご利用ください。休憩場所にはなりましょう」

 キセンさんの申し出に、ミズミはまた軽く頭を下げていた。

「気遣い感謝する。キセン殿も治癒魔法を使ったとは言え、腕はまだ完治していない筈だ。無理は禁物だぞ」

「こちらこそ、お気遣い感謝します」

 そんなやり取りをして、キセンさん率いる鬼族の自警団は、私達の元来た道の方へと歩いていった。

「生真面目な青年ですねぇ」

 だんだんと遠のく鬼族の後ろ姿を眺めながら、細目の男は少々呆れがちに呟く。

「それがキセン殿のいいところであり、玉にキズってやつだろ」

 ミズミもチラと彼らに視線を向けながら答えれば、ウリュウは小さくため息交じりにぼやいた。

「ボクはああいう真面目くん苦手かな〜」

「俺はあんまりあの人好きじゃない」

「ええ〜、なんでよ二人共⁉ キセンさん、いい人じゃない!」

 ウリュウはともかく、ハクライまでもそう言う理由が分からなくて、思わず私は声を大きくしていた。するとウリュウはヘラヘラとまたあのいつもの調子だ。

「だって冗談通じなそうだし〜。ちょっとホントのこと言ったら本気で凹みそうだし〜。一緒に居たらちょっと疲れるタイプかな〜って」

「俺はなんとなくヤダ」

 その発言に私は呆れがちにため息を漏らしていた。もしかしたら、キセンさんみたいな人って、女性ウケはよくても男性ウケは良くないのかしら。ミズミも彼は付き合いがあったからか親しげな雰囲気だったし、私も傍で見ていて、感じの悪い人とは思わなかったのになぁ……なんてことが頭をよぎる。

 そんなことを思っていると、予想外な声がかかった。

「それよりティナ。お前少し休め。メイカ、ここで休憩だ。水筒と飯出せ」

「はいはーい。やったー、おやつー」

 ミズミの発言に私は驚いて彼女を見る。するとミズミは目を細め、思ったよりも真剣な声色で続けた。

「今回の鬼族の事件は、ティナばかり働かせたからな。魔力の回復も体力の回復もいるだろ。無理せずお前はここでよく休め」

 その言葉に、私は思わず口元が緩んでいた。厳しい言い方だけど、彼女ってばなんだかんだ言って私も気遣ってくれる。その優しさに思わずにやけていた。

「ふふ……ありがと、ミズミ。もー、ミズミってば、素直に私の事心配してるって言ってくれていいのにー」

 嬉しさからついついからかいたくなって余計なことを言えば、ミズミは相変わらずの意地悪顔でニヤリ微笑んで続けた。

「それだけ元気があれば、軽食の焼き菓子はいらんな」

「えー! 有ったなら言ってよ! 絶対食べる!」

「俺も食いたい」

「ああ―! ハクライ、それはボクの分〜!」

 雲に覆われた空がまだ重い森の中、愉快な私達のやり取りの声が明るく響いていた。雨足は弱くなり、雨が止みそうな気配があった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