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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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1599.転売屋は祭りに花を添える

春の祭りがやってきた。


聞いていたよりも街全体の盛り上がりは大きく、恋の祭というだけあって主に女性が楽しんでいる印象を受ける。


じゃあ男はどうしたのかというと、陽の雰囲気に路地裏を歩いて移動する陰なる者もいれば、彼女?と思われる相手に引きずられるように大通りを歩いていたりする。


一応普通のカップルも楽しんでいるようだが、やはり主役は恋する乙女。


彼女たちの相手を見つけるぞという熱量が半端ない。


男にはわからないこの勢いに流石の俺も若干引き気味ではあるのだが、金儲けをするには絶好のタイミングなのでこの機を逃すことなくしっかり商売させてもらうとしよう。


「さぁ、人気ブローチ職人シエルの新作ブローチだ。今回は恋を成就させるハートストーンを使った新作、さらに数量限定でバーニングハートを使った特別品も用意してるぞ。抽選券は化粧品を銀貨2枚以上買うと一枚配布、綺麗になって意中の男を射止めてみないか?」


春の祭りといえばブローチ。


特に人気職人シエルの新作ともなれば誰もが喉から手が出るほど欲しい逸品だ。


縁あって彼女と知り合いになったことで新作を回してもらえるようになったのだが、彼女との関係もあるのでいきなり転売価格で利益を出すのは難しい。


ということで考えついたのが彼女も採用している抽選制。


ただし誰でも公平に抽選券を貰えるやり方ではなく、うちの化粧品を規定以上の金額買って初めてエントリーできるという特殊なパターンを採用した。


こうすることでブローチで利益をそこまで出せなくても、化粧品の販売と転売でがっつり利益を出すことができる。


この日のために残しておいた月女神の化粧水なんかは今や定価の10倍以上の価格で売買されている。


それが転売価格よりも安く手に入るとなったらそれはもう大騒ぎだ。


「完売でーす!化粧品を含めた抽選開始は昼の鐘がなってからなので、番号を張り出しますから用紙を無くさないでくださいね。」


怒涛の客をさばき終え、バーバラの声に集まっていた客が蜘蛛の子を散らすように去っていく。


やれやれ、これだけでも随分と儲かったがまだまだこれで終わりじゃない。


「それじゃあ後は任せた、俺はコンテストの様子を見てくる。」


「いってらっしゃいませ!」


「こちらはお任せくだされ。」


ジンとバーバラがいれば抽選後も問題なく対処できるだろう。


そんなわけで店を出た俺はそのまま大通りを北上しトゥリパコンテストの会場へ。


貴族街につながる大通りを貸し切って行われているコンテストには、急な告知だったにもかかわらず大勢の参加者が自慢の花を前に得意げな顔をして立っている。


あまりの多さに収拾がつかなくなりそうなので二部制に変更して現在予選会が行われている。


優勝者には大通りを彩っているフラワークロコディオの花傘が送られるとあってそれはもうすごい人気なんだとか。


更には優勝すれば王家が自分の育てたトゥリパを買い上げてくれるのでそっち目当ての参加者も多くいる。


「おー、盛り上がってるなぁ。」


「これはシロウ様。見ての通り白熱した展示が繰り広げられていますよ。」


参加者の花に目移りしていると前からムートンさんが満面の笑みを浮かべながらこっちにやってきた。


お祭り好きの住民代表という感じでこの大盛り上がりに感無量という感じすらする。


「どう白熱しているかはさっぱりわからないがどれも見事なもんだ。」


「どれも渾身の力作という感じで王家に献上されるにふさわしい色をしています。ひとまず昼前までに半数に絞り、お昼を過ぎてから王家の皆様を呼んで実際に投票していただくことになっています。リング様も来られるそうですよ。」


「そういや最近姿を見てなかったが、元気そうで何よりだ。」


「なんでも奥様は二人目をご懐妊中だとか。」


「やるなぁ。」


子だくさんな俺が言うのもなんだが早くも二人目とはかなり頑張ったんだろう。


これで一族は安泰、よかったよかった。


「ぜひ昼からもお越しください。この後は南の会場へ?」


「あぁ、なんでもすごいのが持ち込まれたって話だからちょっと見てくる。」


「北はトゥリパ、南はメタルシード。どれも春を祝うにふさわしい植物の祭典という感じですね。」


「鉱石を花と呼んでいいのならな。それじゃあまた後で。」


コンテストはムートンさんがしっかりと管理、もとい楽しんでくれているようなので丸投げしても問題ないだろう。


協賛するお店なんかも沢山あるようで商品とかそういうのには困ってないみたいだし、ギルド職員が大勢いるので安心して任せる事が出来る。


球根販売では儲けを出せてもコンテストそのものではさっぱり金儲けできないのでやる意味がないっていう理由もあるけれど、万全の状態を部外者が邪魔するのも変な話だ。


そんなわけで今度は大通りを南下して城壁付近に向かうと、同じく大通りに作られた特設ステージには大勢の冒険者が群がっていた。


「アニエスお待たせ。なんかすごいのが出たんだって?オリハルコンか?」


「残念ながらオリハルコンは出ていませんがミスリル鉱石が出たようです。」


「オリハルコンに次ぐレア鉱石、それがあの種から生えたとなるとなんとも夢のある話じゃないか。」


「他にも宝石の原石や魔鉱石なども出ているようで中々の量が持ち込まれています。ひとまず昼過ぎまで持ち込みを受け入れてそれから審査に入る予定です。こちらの管理は我々が行いますのでどうぞご安心を。」


