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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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1533.転売屋は寒波に襲われる

13月。


ルフと共に城壁の上で日の出を見た日はさほど寒いとは感じなかったが、それからぐんぐんと気温が低下していき再び厳しい寒さとなってきた。


これが正しい冬の姿だと言われればそこまでなのだが、寒いと人の行動力は低下するし雪が積もれば輸送は混乱する。


現に昨日の朝に到着する荷物があったのだが波が高く船の到着が遅れているとのことで、結局今日の朝いちばんにずれ込んでしまったぐらいだ。


「降り出してきたな。」


「この寒さです、確実に積もるでしょうなぁ。」


「積もるのは仕方ないとしてこの寒さが厄介だ。芯まで冷えてきて風邪ひくぞ、これは。」


「発熱下着を身に着けてもこの寒さ、私は問題ありませんが人間は大変でしょう。」


ハラハラと降る雪を窓越しに見上げるも、その窓の近くがいつも以上に冷気を発している。


こんな時のためにとカイロを量産しておいたのでそれで多少はしのげるだろうけど、根本的に部屋を暖めるような方法が必要になるかもしれない。


一番手っとり早いのはこの間屋台村で使ったような暖房器具。


だがあれは放射熱の当たる場所は暖かくなっても全体の空気を暖めるようなものではないだけに持続性に欠ける。


暖炉のような部屋全体を暖める何かが簡易型でも設置できればいいんだが・・・。


「あぁぁぁ寒い!」


「いらっしゃい、それだけ着込んでまだ寒いか。」


ジンと二人で店の窓から外を眺めている前を真っ黒い何かが通り過ぎ、ドタバタという音と共に店の中に転がり込んできた。


第一声があったかいじゃなく寒いっていうところが外の状況を物語っている。


黒い外套の上には雪が積もっており、彼がそれを脱ぐと同時にパキパキと軽い音がした。


「うわ、凍ってるじゃねぇか。」


「そうなんですよ。雪が解けてそれが凍ってさらにその上から雪が積もる感じで、いつもよりもヤバいですねこの寒さは。」


「13月始まってすぐだってのに、勘弁してほしいぜ全く。」


ジンが外套を預かり外でバサバサと氷と雪を払っている間に彼の買い取り品を査定する。


奥で休憩していたバーバラが彼の為に香茶を淹れてくれたようで、背中越しに彼のほっとしたような声が聞こえてきた。


「この寒い中森に入ってたのか?」


「そうなんですよ。ボスケさんの森にコボレートが増えてきたって話だったんで、仲間と一緒に調査してきたんです。」


「いたのか?」


「痕跡はあったんですけど姿は見えませんでした。一応また調査にはいきますけど、この寒さだと奴らの動きも鈍くなるのでしばらくは問題ないんじゃないですかね。というかほとんどの魔物が出てこないんで商売あがったりですよ。」


「ダンジョンに行けダンジョンに。」


外は寒くてもダンジョン内に季節は関係ない。


稼ぎたい冒険者のほとんどが向こうに行っているんだろうけども、彼のように地上の調査を必要とする場面もあるので全員に行けというわけにもいかないわけで。


ご苦労さんという意味も込めて拾ってきたと思われる薬草や木の実なんかを割り増しで買取ってやり、少し温まったところで再び極寒の外へと送り出した。


「うーさぶさぶ、確かにこの寒さじゃほかの魔物も動きは鈍いだろうなぁ。」


「そうなると買取量は少なくなりそうですな、地上がこの寒さだとぎりぎりまでダンジョンで狩りをする冒険者も増えるでしょうし、そのあと一気に増えるのでは?」


「そういうのが一番めんどくさいんだが、まあ仕方がないか。それよりもこの寒さを何とかしないとマジで足元から冷えてくるぞ。」


ドアを開けるたびに冷気が足元に広がり、それが混ざることなくとどまり続ける。


人が動けば空気が攪拌されて多少マシになるんだろうけどその人が来ないんじゃ足元はずっと冷たいまま。


ブランケットを足にかけてどうこうなるような冷気ではない、完全なる底冷え。


やっぱり小型のヒーターを置いてしのぐしかないのか。


「マスター、いっそのことダンジョンで買い取りをされれば寒くないのでは?」


「それは俺も考えたんだが、いい感じの場所がないんだよなぁ。王都周辺のダンジョンって小さいのが多いだろ?中が広くて大勢の冒険者や素材が集まるようなダンジョンならそれをやる価値はあるんだが、少人数の為だけにそこで買い取りをしても集まる素材が限られる。時期によっては南方に行ったり北方に行ったり買い取る場所を変えるって考え方もあるんだが、俺みたいな仕事は固定の場所で商売してなんぼだからなぁ。在庫管理を考えると中々に難しい。」


「では巡回なさるとか。」


「そこまでしてダンジョンに行かせたいのか。」


「正直に申しまして飽きました。」


「この正直者め。」


戦闘用ホムンクルスのアティナからすればここ最近の忙しさのせいで本来の役目を果たせないのが非常に不満なんだろう。


たまに許可を取って一人で出かけることもあるのだが、このまえの麻薬騒動で屋敷を守るという使命を果たすためにずっと待機してくれていたのでそのうっぷんがかなりたまっているんだろう。


社員の福利厚生を図るのも主人の仕事、この感じだと客はほとんどこないだろうしそれならば自ら動いた方が確実に儲けが出る。


正確には自分で素材を取りに行けばだが。



「マスター、暴れてきていいでしょうか。」


「好きにやってこい、ただしケガするなよ。」


そんなわけで社員の福利厚生と収入、そして寒さから逃れるためにやってきたのは王都周辺でも不人気ナンバーワンのダンジョン。


主に出てくるのはラヴァーゴーレムと呼ばれる生体ゴーレムで、その強靭さと見た目の悪さそして回収できる素材の少なさから戦う価値無しとまで呼ばれる残念なやつだ。


個人的には奴が落とす魔核はそれなりに需要があるのでとある方法を用いて定期的に処理しているのだが、その方法がなければ俺一人ではどうにもできないぐらい強い魔物でもある。


