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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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401.転売屋はダンジョンをめぐる

確かにダンジョンに入ってもいいと言った。


だがそれはデートのはずで、こんな事になるとは思っていなかったんだが。


どういう事だろうか。


「あったぞ姐さん!」


「じゃあ早速開錠よろしく。」


「私は周りを警戒しましょう、シロウ様は念の為エリザ様の側へ。」


「シロウこっちよ。」


ダンジョン中層。


広い広いダンジョンの中でも特に魔物が多く危険が多い地域を何故か進んでいた。


四人で。


「え~っと、これがこうなって、ついでにこっちに移動して・・・っと開いたぞ。」


「中身は?」


「指輪だな。兄さん頼む。」


「・・・おう。」


フールが嬉しそうに手渡してくる指輪を受け取ると、すぐに鑑定スキルが発動した。


『敏捷の指輪。装備すると通常以上に素早く動けるようになる。最近の平均取引価格は銀貨90枚。最安値銀貨65枚、最高値金貨1枚と銀貨30枚。最終取引日は38日前と記録されています。』


ふむ、敏捷の指輪か。


身のこなしを必要とする職業には重宝されるだろう。


「どう?」


「敏捷の指輪、まぁまぁの当たりだな。銀貨60枚って所か。」


「まぁまぁね。」


「四人で割っても銀貨15枚。十分だろ。」


「ここのお宝からすればまだまだよ。このメンバーなんだからもっと凄いの見つけなくっちゃ!」


「エリザ様の言う通りです。もっと奥へ参りましょう、時間がありません。」


「俺は別に構わないが、兄さんは良いのか?」


良いのかと俺に聞かれてもなぁ。


こんな所に放置されたんじゃ、俺は速攻で死ぬだろう。


何処にでもついていくしかない。


「好きにしてくれ。」


「なんだよ、さっきから元気がないな。」


「そりゃ魔物が多い場所だもの、緊張もするわよ。フールも気を抜いて罠を見落としたりしないでよね、シロウがいるんだから。」


「わかってるって。」


「ご心配なく、仮に何があってもシロウ様の身は我々が守ります。」


「アニエスさんがいれば安心だけど・・・。あ、向こうにも何かあるわよ、行ってみましょ。」


再びエリザが何かを発見し、フールと共に通路の奥に行ってしまった。


はぁ、何故こんなことになっているんだろうか。


「大丈夫ですか?」


「あぁ、問題ない。恐怖よりも後悔の方が勝っている感じだ。」


「来るんじゃなかったと?」


「いや、もう少しマシな提案をすれば良かったと思ってるよ。二人きりならそんなに無茶はしないと思っていたんだが、まさか四人でダンジョンに行くことになるとはなぁ。」


大きなため息をつく俺を見てアニエスさんが横で笑ったような気がした。


笑いたきゃ笑え。


「エリザ様はかねてよりシロウ様とダンジョンに潜りたいと仰っておりました。ですが、本人が望んでもいないのに連れていくわけにはいかないと我慢しておられたのです。それが叶うとなれば喜ぶのも致し方ないでしょう。我々を誘ったのも万全を期すため、一人では守り切れない場合でも私がいれば安心ですし罠もフール様がいれば問題なく解除できます。今ここにいる三人は間違いなくこの街で最上位の冒険者です、どうぞご安心を。」


「わかっちゃいるんだがなぁ。まさかダンジョン観光になるとは思わなかったんだよ。」


「はしゃいでいるエリザ様を見るのもなかなかのものですが、出来ればうちのマリアンナ様も構って頂けると助かります。」


「いや、構うって年でもないだろうが。」


「最近は仕事も落ち着いておりますから少々手持無沙汰のようです。何か新しい仕事などはありませんでしょうか。」


「ダンジョン内でも主人の心配か?」


「私はマリアンナ様に生涯を捧げると決めておりますので当然です。」


「ちょっと、何ゆっくりしてるのよ。置いてくわよ!」


「わかったって、今行く。」


まったく、はしゃぐのは構わないが守るべき人間を置いていくのはどうなんだ?


