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8.転売屋は質屋を調べる

それなりに高く売れそうな品を仕入れ、向かったのは街で二軒あるという質屋。


だが一軒は臨時休業らしく開いていなかった。


しかたない、もう一軒に行くか。


と言っても場所は通りを挟んで反対側。


同業が目の前ってそれはそれでどうなんだ?


どう考えても次に行きにくいだろ。


だって向こうから出てきた所が丸見えなんだぜ?


『あ、あいつ値段に折り合いがつかなくてこっちに来たな。』


とかなんとか思われるに違いない。


これは俺の被害妄想だろうか。


まぁ、俺には関係ない話だ。


通りを横断して目的の店に向かう。


ショーウィンドウには高そうな武器や宝石等様々な物が陳列されている。


これも質流れ品なんだろうなぁ。


触れられないから何が何かわからないが見ただけで高そうなのはわかる。


後学の為に触らせてもらえると嬉しいんだけど、まぁその辺は反応次第だな。


いつまでも外で見ているのもあれなのでショーウィンドウ横の扉を押して入る。


街の喫茶店のようなカランという乾いたベルの音が店に響いた。


「イラッシャーイ、ようこそベルナのお店へ。」


中にいたのは一匹の猫。


ちがう、猫娘。


すごいな本当に存在したのか。


猫がしゃべっている。


猫耳娘とかじゃない、完全に猫だ。


「どうしたのかな?私の顔に何かついているかな?」


「いや、ニャとか言わないんだなと思って。」


「ニャニャ!そんなこと言うはずないじゃないですか!」


いや、今言ったよ。


ワザとか、ワザとなのか?


まぁどっちでもいいか。


「買取をしているって聞いたんだが。」


「もちろん、でも質入れじゃないのかな?」


「即金が欲しくてね、流してもいいがその間は他の物を売れなくなるんだろ?」


「確かにそうだけど・・・、とりあえず見せてくれるかな?」


「これだ。」


カウンターまで進み先程仕入れたばかりの収納魔法付革袋から質入れ用に仕入れた品を並べていく。


『ワイルドボアの外套。巨大なイノシシから採れる一枚物の革を外套に加工した物。水除の魔法が付与されている。最近の平均取引価格は銀貨25枚、最安値が銀貨3枚、最高値銀貨70枚、最終取引日は14日前と記録されています。』


『腐らずの壺。防腐の魔法が付与されており食品が傷みにくい。最近の平均取引価格は銀貨30枚、最安値が銀貨10枚、最高値金貨1枚、最終取引日は31日前と記録されています。』


『身代わりの指輪。命を失いそうになった時に代わりに砕けて装備者を守る。少々の亀裂あり。最近の平均取引価格は銀貨50枚、最安値が銀貨30枚、最高値銀貨80枚、最終取引日は12日前と記録されています。』


『外さずの弓掛。弓士なら一度は憧れる品。だが、外さないわけではなく外しにくくなるだけである。最近の平均取引価格は銀貨20枚、最安値が銀貨16枚、最高値銀貨41枚、最終取引日は54日前と記録されています。』


『エクストラポーション。通常よりも効果の高いポーション。残量はわずか。最近の平均取引価格は銀貨15枚、最安値が銀貨13枚、最高値銀貨18枚、最終取引日は2日前と記録されています。』


これに加えて先ほど買い付けた鉄の剣と革袋も一緒に乗せた。


これだけの数に驚いたのか置いていく度に猫娘は目を輝かせた。


ちなみに後で仕入れた品は全部で銀貨50枚。


少々高くついたが買取の値段を知る為なのでプラスが出ればオッケーぐらいで考えている。


他にも色々と見つけたのだが、目ぼしいのはこれだけだ。


掘り出し物がいっぱいあると踏んでいたのだが、なかなかいいのは見つからないものだな。


「ニャニャニャ!どれもいい品ばかりだけど本当に買取でいいのかニャ?」


「あぁ、個別に値段を出すのが面倒なら全部でいくらでも構わない。いくらになる?」


「ニャウン、詳しく調べたいから奥にもっていってもいいかニャ?」


「構わない。」


「じゃあちょっとそこに座って待つニャ。でも、店の商品は見てもいいけど触っちゃダメニャよ?」


チッ、査定中に触ってやろうと思ったのだがばれてしまったか。


黙って触ってもいいけど、防犯ベルよろしく何かよからぬ魔法がかけられていても困る。


触らぬ神に祟りは無しってやつだな。


ってか、途中から猫語?全開だったんだがあれで隠しているつもりなんだろうか。


いや、むしろ隠していないのか?


