信頼3
地面に尻餅をついて座っていた。目の前では野盗のような男たちが走り去っていく後ろ姿が見えた。それを見送るように見つめてぽかんとしていると、白い大きな手が目の前に飛び込んだ。
「いつまで座ってんだ。ほら」
そう呼びかけられて白い手を掴めば、思ったよりも力強く引き上げられて、私は立ち上がった。そうだ、私、盗賊みたいな男たちに襲われそうになって、そこをこの人に助けてもらったんだった。
「ありがとう……まさか貴方が助けてくれるとは思わなかった……」
思ったことが咄嗟に口を付けば、私を引き上げた男が鼻を鳴らす音が聞こえた。
「お前に死なれたら困るからな。ただそれだけだ」
その言い方に、少しばかりムッとしてしまう。とはいえ助けられたことに変わりはないから、一応お礼は言うべきだろう。そう思って私は頭を下げた。
「言い方はちょっと気になるけど……でも、助けてもらったことに変わりはないから、一応お礼は言っておくわね。ありがとう」
すると目の前の男は、その白い手で私のあごに触れ、そのまま頬までをその手のひらで覆うように触れて顔を上向きにさせてきた。その仕草に、その上そんな事をしてきたのが男性なのだから、少なからずドキリとして私は顔を上げていた。
「……お前、光の神官だな……?」
仕草の割に問われたことがそんなことだったものだから、私は反射的にその手を払って声を荒げていた。
「そ、そうだけどっ……! ちょっと、行動が紛らわしいわよ。……もー、キスでもされるのかと思った……」
熱くなった頬を押さえながらそんな事をボヤけば、問題行動をした男が頭上からため息を零していた。
「お前、何期待してたんだ」
「期待してないってば」
そんなやり取りをして……ふと意識が戻る。
――これは――夢だ――。
夢なのに、きっと過去の記憶なのに――このやり取り……誰かに似てる……。ふわっと脳裏に姿が浮かび上がった。
――サラサラと溢れるような茶髪をなびかせる、緑色の垂れ目がちな綺麗な顔――
そう、私の今一番近くにいる、大切な仲間――
――闇族王、ミズミ・スティラ――
そう思ったら、急に辺りが暗くなって、意識は闇の中に堕ちていった。