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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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1484.転売屋は作戦を練る

北風が吹きつける街道をアティナと共に二人で歩く。


いつもなら馬車を使って移動するのだが、今日は別の用があるので徒歩。


この街道をまっすぐ行けば港町に到着するのだが残念ながらそこまで行くことは出来なさそうだ。


「アティナ、どんな感じだ?」


「後ろからついてくる気配は二つ、一つは例の売人で間違いなさそうです。」


「となるとどこかで撒く必要がでてくるか。」


徒歩で移動している理由はアティナに周りの気配をしっかりと感じてもらうため。


もちろん馬車でも可能なのだけど、速度が出過ぎると正確性が落ちるとのことでじっくりと相手の動きを確認するためにもこうやって歩いて移動することにした。


もう一つは偶然道が一緒と思われる冒険者。


はてさてどうするか。


「では右の森へ、ちょうどコボレートの群れがいるようですので押し付けてしまいましょう。」


「なるほどその手があったか。」


「時間を稼げば目的地はすぐそこです、行きますよ。」


「了解した。」


後ろを振り返ると怪しまれるのでそのまま静かに森の中へ入っていく。


アティナ曰く慌ててついてきているとの事なので速度を落とさず奥へと向かい、その途中でコボレートの群れに遭遇。


相手を驚かせつつ来た道を戻って追いかけさせ、途中で茂みに隠れてやり過ごす。


「くそ!コボレートか!相手してる暇はねぇんだよ!」


聞いたことのある声がすぐそばで聞こえてくるも、どうやらうまくコボレートを擦り付けることに成功したようでその声が街道の方へと離れていく。


「上手くいったな。」


「ですが所詮はコボレート、稼げる時間はほんの少しですので今のうちに移動しましょう。どうぞマスター。」


「重いと思うがよろしく頼むな。」


「このぐらい何の問題もありません。」


相手を撒くにはかなりの速度でここを離れなければならないのだが、生憎と俺の足ではその速度を出せないので致し方なくアティナの背におぶさり運んでもらうことに。


仄かに香る甘い匂いに思わずドキッとしてしまうが本人はまったく気にしていないようだ。


まるで木々がアティナを避けていくような錯覚を覚える速度で森の中を駆け抜け、そのまま目的の場所へと飛び込んだ。


「撒けたか?」


「気配はありませんでしたのでおそらくは。この感じ、もう奥に来ておられるようですね。」


「ならさっさと終わらせてしまうか。」


飛び込んだのはダンジョンの中、あの感じだとここに入ったのは気づかれていないようだ。


どうやら先客もいるらしいのでさっさとこんなめんどくさいことは終わらせるとしよう。


アティナを先頭に複雑な道を何度も曲がりながら進むこと10分ほど、突然通路がなくなりぽっかりと空いた小部屋に出た。


「よぉ、遅かったな。」


「これはこれはヤク中のホリア聖騎士団長じゃないか。」


「何の話だ?」


「そう売人から聞いたんだが違うのか?」


「表向きはそういうことにしているが知り合いにそう言われるのは中々来るものがある。」


「冗談だって。お前がそんなものに手を出そうものならセインさんに殺されるのは目に見えてるからな、やってないのはもちろんわかってるさ。」


小部屋の奥にいたのは王都聖騎士団騎士団長ホリア、そしてもう一人今話題に出たセイン副団長。


ダンジョン町にいた時からの付き合いであり今ではお互いの素性をよく知り合っている仲間でもある。


表向きはただの知り合い程度にしているが、今回の件に関しては陛下直々に共同調査を頼まれている。


「よくわかっておられますね。」


「マジで殺す気か?」


「麻薬などという最低な物に逃げるような相手は必要ありませんから。」


「おーこわ。」


「それだけ信頼されているってことなんだからよかったじゃないか。さて、時間もあまりないからさっさと話を終わらせよう。さっきも売人に追いかけられながらここまで来たんだ。あぁ、心配しないでくれちゃんと撒いてきた。」