頼むぜ、凄腕冒険者さんよ。


その後もいくつか宝箱を発見してからやっと休憩になった。


途中何度も魔物の襲撃に遭ったが、ビビったのは最初だけで後半は切り刻まれていく魔物を憐みの目で見る余裕すらあった。


俺がいるからか速攻で殲滅しにかかっているので容赦がない。


発見即殲滅(サーチ&デストロイ)とはまさにこのことだろう。


もちろん俺がいるので剥ぎ取りにも余念がない。


収納かばんがあると本当に便利だなぁ。


「ふぅ、疲れた。」


「ご苦労さん。」


「シロウがいると良い物が見つかる気がするわ。」


「そりゃ、ビギナーズラックってやつだろう。」


「おかげで懐がホカホカだぜ。」


「そりゃよかったよ。ほら、水と干し肉だ。」


「この感じですと地上は昼過ぎですね、そろそろ戻りますか?」


「ん~、できればこの奥に行きたいんだけど。」


「おいおい姐さん、この奥っていえばゴーレムの墓場だぜ?魔術師もいないのにどうするんだよ。」


「殴ればいいじゃない。」


「いや殴るって・・・。」


これだから脳筋は、とフールは思っただろう。


奇遇だな俺も同感だ。


ゴーレムというのは石とか金属でできた魔物で、体内の魔石を動力に動いているらしい。


内部から取れる素材は魔導具に使えるので需要は高いが、それを守る外側がかなり硬いので、普通は物理ではなく魔法で撃退するそうだ。


っていうかそもそも物理という選択肢すら出てこないはずなんだが、どうやら同行している脳筋二人には関係ないようだな。


「殴ってどうにかなるなら行けばいいじゃないか。あいつらの素材は金になる。が、何しに行くんだ?」


「ゴーレムは宝箱を守ってるのよ。フールとシロウが居れば中身もすぐ確認できると思ったの。」


「不要なものを持ち帰らない、なるほど理に適っています。」


「いらないならその分素材を持ち帰れるしね。」


「好きにしてくれ。俺は後ろでのんびり待ってるだけだ。」


これで奥に行くことは確定した。


ここに来るまでにいろいろな場所を通ったが、最後はゴーレムの守る神殿?のような場所らしい。


ここまで来れる冒険者であっても中々足を踏み入れない危険な場所。


そこをおまけみたいに言う時点で、やはりエリザは普通と違うなぁ。


各自休憩を済ませた後、再び奥へと足を進める。


迷っているのではないかと錯覚するほどの曲がりくねった道を延々と進んだ、そのときだった。


突然視界が開け、目の前に巨大な神殿が現れた。


「おぉ!」


「ふふ、その声を聞いただけでここに連れてきた甲斐があったわ。」


「エリザ様はここを見せたかったのですね。」


「シロウって素材とかは詳しいけどダンジョンの中は知らないでしょ?だから取って置きの場所に連れて行きたかったのよ。」


古代ローマを髣髴とさせる巨大な石の神殿。


大理石だろうか、光が差し込まない地下のはずなのにそいつは光り輝いている。


「これは凄い。」


「来て良かった?」


「あぁ、コレだけのものが見られるとは思わなかった。」


「ふふ~ん、中はもっと凄いんだから。」


「でも中に入るにはあいつらをどうにかしなきゃならないんだよなぁ。」


「問題ありません、関節を狙って破壊すればすぐに動かなくなります。」


「そそ、簡単よ。」


「簡単じゃねぇ。」


「気持ちはわかるが諦めろ、この二人に俺達の常識は通用しない。」


信じられないという顔をするフールの方をぽんぽんと叩いてやる。


これ以上は何も言うな。


世の中には俺達の常識の外で生きている連中もいるんだから。


武器を手にエリザとアニエスさんが神殿へと進んでいく。


俺とフールは少し離れたところで留守番だ。


時折エリザの怒号やアニエスさんの気合の入った声が聞こえてくるも、姿は見えない。


ぐだぐだと二人で雑談を交わすこと30分ほど。


静かになった神殿の入り口にさっぱりとした顔をした二人の姿が現れた。


「終わったか?」


「まぁね、ちょっと苦戦したけど何とかなったわ。」


「何とかなるのかよ。」


「最後のエリザ様の一撃、アレをぜひ見ていただきたかった。」


「そんなこと、アニエスさんのに比べたらまだまだよ。」


「謙遜はいいから奥に行こうぜ、剥ぎ取りも待ってるだろ?」


「そうだった!でもまずはお宝が先よ。」


「罠があるかもしれない、先に行かせてもらうぜ。」


次は俺の出番だと意気揚々とフールがダンジョンの奥へ向かう。


その後ろを少し離れて追いかけたが、結局は何も無かったようだ。


心なしかフールの背中がしぼんで見える。


そんなに気にするなって、むしろ本番はここからだぞ。


「宝箱は三つあるようですね。」


「どれから開ける?」


「罠がないなら三人で一斉に開けたらどうだ?」


「あ、それ面白そう!一番の当たりを見つけた人が今日の奢りね。」


「え、当たりを見つけて奢るのかよ。」


「だって一番お金を持ってるってことでしょ?当然じゃない。」


なるほど確かに一理ある。


相談の結果、アニエスさんが中央、右側がエリザ左がフールとなった。


箱の大きさはどれも一緒。


さぁ、何が入っているのかなっと。


「いくわよ、せー・・・。」


「「「の!」」」


三人同時に宝箱をあけ、中身を持ち上げる。


「お、宝石だ!」


「こっちは斧ね。」


「これは・・・笛でしょうか。」


見つけたものを聞く限りではフールが一番高そうな感じだ。


だがここは異世界。


宝石だけが高いとは限らない。


「そんじゃま順に鑑定していくか。まずはフールからな。」


「一番になりたいのに一番になりたくない、何だこの気持ち。」


フールの手に載せられていたのは鶉の卵ほどの黄色い宝石。


いかにもという感じのブリリアントカットに加工されている事にはつっこんではんいけないんだろう。


『ファイアオパール。情熱的なオレンジ色をしたそれは、持ち主と周りの気持ちを昂ぶらせる。魅了の効果が付与されている。最近の平均取引価格は金貨8枚、最安値金貨3枚、最高値金貨11枚。最終取引日は611日前と記録されています。』


