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邪悪な王は偽れる  作者: Curono
第5章「危機に陥る王、仕える従者」
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違和感3




 明かりは灯っていても呼吸の音が響く以外音がしない部屋、人の気配はその呼吸の主だけだ。そんな静かな部屋に、ぎしりぎしりと足音が響き出す。ベッドの上で浅い呼吸をして瞳を閉じている茶髪の女に、人影が差し込んだ。その人影に気づかないまま、女は固く目を閉じて胸を上下している。女が横になるベッドのすぐ隣にまで人影が近づくと、部屋のランプの明かりを受けて、影の持ち主の緑色の髪がわずかに黄色く光ってみえた。ランプの黄色味のある明かりに照らされた人物は細身の男だ。男の影がベッドの上に落ちると、それはますます彼の細さを助長していた。

「スティラ様……」

 囁くような静かな呼びかけだが、その声はいつもの彼の甲高い声ではない。何処となく低く重い響きを含ませて名を呼ぶ声に、違和感を感じて女は薄っすらと瞳を開けた。その様子を見下げるようにしている男の口元にはあの軽い笑みはなく、わずかに力んだ様子の口がまた開かれて、女は名を呼ばれた

「ミズミ・スティラ様……。これを……覚えてます?」

 薄っすらと開かれた緑色の瞳、その白く整った顔に、男の手の影が落ちていた。

細い体の先に伸びているのは細い腕の影の筈なのだが――ベッドに落ちる男の腕の影は細くなかった。肘の辺りから異様に膨れ上がりゴツゴツとして人らしからぬ形をした腕の影、その腕の先で広げたその手の影は、人の手の大きさの二倍はある異様な大きさ、その上指先には鋭い爪が伸び、女の頬に落ちる影はその爪の影。その影とともに爪の切先が、女に迫っていた。



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