遊び人はドラゴンと遭遇する。
「ぐるるるるるるぅぅ」
あっこれ知ってるわ、ドラゴンの咆哮だ。
死ぬぅぅぅ、次転生したら、素直に勇者になる。俺は魔王を倒すぜ。
早くも走馬灯が流れるも、一瞬で終わる。あらやだ俺まだ生まれたばっかだわ、この世界では。思い出す記憶がなさ過ぎた!
『そこの人間、お前は何者だ、なぜここにいるっ。』
なんて考えていると、どこからか頭に直接話しかけられる……ボケドラゴンが!音が煩い、頭が割れるぞ。
「はい、俺はレベル1の遊び人でして、名前を……ピッケルと申します。」
自己紹介ついでに、此方での名前を適当に作ってしまった。あとレベル1しかないことを猛烈アピールしておく、ドラゴンのくしゃみとかで死にかねないからな……
名前で思い立ったのラッキーマンだが、さすがにカッコ悪いので少し可愛い系の名前にしてみた。
『レベル1の遊び人?「遊び人」とはなんですっ?ふざけるのもたいがいにしなさいっ。ここは、樹海の東の果て、モンスターのレベルは高く、レベル1で倒せるはずもない。まして私はここに……』
樹海の東の果て??モンスターレベルが高い??
おい女神さんあなた確実に転生場所を間違えてます!もしくは、俺を殺す気かな??
でもこっちに進むの決めたの誰だっけ?うん木の棒だった気がする!ピッケル悪くない。
グルルルという咆哮とともに、ドラゴンさんの口に火がたまっています。
走馬灯もう一回いっといたほうがいいかこれ。一瞬で終わるけど……
ここは、イチかバチか俺が持っている最大の切り札を切るしかない。
「レベル1の『遊び人』そして異世界からの転生者なんです。転生したのはほんのつい先ほど、この世界のことは何も知りません。道に迷い森をさまよっていたらあなたに出会った次第です。」
異世界転生者というカードを切ってみた。どうなる?これでだめなら幸運300に命をかけて、戦うしかないか?無理でしょ。
『転生者ですってっ、魔王の力が強まる時、異世界からの転生者が増え、その中から魔王を打倒する勇者が生まれるとの伝承がドラゴンにはありますっ。面白いですねっ。』
『でもあなたは『遊び人』ですかっ。転生者なのに『遊び人』だなんて……あははははははは。あはははは。ふふふふふ。』
ドラゴンさんのツボに入ったようだ。
口から火が出たり入ったりしてるぅぅぅぅ。ひっこめい!笑うな―。
「ははははは。」
俺も一緒に笑っておく、一緒に笑えば連帯感もでるってもんだ!
そんなことより、全国百万の「遊び人」に謝れ!ジョブが「遊び人」ってだけで笑われるなんて……この世界ではそういうものなの?いつか遊び人組合を組織してドラゴン退治をしてやるぞ。
とにかく、いまのうちに帰っていいっすか。
『失礼しましたっ。転生者を見るのは私も初めて。樹海を抜け、この私に最初に会わせたのも何か意図のあってのことかも知れませんっ。貴方のの未来どうなるか、興味がありますっ。正直に話して正解でしたねっ、貴方の命この私が預からせてもらいましょう。』
よく喋るドラゴンさんだ、勝手に命預かられたけど、どうやら窮地は脱したらしい。
どうせなら職業竜騎士あたり選択しておけば、イージーモードだったか?
『よって貴方に特別に私の封印を解く許可を与えようっ。特別ですよっ!』
封印?あっよく見るとこのドラゴン足が鎖で繋がれてる。可哀そうに!
なんてことあるか。
この封印した人甘すぎだろ、もっと厳重に鎖でグルグル巻きにするか、とどめを刺しとけよ。
なんで中途半端な封印するの?そのせいで俺地味に命の危機なんですけど。首こっち向いてるし、ブレス的な何かされたら死にますよこれ。
「封印を解くといわれましてなぁ。その鎖とても俺のようレベル1の遊び人では解くことはできません。ではサヨウナラ。」
できないことはできない。封印されているなら俺だって逃げれるでしょ。アディオス。
『まってまって逃げるというなら、ドラゴンブレスしちゃいますよっ!私を封印したのは、性悪の魔族でねっ、卑怯にもお肉に痺れ薬を仕込んだ罠をはっていたんです。神聖なるお肉を薬で汚すなんて信じられます?いえ信じられませんっ!許せますっ?いえ許してはなりませんっ!鍵ならほらほらほら、私の首に下がっているんです。魔族は、この姿のままじゃ私に鍵が取れないと分かったうえでここに置いたんですっ、次会ったなら灼熱の業火で一瞬で消し屑にしてやるんですっ』
どうやら、このドラゴンは人にとらわれていたわけではなく、魔族にとらわれていたらしい。しかもお肉に目がくらんだお馬鹿さん……やはり逃げておく?