ほぉ、珍しい宝石だな。


トパーズかと思ったらオパールだった。


こんな色の奴もあるのか。


値段が安いのは効果の問題かもしれないな。


所かまわず周りを昂ぶらせるってのはあまりよろしくないが、魅了の効果は珍しい。


中々の一品だといえるだろう。


「値段は後で発表する。次はエリザのだ。」


「見たところミスリル製の斧だと思うんだけど・・・。重いわよ。」


「見ただけで重いってわかるから下においてくれ。」


これを手渡しされたら手首が折れる。


『ミスリルの魔斧。ミスリルで作られているため魔力伝導率が高く、周囲に掘られた紋章は魔力の拡散を防ぐ効果がある。切れ味の効果が付与されている。最近の平均取引価格は金貨12枚、最安値金貨8枚、最高値金貨25枚。最終取引日は377日前と記録されています。』


床に置かれた斧はミスリル製で間違いないようだが、魔斧と呼ばれる種類らしい。


これは初めて見るな。


「ミスリル製の魔斧だ。鋭さの効果もついてるからなかなかの逸品だな。」


「魔斧かぁ、ちょっと扱いづらいかなぁ。」


「普通と何が違うんだ?」


「魔力を吸収して力に変換してくれるんだけど、常に魔力を吸われるから疲れるのよ。魔力がたくさんある人はいいけど、私には無理ね。」


「なるほどなぁ。」


魔力次第で化けるわけか。


この辺は使用者の好みに分かれるだろうから、価値はあっても誰にでも売れるって商品じゃなさそうだな。


「では最後は私ですね。」


「見た感じ普通のオカリナだな。」


「そうですね。」


アニエスさんの手にすっぽりと収まる小型のオカリナ。


深い緑色をしておりまがまがしい雰囲気は感じない。


掌に乗せられても重量はほぼ感じなかった。


『黄泉帰りの笛。死者を呼び出すことのできる禁断の魔法道具。ただし相手が呼び出しに応じるかどうかは本人次第である。使用すると壊れる。最近の平均取引価格は金貨29枚。最安値金貨29枚、最高値金貨29枚。最終取引日は3年と539日前と記録されています。』


「は?」


「どうされました?」


「あ、いや、見たこともない魔法道具だったんでついな。」


危なく取引日が古いからと言いそうになった。


相場が一つしか表示されないということは過去に一度しか取引されていない、もしくは値段固定で取引されているということになる。


使用すると壊れるから再利用は不可。


それでも死者を呼び出すってのはかなりすごいことだ。


リスクは無いんだろうか。


「ただの笛じゃないの?」


「死者を呼び出せるらしい。もちろん向こうがそれを受け入れるかはわからないらしいし、使用すると壊れるそうだ。」


「ですが死者が求めれば呼び出せると?」


「らしい。」


「それは非常に危険ですね。」


「俺もそう思う。これに関してはしっかり調べたほうがいいかもしれないな。」


「面倒なものを見つけてしまい申し訳ありません。」


「いやいや、アニエスさんのせいじゃないんだから気にしないでくれ。さて、誰が一番高いかだが・・・。」


三人の顔を順番に見ていく。


「優勝は、アニエスさんだな。フールが金貨5枚、エリザが6枚、アニエスさんが15枚って所だ。買取金は三等分でいいよな?」


「シロウ様の分が含まれておりませんが?」


「俺はおまけだって。」


「いけません。鑑定するのも立派な仕事、四等分するべきです。」


「その通りよ。」


「これに関しては俺も関わっていないわけだし、二等分でもいいんじゃないか?」


「ダメよ。」「ダメです。」


提案を速攻で否定される哀れなフール。


結局二人が意見を曲げず、四等分することになった。


素材の収益も入れるとなかなかの利益になる。


一日でこれだけ稼げるとは、冒険者ってすごいなぁ。


そんな事を思っていると、


「普通はこんなに稼げませんって、この二人がおかしいんです。」


「だよな。」


「俺なんて良くて銀貨20枚が関の山、一日で金貨6枚とかそりゃ金銭感覚が狂うわけだ。」


だよな、普通は違うよな?


こうして無事にエリザとのデートという名のダンジョン観光は終わりを迎えたわけだが、定期的に誘われるようになったのは言うまでもない。

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