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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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749.転売屋は倉庫を片付ける

「あー、もう!なんでこんなに物だらけなのよ!」


「何でだろうなぁ。」


「何ででしょう。」


「ミラもシロウを庇わずにちゃんと言ってやりなさいよ、無計画に買い付け過ぎだって。」


「とはいえこれらがすべて現金に変わるのは間違いありません。少々予定が先なだけです。」


いつもならエリザの怒鳴り声が反響するはずの倉庫だが、今日はその反響も弱く感じる。


どこを見回しても物・物・物。


倉庫の中はこれでもかという荷物で溢れていた。


エリザが怒るのはもっともだがミラの言うようにこれらはちゃんとお金に変わるんだ。


だから決して無駄なものではない。


とはいえ無計画という部分に関しては素直に認めよう。


横でアネットが苦笑いを浮かべているがお前はこっち側だよな?


な?


このままでは冬に出荷する予定のグリーンスライムの核を安値で売らなければならないということで急ぎ倉庫の様子を見に来た俺達だったが、中は想像以上の状況だった。


店の倉庫は頻繁に見に行くが、北側の倉庫はメルディに任せっぱなしで奥まで足を運んでいなかった。


その結果がこれというわけだ。


いやー、すごいな。


そこかしこに物が置かれていて圧迫感が半端ない。


これでもメルディがいたからこの程度で済んでいるわけで、いなかったら今頃大変なことになっていただろう。


「テーラと貝は致し方ないとしても他の素材が多過ぎよ、いい加減ギルドに放出するなり利用するなりしないと腐るわよ。」


「いや、流石に腐ったりは。」


「あ、カビてます。」


「・・・掃除するか。」


「それがよろしいかと、お手伝いいたしますので。」


アネットが横の箱からはみ出した毛皮にカビを見つけてしまった。


埃っぽい上に荷物が多すぎて風通しが悪くなったせいだろう。


ドヤ顔するエリザが癪に障ったので思いっきり尻を揉んで抗議しておいた。


睨まれたが気にしない。


やれやれ、やるしかないかぁ。


こうして、秋の大運動会ならぬ大掃除大会の開催が急遽決定した。


まず最初にやるのは荷物の搬出。


貝を除く全ての荷物を通用口を使って畑に移動、秋晴れを利用して天日干しすることになった。


「うわ、きったな~い。」


「おい、こっちくるなって!」


「やめろ触るなって!」


ガキ共が汚れた手をこすりつけて遊んでいるが、注意する余裕がないぐらいに荷物が多い。


そのほとんどが魔物の素材だが、どこに埋もれていたのかという感じで武具や防具が運び出されている。


あんなのいつ買取ったんだ?


『フィッシュイーター。魚系の魔物の急所に刺せば致命傷を与える短剣。錆びている。最近の平均取引価格は銀貨23枚。最安値銀貨10枚最高値銀貨53枚最終取引日は90日前と記録されています。』


『柔鋼の脛当て。通常の鋼よりも柔らかい特別な物を使用している為脛にしっかりフィットし動きやすい。錆びている。最近の平均取引価格は銀貨19枚。最安値銀貨8枚最高値銀貨26マ最終取引日は34日前と記録されています。』