こちらで行われていたのはメタルシードを使った別のコンテスト。


その名の通り鉱石が実る種を使いどの種から一番レアな鉱石が出るのかを競い合っている。


花と違ってこっちは完全に博打なので何が出るかは運次第って所がまさに冒険者向きのコンテストと言えるだろう。


聖銀ことミスリルともなればそれに勝るのはオリハルコンぐらいなもの、もちろんそれが出る可能性も否定できないがほぼほぼ優勝は確定じゃないだろうか。


後は何人それが出てくるか、今の所一人しか実っていないようだけれど可能性は誰にでもある。


複数人になった場合は賞金山分けなので本人にとっては長い長い一日になるに違いない。


「これは中々の買取金額になりそうだなぁ、金は足りるか?」


「不足した場合は冒険者ギルドが立て替えておきますから大丈夫です。」


「そりゃありがたい。が、もしオリハルコンが出た場合は?」


「大至急ここまで戻ってきてください。じゃないと職人同士の奪い合いになって収拾がつかなくなります。」


「善処しよう。」


オリハルコンを叩いて武器を作れば名匠と呼ばれることになる。


もちろん叩いて形にするだけでもかなりの技量を必要とするらしくド素人では鉱石を叩いて変形させる事すらできないらしい。


鉱石の特性を見極めてそれにふさわしい温度に炉を調整し更には適切な力で叩くことができて初めてスタート地点に立つことができる。


そこからゴールに至るには一体どれだけの修練が必要なのか、だからこそ名匠と呼ばれるんだろう。


そんなこんなでこの日の為に仕込んだネタはどれも素晴らしい利益を生み出し、この日だけでかなりの金額を稼ぐことができている。


これも夏の終わりにダンジョン街へ戻る為。


だが、金貨500枚ともなるとまだまだ稼がなければ追い付かないわけで、それを叶えるべく最後の仕込みをしてあるのだが・・・。


気付けばもう昼を過ぎ心なしか空に雲が出てきている。


流石に雨は降らないだろうけどこのままだとちょっと時間的に間に合わない、その時だ。


「敵襲!あれはワイバーン!じゃ、無かったか。」


突然空を指さして警備の兵士が大きな声を出したものの、すぐに訂正をして恥ずかしそうに手を降ろした。


別に彼は間違ったわけじゃない。


突然城壁の上に現れた巨大な影にいち早く反応したという意味では非常に優秀だし、更にはビビッて動けなくなるようなヘタレでもない。


が、彼が間違えた巨大な影はすぐさま小さくなりそのまま俺達のすぐそばにドスンという音とともに着地した。


「ただいまトト!」


「お帰りバーン、頼んでいたものは手に入ったか?」


「一杯見つけて来たよ!今外に置いているから一緒に取りに行こう!」


「よく頑張ったな。あれを全部売り終わったら一緒に美味い肉を食いに行こう。」


「わかった!」


空から降りてきた我が息子が屈託ない笑顔をこちらに向ける。


見た目には随分と大きくなり男子高校生ぐらいの背丈になっているものの、中身はまだまだ子供と同じ。


それでもこの国で唯一の高速輸送業者として折衝から交渉まで幅広く行えるだけの話術と度胸は持ち合わせている。


こういう表情を見せるのも親である俺の前だけなのかもしれない。


そんな自慢の息子に頼んでいたのは春の花祭りを盛り上げるためのとっておきの品。


俺が向こうに帰るために必要なダメ押しの逸品が城壁外の木箱に詰め込まれていた。


「これは凄い、こんな綺麗な花を見たのは初めてです。」


「南方のさらに南に浮かぶ島でしか手に入らない特別な花だからな。この色は仮にトゥリパであっても絶対に出せないよなぁ。」


「確かに南方ならではの色使いです。」


『ハイビルクスの花。南方のさらに南の島にのみ生育する特殊な花。赤や黄色、オレンジなどの色鮮やかな花弁は見る物を明るくさせる効果がある。最近の平均取引価格は銀貨2枚、最安値銀貨1枚、最高値銀貨5枚、最終取引日は本日と記録されています。』


元の世界で南の島に旅行に行ったときに見たのと同じ鮮やかな花。


何で南の島ってこういう鮮やかな花が咲くんだろうなぁ。


間違いなく理由はあるんだろうけどコレ!っていう物が思いつかない。


まぁ、今はどうでもいい話だ。


折角バーンが大変な思いをして持ち帰ってくれたんだから、彼のお腹を膨らませる為にもしっかり稼いで飯を食いに行くとしよう。


「さぁ、南方でしか手に入らない特別な花ハイビルクスだよ。これを身に付ければ気分は南方、花の祭りに相応しい鮮やかな花で気分も明るくいこうじゃないか。一つ銀貨2枚、一人二つまでの数量限定だ。さぁ、買った買った!早い者勝ちだぞ!」


これこそが春の祭りを盛り上げるにふさわしいとっておきの品。


南方でしか手に入らないこの日だけの特別な品、そんなうたい文句に大勢の人が集まってきて我先にと銀貨を突き出してくる。


すぐさま冒険者ギルドの職員が動いてくれたおかげですぐに列が形成されあとはひたすらハイビルクスを売り続けるだけ。


気付けばコンテストに行っていたはずのムートンさんまで様子を見に来るぐらいの大盛況となっていた。


春を彩る花祭り。


街の至る所で色鮮やかな花たちがその花弁を広げ白亜の街を染め上げていく。


果たしてどれだけの女性が恋を成就させる事が出来たのか、それは誰にもわからない。


それでも成就させるための手助けは出来たはずだ。


もちろんその対価としてたっぷりと稼がせてもらったけどな。

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