遊び人は宿屋の店主と意気投合する?
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商業都市ラクーン
さすがに都市という名前は伊達じゃない。
人がいる、そして、何よりもうれしいのが人じゃないのもいる。
つまるところの獣人とか亞人とかエルフといったものだ。
なにこれ、ファンタジーすぎっぞ。
早急に奴隷制度が導入されていないかの確認が必要だ。あと奴隷の相場だな。
すでに夕暮れ時であり、今日しなくてはならない最優先事項は宿の確保と遊び先の決定である。
遊び人が遊ばずに何をするってんだ?レベル上げすべきでしょうね……
だが、シコシコ修行なんかするのは職業倫理に反するでしょう。こちとら、職業「遊び人」だ。遊ぶことが仕事だ!
手持ちにあるのは初期に女神がくれた50G+スライム倒したお駄賃1G-ラグーン入場の3Gだ。
物価が知りたい。
特に奴隷の……
商業都市だけのことはあって、いたるところに露店がある。
宿につく前に腹ごしらえだ。
「らっしゃいらっしゃーい。スライムの串焼き一本1000シルバーだよー」
どうやらスライム食べれるらしい。
「らっしゃいらっしゃーい。エール一杯500シルバーだよー」
その後も様々な露店で物価を調査。
露店によってかなり価格差があったりしたが、大体の物価を把握完了した。
エールは、一番高いところで2000シルバーで一番安いところは500シルバーであった。
通貨単位も把握できた1G=10000シルバー
大体の相場を確認した結果、1G=日本円で1万円
そう考えると、スライム1体倒して2千円ということだ、これレベルしっかりあげれば、ひたすらスライムだけ倒して人生終えることができるんじゃないだろうか。なんて優しいホワイトな世界!?
だが、街道を通ったせいか、個体数が少ないのか。俺のように楽して稼ぎたい輩が乱獲してるのか?スライムを見つけるのに時間がかかるかもしれない。まったくけしからんぜ。
さて所持金を見ると残りは40G。買い食いおそろしや……初めて見るものばかりだしね?しょうがないよね。
残金は、約40万円あるということだ。これならば、宿の確保はたやすいだろう。
だが、逆に言えば40万円しかないとうこと……
ちょっとした国内旅行一か月もいったら40万円以上かかるよね?
楽しく安全に生きていくためには、暫くはスライム専門ハンターとして生きるのが正解に思われる。
それには武器と防具及び大量の薬草をを確保し安全マージンをしっかりとることが必要とされる。
店に売っていた一番安い武器が、ボロボロのゴブリンソード10G
つまり、今の俺に遊ぶ金は……無い?
明日どうなろうと10G分は遊ぶからな!
道中明らかに人間ではないもふもふした可愛い子に道なぞに聞きながら
宿屋町へ、こぎれいな洋館から、小汚いほったて小屋まで多数あるが、さすがに人間の尊厳としてほったて小屋に泊まるのに金は払わん。
中級程度の宿のおやじに声をかける。
やたらガタイの禿げマッチョおじさんだ。頭には毛が無い、顔は怖い、年齢は推定35~45くらい?実にどうでもいい情報である。
どちらかというと、冒険者とかそういう人間じゃないか?本当に宿屋のおやじなのかと疑ってしまう。
どんだけ強面だろうと、所詮は宿屋の店主、ここは少し冒険だ。遊ぶ金捻出のためにもね。
「おやじさん、今年は一泊いくらです。一番安いプランでいいんですが?」
「それなら、四人相部屋になるが、浴場代含めて素泊まりで5000Sだ。」
「おいおい。おやじさんおれのこと忘れちゃったんですか!去年ここに一週間ほどいた。ピッケルです。あの時は相部屋で一泊3000Sでとめてもらったはずなのに、物価上昇してるのんですか?」
遊び人の悪いノリ、人相の悪い怖い店主だというのに、ついつい遊んでしまう。
転生したてで浮足立ってるんだね。後悔はない。
「むむ。わりーわりーピッケルだったか…………一年で見間違えるように成長しやがったな。お前のことを俺が忘れるわけないだろ?これでも宿屋の店主だぜ。おめーなら3000Sでかまわねーぜ。」
まさか安くなるとは……ノリのいいおっさんで助かる。だてに禿げてないな!
非常に消極的だが、せっかく無茶な値引きに成功したのだ、素泊まり相部屋でも3000円ならとりあえず抑えて活動拠点とすべきだろう。
「おっけーじゃあ去年とおなじ3Gな十日間の予定だがいいですか?」
「ああ。去年と同じ十日間だな。金があるなら全日前払いの2.5Gでもいいぜ」
少し悩むが今宵の軍資金に影響が出る。
「いや。それには及びません。毎日きっちり3000Sで」
「オーケー。上客じゃねーか。それよりピッケル一年ぶりだ積もる話もある。酒場へいくぞ。」
「おーい。リューネ俺はピッケルのやろうと酒飲んでくるからよ。あと頼んだ。」
「はい。ピッケル様ですね。どなたか存じませんが楽しんできてくださいな。飲み過ぎは禁物ですよ。」
仕事中に仕事ほっぱらかして友達と飲みに行く、なんという亭主関白。
おっさんは、禿げたごつい、ゲイバーのマスターみたいな奴なのに、奥さん華奢で可憐で色白で胸は洗濯板で最高っす。年はおっさんとは少し離れているか?
