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邪悪な王は偽れる  作者: Curono
第5章「危機に陥る王、仕える従者」
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信頼1



 宿に戻れば、少しはミズミもゆっくり出来るかと思ったら……まさかの展開が待っていた。宿のロビーには何人もの女性がいて、やはりミズミにお礼をと何か差し入れを持ってきてくれていたし、食事に食堂に行けば、やはり何人もの女性に声をかけられた。

「先日はありがとうございました」

「気にするな。それより、怪我がなくてよかった」

「あの、まだこの町に居るんですか?」

「ああ、もうしばらくはな」

「よかったら、うちのお店にも来てください。お礼しますから!」

「気遣い感謝する。明日にでも邪魔してみるか」

「じゃあ私の所も! 隣なんです!」

「そうか、分かった。ところで……そこの女性は何か用か? 話したそうじゃないか」

「あ……は、はい……。その……よかったら、私のお店にも……」

「分かった、明日お邪魔しよう」

 会話を聞くだけでも、集まった女性たちが次々声をかけてくるのがよく分かる。そしてミズミはといえば、女性たちに優しく微笑んで、どの人にも割と丁寧に対応しているのが不思議だった。

「なんか……私達に対する態度とは全く違う気がする……」

 食事の席を立った途端、もう女の子に囲まれているミズミを遠巻きに見ながら、私達三人は夕食を摂っていた。

「うん、いつもミズミあんな感じ」

「スティラ様がなんであんなに女の子にモテるのか、ようやく分かったよぉ〜。本当に女の子には優しいんだねぇ」

 ウリュウがそう言って頬杖つきながら、デザートの果物をつついている。その言葉に思わず私は頬を膨らませていた。

「そりゃあ確かに優しいけど……なんか、私の時だけ違くない?」

 そう、一番の不納得部分はそこだった。ミズミってば私にはあんなに優しく笑わないし、あそこまで丁寧に対応してくれないし、どちらかと言うとぶっきらぼうな対応をされる気がする。同じ女性だというのに、私だけあからさまに態度が違うのが、何だか腑に落ちない。

 そう思ってミズミを睨むように見ていると、ハクライがケラケラと笑っていた。

「あはは、ティナは確かに女の子扱いしてないかも」

「でしょ⁉ もー、一番近くにいるのに、なんでそっけないのかしら」

 ミズミの一番の相棒にまでそう言われたら、やはり勘違いじゃないと確信できる。ますます納得いかない私に、長髪を揺らして彼は続けた。

「それだけ気を許してる証拠だよ。ミズミ、ティナのことは信頼してる」

 その言葉に、私は目を丸くして彼を見ていたに違いない。私と目が合うと、ハクライは首を傾げるようにして笑っていた。

「……信頼……かぁ……」

 そう考えれば、彼女のあの態度も納得できる気がした。私には……気を許してくれているから……逆に気の置けない関係ってことで……気を遣ってこないのかな……。

 そう思ったら、逆に少しばかり嬉しい気持ちも湧いてくる。そんな私とハクライの会話を聞いて、視界の隅で肩を震わせるようにして笑う細身の男がいた。

「成程ねぇ〜。信頼してるから、逆にあんなそっけないのか〜。じゃあ、ボク達だいぶ信頼されてるってことですかねぇ?」

 その言葉にハクライはやはり笑って答えていた。

「だと思う。ミズミ、俺達には本音で話してくれる」

「それは嬉しいことだけど〜、それでもやっぱり、もう少し可愛げがあったら良いんだけどねぇ〜」

 そんな事を言う従者に、相棒の男はまた笑うのだ。

「あはは、そしたらそんなのミズミじゃないよ」

「あ、言えてる〜」

「ふふ、確かに」

 思わずハクライの発言に、私達は同調して笑っていた。

 きっと、あの女の子たちと同じなんだ。私達も――ハクライは勿論、ウリュウだって、私だって――ミズミのあの人柄に惹かれているんだ。



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