遊び人と勇者パーティーそれぞれの事情
カリンと、とシャルロットが二人きりで大陸最南端で比較的安全ともいえる商業都市ラクーンを目指していた理由。
組んですぐのパーティーメンバーにちょっと突っ込んだ事情を聴きすぎなのかもしれないが、明らかに不可解だ、それが俺の命に係わる可能性がある以上は危険要因は早期に把握し、場合によっては排除せねばならん。
「シャルロットさん、勇者と聖者がこんな南の地に二人だけでパーティーを組んでいる理由話してくれませんか?何か理由があるんでしょ?」
「えっとね。それはオイオイ話そうとおもっていたんですが、やはり気になりますよね。じゃあここらで休憩をはさみながら簡単に?再度自己紹介を踏まえてそこら辺を説明したいとおもいます。」
「カリンもそれでいいかしら?」
「そうね。ピッケルはもう正式なパーティーメンバーだし、知っておいてもらったほうが今後の為になる、勇者としての私がいかに無力で世間知らずなのか知っておいて貰わないと、期待ばかりもたれてもつかれちゃうしね。」
ちょっ勇者なのに無力なのお前?人生やり直して強くなってきてくれ。
しかも世間知らずって……PT首にしてやろうか?
でも自分で自覚してるところは好感だ。
以下話は長くなるので要約だ。
シャルロットは、孤児院育ちの18歳独身。彼氏なし。職業聖女。
カリンは、某貴族のご令嬢で16歳独身。彼氏なし。職業勇者。
この世界では、人間は14歳あたりで戦闘職業に目覚める。
シャルロットは少し早く8歳で、「聖者」という回復職の中でも、かなり特殊な職に目覚め、孤児院から修道院へと身柄を移送された。
その後は修道院で、いずれ勇者と冒険に出る可能性の高いシャルロットへの英才教育が始まる。
10歳のころにはスキルである回復魔法を使えるようになり、町の人々を癒し、聖女として有名になっていった。
そして、15歳になるときである、修道院からの命令で初めての勇者との冒険に出ることになる。
一年後勇者は死んでしまいシャルロットは一人修道院へ。
悲痛な思いで日々をおくっていると半年後にはまた、修道院からの命令で二人目の勇者との冒険にでることとなった。
一年後勇者は死んで再度修道院へ。
都合勇者パーティーで二年を過ごしたシャルロットはレベルこそ高くなっていたが、二人も勇者を殺してしまったことで、修道院での立場は最悪のものとなる。
一方カリンは、某貴族の娘として、父親の溺愛を受けながら、かなりわんぱくではあるが、貴族としての素養を身につけるながら、何不自由なく生活をしていた。
だが、職業勇者に10歳で目覚めたときから人生が狂い始める。
娘を溺愛する父親は、娘を籠の中にいれ、優秀な冒険者や騎士団を同行させ、パワーレベリングを開始する。
勇者である娘は、いずれ魔王討伐の旅に出る、それは職業からくる本能のようなものであり、あらがうことはできない。
また国からもそのように要請されており、貴族としてそれは拒否できない。
ならば、親としてできるだけのことをしてやろうと考えた結果ではあるのだが……
結果16歳になって冒険に出た際、訓練ばかりで、ほとんど実戦経験のないままのレベル30職業勇者ができあがってしまった。
勇者として冒険に出る際、父親としては、できるだけレベルの高い回復職とパーティーを組ませたいと考えシャルロットに白羽の矢が立ったというわけだ。
聖女にしてレベル40そんな逸材早々いない。
他にも、救国の剣聖だの、シャルマン流拳法の師範だの、傭兵だの、強いパーティーメンバーで回りを固め徹底した監視と管理と過保護の限りをつくしてくる父親に嫌気がさし、気の合ったシャルロットと二人夜な夜な街を抜け出して、カリンとシャルロットの旅は始まったのだ。
カリンは勇者としてステータスや固有スキルは優秀だが、とてもこのまま魔王のいる北部を目指しても勝てるはずはない。
まずは、比較的魔族の影響がすくない、南部ラクーンあたりで、レベルアップと個人の技量を高めてから魔王軍討伐をしようなどと考えていた。
父親から押し付けられたパーティーメンバーを断ってはいるが勇者と聖者二人では、魔王打倒は危うくPTメンバーの充足も重要な課題ではあり、こちらはカリンが勇者としてレベルに見合った力量を身に着けたら、ギルドや最悪父親の手を借りて増やせばいいと考えていたところに、魔族を倒す、謎の宿屋の店主と遊び人と知己を得てパーティーに誘ってみたということだとのこと。
シャルロットが俺の力を試すのもわかる。
弱い仲間なんぞこの過酷な旅では一瞬でしんでしまうのだろう。
とにかくお前呪われすぎだぞ!一度自分で自分を浄化しろ。
勇者二人殺しておいて、三度目の正直とってことか?ならば今度は成功するはず!ってなことあるかい!
二度あることは三度あるんだ……
つまり、それだけ大変なことだということだ、魔王を倒すということは。
色々思うことはある。
それは逃げたい!であり。
二人を守りたい!であり。
前から思っていた通り強くなりたい!であった。
話を聞き終え、色々事情を飲み込んだ俺は、とにかく深いため息をつくのであった。