この世界はあれか?強い者がもてる世界なのかな?異世界最強目指しちゃう?
とんでもなく美人の奥様がお出ましになられもうした。
リューネさん。あなたの名前覚えましたから!!
そんなこんなで、ゲイバーのマスターもとい宿屋のおっさんと飲みに行くことになる。
初対面のおっさんと飲む。しかも相手は、此方を旧知の知人と間違えてる?勘違いしてる?
俺に騙されてる!ゲイマスター
ばれたらどうするんだ?ドキドキが止らない。これはもしや俺のお尻が危ないのか??でも冒険ってこういうことだよな。
せっかくだ、情報収集といこうじゃないか。
とにかく酒だ酒。酒もってこーい。異世界転生して、現実が現実逃避しちまったから、酒飲めばこれ現実にもどれるんじゃね?
おっさんマスターについていくこと五分。すぐに酒場に到着。しかし、思っていた冒険者が集まるような酒場ではなく。いうならばこれはスナックだ。常連客なじみ客が通い中では、生ぬるいコミュニケーションが図られるスナックだこれ。
常連以外お断りといった風体の門構え。俺がたじたじしていると
おっさんマスターは颯爽と中へ。
「二人だ、俺はいつもの、こいつにはエールを」
勝手に俺のものまで注文してくれるおっさん渋い。しかも年が若いとみるや、アルコール度数の低いエールの注文。
細かい気づかいがうれしい。むさい武骨なハゲおっさんが細かい気配り、このギャップにリューネさんもやられたかな。
「はいよ。」
といって対応するのは女将一人。一応元人間。もとい元美女。年はいっているが気品と恰幅はある。飯はきっとうまい。
席にすわると、おっさんにはなにやら赤い液体が届く、ワイン的な何かかな。
俺にはエール、いい香りだ、早く飲みたい。
「一年ぶりの再会に乾杯だ」チーン
俺は一気にエールを飲む。うまい。のどごし爽やか、アルコール強め。
最初の一杯を飲み、さあ宴の始まりだ、とはいかない…
宿屋のおっさんが強めの殺気を当ててくる、おい地味に継続ダメージくらってます。直ちにやめなさい。俺が何したってんだ?ちょっと嘘ついてるだけだろ??
警察に突き出しますぞ!
「で、お前は誰だ。何者だ。正直に答えれば殺しはしない。」
おっさんがいきなりの真顔で直球ストレートを放ってくる。ちょっと冗談言っただけなのに、いきなり殺しはしないとかないだろう?それ半殺しまではするぞってこと?なんて物騒なおっさんなんだ。
逃げることも一瞬考えたが……観念し切り札をきる。
「遊びが過ぎたようですね……俺は……俺は転生者なんです。」
ジャブなのかストレートなのか果たして禁句なのか、必殺ワードを放つ。さあ相手のカウンターは。
「やはりそうか……」
むむむ、気が付かれていた?おっさんお前こそ何者だよ!
こうなったら後は正直にすべて話そう。
「騙してすみません、転生して初めて泊まる宿だったんです、手持ち金も少なくて、少しでも安くならないかと。」
たしかにあの宿に素泊まりで5000円は高いよオッサン。朝バイキングか夜のおともにリューネさnつけてくれなきゃ納得できない。
「転生者か…そうか色々納得がいった。俺も転生者を見るのは初めてだが、伝承では転生者は俺たちの救世主となる存在だ。多少の粗相はなかったことにしてやろうじゃないか。ところで転生して何日目なんだ?」
「初日です…実は右も左もわかりません。できれば助けてほしいんですが……」
救世主なんたらになるつもりはないが、ありがたい存在っぽい。おっさん俺に恩を売るなら今のうちだぞ?
「ははは。転生初日に俺の宿で値切るとはいい根性だ。これも何かの縁だなし、気に入った。右も左も俺の知ってることは全部教えてやる。だがまあとにかく今はお前の転生に乾杯だ。」
切り札「転生者」無事に効果発動。この世界では転生者は期待の星で、無下にできない存在のようだ。
合点承知の助今後もスキル「転生者」に存分に助けてもらうこととしよう。
でもあまり使いすぎると魔王討伐ルートに入りかねないから今だけ今だけ、今日だけ今日だけ……
いろいろあったが、その後宿屋のおっさんと濃密な時間を過ごした。
色々丁寧におしえてくれたけど?全部忘れた……遊び人だものしょうがない。
そして幸いにも、俺の貞操は守られた。めでたしめでたし。とにかく濃密な一日だった。
早く寝させてくれ。飲み過ぎた。