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邪悪な王は偽れる  作者: Curono
第7章「想う王、揺れる女」
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際どい聞き出し2


直後、部屋をノックする音がして扉が開けられた。予想通り、この宿の主人がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて部屋に入ってきた。私たちを見るなり舌舐めずりして歩み寄ってくるその様子だけで、私は嫌悪感を感じて視線を外してしまう。

「さてと……。美人なお姉さん方……いったいこの俺に何を聞きたかったのかな?」

立ったまま、丸く太った腰に手を当てニタリと問いかける男に、ミズミはあの色っぽい吐息を零して逆に問いかけた。

「一年ほど前に黒づくめの男達がここに来ていると聞いた。奴らが奴隷と共に向かった災いの土地を知りたい。そいつは何処にあるんだ?」

その問いかけに、男の表情が一瞬だけれど引きつった。しかしすぐにまたあの下卑た笑みを浮かべて、長髪の美女に歩み寄っていた。

「あの場所か……。俺たち一族は近づかない場所だ。一応俺の土地の管轄内だから、案内できないこともないが、危険な場所だからな……。案内にはそれなりの報酬がいるなぁ」

言いながら私を、そしてミズミを見て、たるんだ自分のあごをさする様子に、ミズミが近づいて腕を伸ばし、男のそのあごに指先を触れさせた。

「案内まではいい。場所を明確に教えてもらえれば十分だ」

あごに触れた指先から彼女の腕を取り、中年の男は美女を自分の胸に引き寄せて顔をぐっと近づけた。その距離はまさに口付けできそうな距離。ミズミの腰を抱くようにして腕を伸ばすその動きに、見ているだけの私ですら嫌な気持ちが湧いてしまう。

「場所を教えるのだって、それなりの報酬はないとなぁ……。あの黒ずくめ達だって、俺に一族の上玉を差し出したぞ」

その言葉に、本当に一瞬だけれどミズミの眉がピクリと動いたのが分かった。私までも反射的に息を飲んでいた。独族王……目的のために同族の女性を売ったんだ……!

でもそれに驚くのは一瞬だ。ミズミは即座に次の言葉を男の口元に囁いていた。

「さっきも言った筈……情報を得られるためならそれなりの覚悟はあると……」

色気のあるその言葉に、男の方が大きく口を裂くように笑い動きを変えた。彼女の腰を抱きかかえ体を密着させるようにして、もう片方の手を彼女の胸元に伸ばしてきた。

「ミ……お姉ちゃん!」

思わず口がでる私に、ミズミはあの前髪の下で目を細めるようにして私を一瞬見、すぐにウインクしてみせた。それに気がついてはっとする間にも、彼女の顔を見ていなかった男は鼻息荒く彼女の胸を撫で、興奮気味に笑っていた。

「ぐは、ぐははは……いいぞ、そうか、覚悟はあるか……! 手始めにこっちの美女から楽しませてもらおうか」

言いながら、欲望剥き出しの男はミズミの緩めた服の胸元に顔をつけ、胸を貪るように舌を伸ばし鎖骨から下を舐めていた。そして服を脱がそうと胸元の紐を引き解いた。

そんな様子を目の当たりにして、私の方が気が気でない。このままじゃミズミがこの男の餌食になっちゃうじゃない……!

鼻息荒く興奮気味な男の笑い声の合間に、ミズミの落ち着いた声が響いていた。

「主人、その災いの場所は何処にある?」

「ぐふ、ははぁ、はは、事が済んだら教えてやるよ……」

言いながら既に彼女の服を上半身脱がしていた男は、その下着にも手を伸ばすが――そこでミズミが男の腕を取り、色っぽく顔を近づけて微笑んで見せた。

「岩場の辺りというのは聞いている。目印は? 答えてくれるなら……私から脱いでもいいんだが……?」

そう色っぽく囁きながら、ミズミは肩にかかる下着の紐を自ら二の腕にずらしてみせた。その動きは同性の私から見ても艶かしくて、思わず男だけでなく私までごくりと喉を鳴らしていた。美女のこの誘惑に男が勝てるわけがない。男は即座に口を開いた。

「い、岩場の中でも、更に奥、石が赤くなってくる当たりだ」

「……で、その先のどんな場所が災いの場所なんだ?」

またも囁く美女は、既に右肩の下着の紐をずらし終え、次は左側に指を掛けて首を傾げていた。その様子に男はまたも興奮気味に続けた。

「赤い石に囲われた高い岩石地帯、そこに大きな扉があって、その先が災いの土地だ」

「成程……。何故そこが災いの土地、なんだ?」

既に両肩の紐をずらし終え、今度は胸を隠す下着の前ボタンに指をかけるその様子に、もはや男はミズミの言いなりになっていた。

「昔は瘴気に溢れていた土地なんだ。いまはジメジメした魔物が住むくらいで特段何もない。ただ奥が深くて、俺たちは誰もその奥に行った事がない。まだ奥に瘴気があったら危険だからな……」

男が言い終えると、ミズミの指先がその下着のボタンを外し終えていて……男が期待に満ちた様子で目を爛々とさせていると――

突然鈍い音がガツンと響いて、ミズミが胸元を押さえてニヤリと微笑んでいた。

「情報ご苦労。そこまでのヒントがあれば十分だ」

直後、床に崩れ落ちて気を失っている男の姿があった。男の目の前で艶かしい様子の美女は、その片足を折り曲げて構えた姿勢をとっていた。

まさに一瞬、全く見えなかったけれど、男が油断しているそのがら空きの胴体に、彼女は鋭い蹴りをお見舞いしていたのだった……。






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