魔族ってなによーーーー魔王の側近的何かじゃないの??
だがどのみち逃げればドラゴンに殺される。ならば選択は一つ、鍵を取りにドラゴンの首までいき、封印をといてやりしかるべき報酬を!つまりは、自分の命を守るしかあるまい。
転生人生最初の試練。
「わかりました。すべて俺にお任せください。何分レベル1の身あなたの威圧一つでしんでしまうかもしれません。ぜひしばらくはお静かに」
そうして俺は静かにドラゴンへ向かう。ヤバいチビル 小的な意味ではなく大的な方向で……そういえば転生してからまだトイレ行ってなかったわ。ところでこの近くに、水洗トイレはあるのかな?ウォッシュレットは完備頼みますよ!って今はそこじゃない。
一歩一歩ゆっくり確実にドラゴンの首もとにかかっている、鍵に向かう。
ドラゴンまじ大きい。
鍵に到着、ドラゴンの足をしばっている大きな鎖の鍵なだけあって鍵だけでもオレの片腕くらいある。
無事に鍵を使い首輪ならぬ足輪を外してやる。
『小さき者よ、よく私を封印より開放してくれましたっ。感謝しますっ。』
というと、ドラゴンはみるみるうちに小さくなっていくではないか。
そして最終的には人型に落ち着いた。お前のほうが小さき者だぞ。ヤルのかコラ!
そして、おもっていたとおり雌だ。女の子と呼ぶべきか?
先ほどの大きさが嘘のように小さくなる。
人間としても少し小さめ なにより見た目俺より若い。
白い肌に、髪は金髪で、黄金に輝く瞳。
凛とした強さと気品を兼ねそろえた、半端ない美少女である。
「驚きましたっ?私こうみえてもドラゴンの上位種の竜人なんです。だから通常は人型なんですよ。さっきまでのは竜化した状態ですっ。竜化状態を維持するには、少しづづですが、SPを消費してしまうんですっ。」
「卑怯な魔族に魔法でとらわれた私ですが、魔族も私を殺し切るほどの火力がなくて、魔族は私を弱らせるために、強制的に竜化させる薬を飲まされて、そこに捉えていたんです。」
「助けてくれたお礼にこれ差し上げますねっ。竜呼びの笛です、一度だけですよ!一度だけですが困ったときにつかってください、全速力で助けにきてあげますっ。」
「それでは、私はこれで、早くしないとこずるい魔族が返ってきます。私も一旦家に帰って英気をやしなってから、魔族を血祭りにあげようとおもいますっ。」
可愛い容姿に見惚れていたが、しゃべってる内容は恐ろしい。
とにかくここは危険だということが分かった。ならばお願いとやらを使って俺もどっか町まで運んでもらおうか?
なんて考えていると。
再度竜化したドラゴンは力強く羽ばたいていく。あっという間に星になってしまった。
すぐ竜化するんなら、ドラゴンのままでよかったんじゃない?
あれか自慢か?ただのドラゴンではないと。
だが待ってくれ、せめて町の方向だけでも教えてくれ。というか近くの町まで乗せていってくれよ!これでも命の恩人だぞ……時すでに遅し。
竜呼びの笛で呼び戻すというのも一つの手だが……
せっかく得た必殺スキルとも言うべき一回きりのドラゴンへのお願い!
道を聞くのに使うのはためらわれる。また運に任せて進むしかない。
ふと、ドラゴンがつながれていた場所みると。きらきらと光る何かがある。
まさか、お宝か?早速手に取る。宝石のように本当にきらきらと美しい。
見ればたくさん落ちているではないか、一応すべて拾っておく。
ドラゴンの宝玉 5個
竜の涙 2個ゲットだぜ。アイテムボックスに自動収納されていく。マジで便利だ。
幸先のいい出だしか?これが高く売れるか売れないかで俺の人生がかわってくるぞ。
それより頼む帰ってきてくれドラゴンちゃん。