奥に引っ込んでしまった猫をひたすらに待つこと数時間。


嘘だ。


歩き疲れたのか椅子に座っている間にいつのまにか寝てしまったようだ。


起きた時にちょうど猫が裏から品々を持って戻って来た。


「お待たせしました、どれもいい品ばかりで驚きましたよ。」


「そうか?それはよかった。」


「見た感じ冒険者じゃないですけど、貴方の持ち物ですか?」


「まぁそんな所だ。ここで商売を考えているんだが元手がなくてな、これを機にガラクタを売ってしまおうと思っていたんだが、全部でいくらになった?」


戻ってきた猫は猫語が直ってしまったようだ。


面白かっただけにちょっと残念だな。


「買取なら金貨2枚ってとこかな。質入れなら4枚まで貸せるけど本当にいいの?」


「そんなものか・・・。」


思ったよりは安かった。


利益として金貨1.5枚と考えれば三倍儲かっているんだし申し分ない。


だが猫が言うように普通に売買すれば金貨4枚近くの利益を出せるという事なんだろう。


つまり半値だ。


これを高いと考えるか安いと考えるかは難しい所だ。


質屋をやっているぐらいだし鑑定スキルは持っているだろう。


その辺も確認しておくかな。


「どうするかな?」


「せっかくだから内訳も聞いていいか?」


「もちろんニャ!むしろそれを聞かないと盗品を疑う所だったニャ。」


ま、そりゃそうだ。


俺もそれを疑うよ。


「まずこの外套ニャけど水除の魔法が付与されいて中々の品ニャ、これで銀貨50枚ニャ。次にこの壺は食べ物を腐りにくくするから欲しい人は多いニャ、でも珍しくないから銀貨20枚ニャ。それから身代わりの指輪はギルドでも売っているから銀貨50枚ニャ。この外さずの弓掛は壊れているから銀貨5枚なら買うニャ。ポーションも品は良いけど中身が少ないから銀貨5枚ニャ。』


なるほど、予想通りの値段もあればそれよりも安い奴もあるな。


最後の二つは安い事をわかって買っているからむしろそれが分かっただけでも収穫だ。


壊れ物は安い。


その辺もよく見て買った方がよさそうだな。


「鉄の剣は火属性が付与されているニャね。冒険者が好んで買うからいっぱい持ってきてくれたお礼に銀貨50枚、収納魔法付の革袋も同様に銀貨20枚なら買うニャ。」


「なるほど、よくわかった。」


「他にあればせっかくだし色を付けてあげるけどニャ、どうするニャ?」


「ふむ、じゃあこれはどうだ?」


ついでだしこの間見つけた力の指輪もみてもらうか。


「これは力の指輪ニャね。これだけの品をよくまぁ持っているニャ、元はどこかで商売でもしていたのかニャ?」


「まぁそんな所だと思ってくれ。」


「若いのにこれだけの品を扱っているニャんて、これからもぜひご贔屓にしてほしいニャね。」


「今日はたまたまもう一軒が休みだったから来ただけだ。次は向こうにもっていってみるさ。」


そう言った次の瞬間、猫が巨大な目をさらに見開いて髭を逆立てた。


「ダメニャ!ホルトの所は絶対に行っちゃダメニャ!ぼったくられるに決まってるニャ!」


「おいおい同業者に随分な言い方だな。」


「本当の事なのニャ!悪い事は言わないから向こうにもっていくのはやめとけニャ!」


「まぁ忠告として聞いておくよ。」


「お客さんが店を選ぶのは自由だけどニャ、あそこだけはお勧めしないニャ。」


声を荒げてしまった事が恥ずかしかったのか、すぐに猫は元の感じに戻った。


毛が逆立つとかマジで猫と同じだな。


「それで、いくらなんだ?」


「そうだったニャ。使われていなかったのか状態は悪くないニャ、それに力の指輪は冒険者が喉から手が出るほど欲しがる一品ニャ。これ全部売ってくれるなら金貨1枚で買うニャ。特別ニャ。」


ふむ、金貨1枚か。


自分で売った時と同じ値段、確かに特別っぽいな。


これ全部で金貨3枚。


元手を引いても金貨2.5枚は残る。


自分で売ればその倍は固いが売れるまでにどれだけ時間がかかるかわからない。


相場スキルで売れた日付はわかるが、どれも平均10日以上かかっている。


固定費で1日銀貨1枚かかっていることを考えると、全部売れるのに50日かかるとして銀貨50枚利益が無くなる。


それでも十分魅力的な金額ではあるが・・・。


その間店を出し続ければ仕入れはできない。


折角掘り出し物を見つけられるのにそれをミスミス逃すのは惜しいな。


「わかった、金貨2枚で買い取ってくれ。力の指輪は考える。」


「ニャニャ、結構頑張ったつもりニャがどうしてもだめかニャ?」


「知り合いに冒険者がいてね、奴が一山当てるのを期待するさ。」


「ニャニャそれなら仕方ないニャ。じゃあ全部で金貨2枚ニャね、ちょっと待ってるニャ。」


終始猫語が続いているな。


まぁ面白いからいいけど。


猫だし。


「お待たせしました、金貨2枚です。」


あ、戻った。


「確かに。」


「また珍しい物があったら持ってきてください。でも、ホルトのお店だけはだめですよ。私見てますから。」


「そんな事してると客が逃げるぞ。」


「うちを専属にしてくれたら次はもうすこし色を付けますよ?」


「悪いが今はそのつもりはない。店を持ったら自分で売るさ。」


金貨をポケットにしまい足早に店を出る。


「自分のお店?それはちょっと無理だと思うけど・・・。」


そう猫が言ったのが気になったが聞き返すわけにもいかず俺は扉を閉めた。


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