湿気のせいかどれもさびてしまっているが、まぁ使えなくはない。


前の研師とも仲良くなったので今度屋敷に来てもらった時に一緒に綺麗にしてもらうとしよう。


「とりあえず出せるやつは全部出たな。」


「確認した間では殆どが売買に差し支えの無い状況ですが、いくつか廃棄しなければならないものもありますね。」


「もったいないわねぇ。」


「仕方ないだろ。」


「目録で管理しているとはいえ、こう数が多くなると管理もおろそかになってしまったようです、申し訳ありませんでした。」


ミラが深々と頭を下げる。


別にミラが謝るような事じゃないし、加えていうならば出し入れしていたメルディにも責任はない。


管理不足の責任はすべて俺にある。


まったく、こんなになるまで放っておいて損失まで出すなんて。


忙しかったとはいえそれは言い訳にならないよなぁ。


「行商の荷も受け取る場所ですし、そろそろ倉庫番をつけるべきじゃないですか?」


「え!そうなったら私の仕事は・・・。」


「もちろんやってもらうぞ。とはいえ、店番しながらだとなかなか大変だろうから、専任者をつけるべきなんじゃないかってアネットは言いたいんだろう。そうだよな?」


「はい、紛らわしくてごめんなさい。」


「よかった。」


「でもこの惨状を見る限りは必要よねぇ。力持ちで管理が出来て、持ち逃げしない人。」


となるとやっぱり安心なのは奴隷なわけで。


でもなぁそれはそれで面倒なんだよなぁ。


初期投資もかかるし、今後ずっとこの荷物の量かと言われればそうじゃない。


今はこの惨状だがもう少し気を付けたら多少はましになるはずだ、多分。


「それに関してはもう少し考えるとしよう。さて、こっちは任せた俺は掃除に行ってくる。」


「逃げたわね。」


「何を言うか、向こうの掃除こそ一番大事だろうが。エリザは来るなよ、絶対に来るなよ。」


「安心して、呼ばれてもいかないから。」


「掃除機を使うんですよね、私は行きます!」


「それじゃあ残りはこっちの仕分けを宜しく頼む。」


これだけ広げたんだから改めて箱詰めして管理しやすくするべきだ。


そして俺達はそれをしまう場所を綺麗にする。


ガランとした大型倉庫。


ジムの場所はまだ綺麗だが、それでも空気は良くなかっただろう。


二人には申し訳ない事をしたなぁ。


「それじゃあ一気にかたづけるか。」


「お水の準備オッケーです。」


「よし、各自掃除機を持て!」


「「「はい!」」」


バキュームシェルに棒を付けただけの簡単掃除機。


それを手にしたアネットとルティエ、それとモニカ。


なんでこの二人がというツッコミはしないでくれ。


俺にもわからん。


紐で入り口の蓋を引っ張ってやると勢いよくゴミを吸い込み始める。


それを棒で操りながらそこらじゅうのゴミを吸い込んでは取り換え、吸い込んでは取り換え。


取り替えたやつは水につけておけば自然とゴミを吐き出してくれるから便利なもんだ。


大きな倉庫とはいえ、四人でやればそこまで時間はかからず二時間程でおおよそのゴミを片付けることが出来た。


使った貝は全部で27個。


まさかの実戦投入だったが、おおよその目安がこれで出来ただろう。


これも報告書にまとめておけば後はイザベラが上手くやってくれるはずだ。


「こんなに綺麗だったんですねぇ。」


「それを言うな。」


「これだけ広い場所があると、雨の日でも子供たちが遊べるんですが・・・。」


「あぁ、確かに雨の日は不便だな。」


「今後は通いの子供も増えて来るでしょうし、雨の日に何をさせるかも先生方と一緒に考えようと思います。」


体育館的な物が今後は必要になってくるだろう。


比較的天気のいい地域とはいえ雨が降らないわけじゃないしな。


「それならシロウさんがここを貸してあげたら?」


「生憎とここには荷物が戻ってくるんでね。とはいえ、そういう場所があってもいいとは思う。」


「隣の倉庫を買うとか?」


「もし売りに出ているなら考えもするがこの街じゃ倉庫は貴重だ。というか住民全員分の住居すら無いんだもう少し広ければ色々と便利なんだが。」


「土地はあるのにね。」


「広げるにしても金がかかる、そう簡単にはいかないんだろ。」


畑は簡単に作れるが、それも魔物から襲撃されるのを前提としているからだ。


魔物が来てつぶされても文句は言わない。


失われるのは食べ物だけで人の命じゃないからまた作り直せば済む。


だが命は違う。


怪我ならある程度何とかなるが失われた命は戻ってこない。


住民の命を守るとなればそれ相応の城壁や下水などの排水機構を確保しなければならない。


専門家でない俺ですらすぐに問題を思いつくんだ、はい作りましたって訳にはいかないんだろう。


「ふーん。じゃあ仕方ないですね。」


「ルティエがしこたま稼いで税金を納めたら可能性が上がるかもな。」


「え!無理無理、無理ですよ!これ以上仕事増やしたら死んじゃいます!」


「大丈夫だよルティエちゃん、無理って思ってからがスタートだから。お薬を飲めばまだいけるいける。」


「アネット、そういう危険な思考はやめた方がいいぞ。そもそもお前は働きすぎなんだ。」


「気を付けまーす。」


「モニカも学校が忙しいのはわかるがたまには休めよ。目の下にクマが出来てるぞ。」


「あ、恥ずかしい・・・。」


両手で顔を覆って俯いてしまった。


なにこの女の子を泣かしたみたいな構図、そこの二人そんな目で俺を見るんじゃない。


「やーい、シロウさんが泣かした~。」


「泣かしてねぇし、って子供か!」


「あはは、シロウさんの子供の時ってどんな感じだったんだろう。気になるなぁ。」


「あ、それは私も思います。」


「これだけ色々考えられるんだから、すっごい勉強してたんじゃない?」


「生憎と勤勉ではなかったな。」


「そうなんですか?」


「俺が若いころは遊んでばかりだった。」


「今でも十分若いじゃないですか。」


いやまぁ見た目はな。


心地よい疲れからか若い三人はキャイキャイと女子トークに花を咲かせている。


さて、綺麗になったんだし後は元に戻すだけ。


早くしないと日暮れになってしまう。


急いで畑に戻って・・・。


綺麗に片付いた倉庫。


その隅の方に何やら光るものを見つけた。


掃除しきれなかったんだろうか。


光に吸い寄せられるようにそいつに近づき、おもむろに手を伸ばす。


『彷徨える星。何もなかった場所にある日突然現れる不思議な宝石。密封された場所にも出現するためゴーストアイとも呼ばれる。鍵付きの箱にしまっておいてもいずれは別の場所に消えてしまう為注意が必要。最近の平均取引価格は金貨2枚。最安値銀貨89枚最高値金貨5枚。最終取引日は520日前と記録されています。』


掃除しなかったら気付かなかったであろう不思議な宝石。


これはいったいどこから来たのか。


深い緑色をしたその宝石を手に、俺は首をかしげる事しかできなかった。

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