そんな魔物でもアティナからすれば殴ってもすぐ壊れない玩具程度でしかないんだろう、鼻歌を歌いながら巨大なハンマーを手に向かっていく後ろ姿は頼もしいにもほどがある。


ちなみに奥まで行けばフレイムホースという燃える馬がおり、やつから回収できるタテガミや皮はこの寒さを乗り切るのに必要不可欠な素材だといってもいいだろう。


燃えたままの蹄も倒せば火が消えるでカイロとして中々に重宝される素材だ。


「そろそろ奥にいくぞ~!」


「もう少し、あと一匹だけお願いします!」


「それ終わったら絶対だからな、またあの崖上らなきゃならないんだからあまりゆっくりもしてられないぞ。」


因みにフレイムホースの出る岩場の奥には隠された通路があり、その奥には通称青ハーブと呼ばれるマナポーションを作るのに使われる非常に珍しい薬草が群生していたりする。


これまでに何度か確認しているが、ダンジョンの特性上根こそぎ持っていかなければある程度の時間で復活するのは確認済み、あまりにも大量かつ短期間で市場に流すと値崩れを起こして大変なことになってしまうので必要な分以外はすべてビアンカに渡してマナポーションに加工してもらっている。


固定価格での販売とはいえ需要はいくらでもあるので在庫を抱える暇がないほどだ。


冒険者からすれば不人気でも俺達からすれば最高の狩場、まさに金の生る・・・金の生える秘密の場所といえるだろう。


そんなわけでゴーレムを倒した後はフレイムホースもしっかり倒してもらい、俺は黙々と剥ぎ取りを続ける。


中々の大きさなので今回もすべて剥ぎ取る前にダンジョンに吸収されてしまったが、それでもタテガミや蹄などの最低限回収しなければならないものは回収済み。


戦いに満足したアティナに手伝ってもらえれば何とか間に合うと思うんだが、どうしてもタイミングが合わないんだよなぁ。


そんなこともありながらも最後は崖を登り切り、例の場所から青ハーブを回収。


さて後は街に戻るだけではあるのだが、この快適な環境からあの極寒の世界へ戻ると思うと中々勇気がいるなぁ。


「マスターお待ちください。」


「どうした?またフレイムホースか?」


「いえ気配が違います、なんでしょうか。」


「こっちに来ているのか?」


「こちらには気づいておりませんがいくつかまとまってきているようです。」


一匹ぐらいならアティナ一人でどうとでもなるが、複数匹ともなると場合によってはけがをする可能性もある。


戦闘用ホムンクルスなのだから怪我をして当然と思われるかもしれないが、やはり何事もなく戻ってきてほしいじゃないか。


崖の上から身を潜めて様子をうかがっていると、ダンジョンの奥からやってきたのはフレイムホースの集団・・・かと思ったがどうも様子が違う。


大きさは半分程度しかないが、タテガミだけでなく全身が燃えている。


まるで生きたまま焼かれているような感じだが本人たちは全く気にしていないようだ。


「バーニングギャロップ、まさかこんなところにいるとは知りませんでした。」


「燃える馬、っていうか燃えすぎだろ。」


「体の中から燃えていますのであれが当たり前なのでしょう。普段は火山帯の奥にしかいないはずなのですが。」


「ってことはこのダンジョンの奥にそういう場所があるってことか?」


「まだ深層まで行っておりませんのでその可能性は十分にあるかと。」


フレイムホースの倒れた地面を入念に歩き回り、時折こっちの方をじっと見てくる。


バレてないとは思うんだがそれも時間の問題だろう。


近づくだけでやけどしそうなほど激しく燃えている、こんなのに襲われたらあっという間に丸焦げだ。


「どうする?様子を見てどこか行くのを待つか?」


「それは勿体ないでしょう、わざわざ深層まで行かずとも彼らの素材を手に入れられるんですからここで倒さない理由はありません。」


「だよな。」


俺が何と言おうとアティナは戦いを挑むだろうし、わざわざ奥まで行かなくてもという部分にも賛同する。


とはいえ全身燃えているような魔物で使えるような素材はあるのだろうか。


耐火耐熱性能はかなり高そうだが、フレイムカウ以上に燃えているだけになんだかちょっと不安になってくる。


「マスターはここでお待ちください、臆病な性格ですのですべてを倒すのは難しいと思いますがせめて一・二頭ぐらいは何とかしたいところです。」


「別に無理しなくていいんだぞ?」


「バーニングギャロップの心臓は取り出した後もずっと燃え続けるのだとか、もしそれが本当なら何かに使えるかもしれません。」


「心臓が燃える?」


「あの体が燃えているのもすべては消えない心臓のおかげ、とはいえ持ち帰るとなればどうやって持って帰るのか方法についても考えなければなりませんが。」


燃え続ける心臓に体、もしそれが本当なら色々と使い道が出てくるんじゃなかろうか。


問題はどのぐらいの勢いで燃え続けるのか、とにもかくにも見てみなければ話にならない。


「それに関しては後から考えよう、とりあえずやるだけやってみてくれ。」


「かしこまりました。」


崖の上から獲物をにらみつけるさまは肉食獣のよう、果たしてどれだけの数を倒すことができるのか。


そして残った素材は何に使えるのか。


この寒さを乗り切る何かに使えたらいいんだが…そんなことを考えながら、アティナの背中をじっと見つめるのだった。

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