色々と無駄話もしたいところだが俺たちが一緒にいるところを見られると折角見つけた売人に逃げられてしまう。


掴んだ尻尾を切り落とされないよう出来る限り泳がせなければならないだけに行動は今まで以上に慎重にしなければならない。


「なるほどな、そういう感じか。」


「これまでに二度接触があったが具体的な価格の提示や現物の持ち込みは無し、お前の名前は出すけどあくまでもネタの一つって感じだ。」


「ブツを出してくれればそれを照合して同一の物か確認ができるんだが、なかなか慎重にやってるようだな。」


最初にあの小袋を出してきたから二回目には現物を出してくるのかと思っていたのだが、残念ながらホリアの名前を出すだけで具体的な話までは進まなかった。


一応どれぐらい儲かるかとか興味がある雰囲気は出しておいたんだが、向こうは向こうで俺を警戒しているのは間違いないらしい。


「そっちはどうやってブツを買ってるんだ?」


「泳がせていた売人に直接話をしに行ったら快く譲ってくれてな、それから定期的に仕入れをさせてもらっている。」


「仕入れたものは手紙を通じて製薬ギルドと錬金術ギルドに送られて成分を抽出してもらっているけれど、中々成果は出ていないみたいだね。」


「それ、脅したの間違いじゃないのか?」


「何を言うか、わざわざ酔っ払ったふりまでして買い付けたんだぞ。」


ホリアが酔っぱらいのまねごとをするとかむしろその現場に立ち会いたかったぐらいなのだが、ともかく向こうは向こうで現物を手に入れていろいろと動いているらしい。


今の話からすれば次に俺が動くべきは現物を手に入れること、そのためには俺も多少の演技をするべきなのかもしれないなぁ。


「それじゃあ次の動きに関しては引き続き冒険者ギルドを通じて連絡を取り合うとして・・・、薬の方はやっぱりだめか。」


「調べてはいるが向こうも表立って検査できないからな。せめて口の堅い薬師か錬金術師がいればよかったんだが。」


「どこから奴らが情報を仕入れているかわからないと?」


「そういうことだ。」


聖騎士団の調査では王都内のかなり奥深くまで麻薬組織の目が入り込んでいるらしく絶対に大丈夫という人を探すのが難しいらしい。


言い換えればそういった実力者ですら奴らに取り入られているといえるわけで、汚職とかそういうのではないけれど中々難しい問題だな。


「それに関してはこっちにいる限り力になれそうもないが薬の材料を集める方向で頑張らせてもらおう。」


「まぁそうなるよな。とりあえず急ぎでヒーリングリーフとミンティオの二種類を手に入れてもらいたい。なんでもあの清涼感が中毒患者の症状を紛らわせることができるらしいんだが、なんせ北方にしか自生していないからなぁ。ヒーリングリーフはある程度代用できるがミンティオの効果はほかで代用できないだけに無理を言うがよろしく頼む。」


「冬の大山脈に向かうのは命知らずもいいところだが、バーンの力があれば向こうに行くだけなら何とかなるか。わかった、そっちは任されよう。ヒーリングリーフに関しては冒険者ギルドに依頼を出して探してきてもらうからそれに紛れ込ませる感じで手紙を入れておいてくれ。」


木を隠すには森というように冒険者が普段から出入りしている店だからこそ、彼らを通じて物品の受け渡しがしやすい。


あえて店の買取価格を上げずにギルドに依頼を出すことで向こうを経由する機会が増え、綿密な状況共有ができるというわけだ。


ある程度高値で仕入れても損をしない価格で買ってくれるのが確定しているので安心して依頼を出すことができる。


「わかった、引き続き売人から情報を聞き出せるよう頑張ってくれ。」


「それに関しては善処するとだけ言っておく。」


「無理だけはしないでくださいね。」


「せっかく向こうから来てくれているんだ、せいぜい利用させてもらうつもりだ。」


「マスター、噂をすればその男がここに入ってきたようです。」


「お、マジか。」


撒いたつもりだったのだが向こうもなかなかに執念深いようだ。


ホリアとセインに目配せをして二人には急ぎ奥の奥へと移動してもらうことにした。


二人がいることは誰にも言ってはいけないだけに入り口に向かって出くわしてもいろいろとめんどくさい。


それならば俺が奴のところに向かって注意をひきつけ、その隙に出てきてもらうのが確実だろう。


「アティナ、適当な魔物がいるところに案内してくれ。獲物を探しに来たっていう言い訳は作らないと。」


「かしこまりました、では近くにおりますブラックハウンドを退治しに行きましょう。」


「・・・もう少しましなのはいないのか?」


「マスターには指一本触れさせはしませんのでご心配なく。」


確かにアティナの敵ではないだろうけどよりによってそんな強敵と闘わなくても。


ブラックハウンドはその名のごとく真っ黒い見た目をした犬型の魔物で、ドーベルマンのような見た目をしていて一度マーキングした相手はどこへ逃げても襲ってくる冒険者泣かせの魔物だ。


それでいて使える素材はほぼなく実入りが少ないので彼らからすれば百害あって一利なしというような相手になる。


もっとも、唯一取れる牙はそれなりに高値で売れるので狙っている冒険者がいないわけではない。


落とせば・・・の話ではあるけどな。


こうして秘密の情報共有は急遽終わりを迎え、それぞれがそれぞれの方法で麻薬の流行を抑えるべく行動するという結論に達したのだった。


こんな時、彼女たちがいたらなぁ。


そんな夢みたいなことを考えてしまうのだった。

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