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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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1439.転売屋は仕入れの確認をする

「というわけで次の荷物で発熱素材が入荷するわけなんだが、進行状況はどんな感じだ?」


「予定通りですね、帽子制作でちょっとズレは出ましたけどまぁうちのは既製品ですから」


「冬の初日までに予定の1000枚、それから毎月末に1000枚が2回合計3000枚の納入予定です。その量だと生地がまだ余るので空いた時間に何か作らせてもらいます。」


冬まで後一ヶ月とちょっと。


長い冬に向けた仕入れの状況を確認するべくアルトリオに向かった俺は兄二人から状況報告を受けていた。


廃鉱山で生産される魔毛を使った発熱素材は今や冬には欠かせない肌着として定着し始めている。


今回の生産総数はざっと3000枚、普通に考えたらかなりの量だがダンジョン街にもある程度の数卸すつもりだし王都の人口を考えればむしろ少ない方だろう。


価格は一枚銀貨2枚、仕入れ値が半分の銀貨1枚の予定なのでこれだけで金貨30枚の売り上げになる。


その前にも生地の納入時にわずかながら利益を得ているので生産丸投げでこれだけ稼げるのはなかなかに美味しい。


工場の大量生産と違って手作業で作るのでこの量ともなると大変じゃないかと打診した時に聞いたのだが、最近は仕上げの縫い合わせなんかは貧民街の手先の器用な人を雇っているんだとか。


そうやって経済が回ってくれているのならばお願いしている身としてもありがたい限りだ。


俺は販売を独占、アルトリオの面々は製造を独占、そして王都の住人は発熱下着を比較的安価に購入できる。


三方よしとはまさにこのことだろう。


「大変だと思うが引き続きよろしく頼む。とはいえ無理に生産を急ぐ必要もないから納期が難しい場合は遠慮なく知らせてくれ。受注数のコントロールぐらいはやらせてもらうさ。」


「大丈夫だとは思いますがその場合はすみません。」


「気にしないでくれ、それじゃあ次は既存品の仕入れなんだが・・・。」


それから30分ほど仕入れの話を詰めてからアルトリオを後にした俺はその足で製薬ギルドへ。


正直行きたくないのだが金になることなので行くしかない。


「お待ちしておりました。」


「次が立て込んでるから手短に済ませよう。秋の薬草収集総数と毒草の入手状況、それから秋の生育分布から推測する冬の推定収集数資料だ。」


嫌なことはさっさと終わらせるに限る、ということで長引かないように先手をうちつつファマスさんに資料を手渡す。


製薬ギルドには毎月一定数の薬草や毒草を納入しているのだが秋はともかく冬になるとどうしても入荷数が少なくなる。


乾燥薬草でも一定の効果はあるがやはり生の薬草には敵わないんだとか。


全く手に入らないわけじゃないのでそこはユミルさんたちに収集をお願いしつつ数をコントロールしてもらう手筈になっている。


取りすぎも良くないからな、この辺はシビアにいかないと。


時間がないと言ったからだろうか、いつもは話をしながら資料を読むファマスさんが静かに資料に目を通す。


運ばれてきた香茶をいただきながら次の予定をイメージしつつ読み終わるのを黙って待ち続けること数分。


「確認できました。冬の入荷数はこちらの予定よりも少ないようですがそれは冒険者ギルドに追加をお願いすることにします。」


「俺も別件で出かけた時なんかに手に入れば持ち込むようにしよう。」


「ありがとうございます。この間は化石を掘りにいかれたとか、お忙しいようですね。」


「もう噂になってるのか?」


「巨大な魔物の頭部が見つかったともなれば噂にもなります。古代の魔物については文献もありませんからその痕跡が見つかったとなれば魔術師ギルドが黙っているはずがありません。もっとも、そのギルドですら現物は手に入れられなかったとか。」


つい先日の話なのに情報が早い、さすがだ。


ファマスさんが言うようにアルモナイトしか見つからなかったあの地層から思わぬ大物が発掘された。


まるで恐竜のような巨大な顎門に牙、魔術師ギルドによれば大昔に生息したドラゴン系の魔物という推測だが本当かどうかはまだわかっていない。


今後も調査は続けられるということだが、その巨大な頭部は別の持ち主が持ち帰ってしまった。


残った部分に関しても基本は発見者に所有権があるので後発で顔を突っ込んできた魔術師ギルドに冒険者たちも含めた発掘者達はいい顔をしないだろう。


魔術師ギルドが先に発見すれば彼らには銅貨1枚も入ってこない。


それならば自分たちで発見して任せられる人物に売ってしまう方が実入りもいいし気持ちがいい。


もちろんその任せられる人物というのは俺であり、俺が売るのはもちろんフォッシュさん。


グレンの件もあり魔術師ギルドにはそれなりの縁や恩を感じてはいるのだが、それはそれ。


金にならないのであればわざわざ魔術師ギルドに提供する理由はない。


もちろん彼らがフォッシュさんよりも高い金を出してくれるというのなら話は別だが、現状ではそのつもりはないらしいのでおそらくというか間違いなく、ここで見つかった化石はすべて彼の所に集まることだろう。


その後改めて調査が入り新種の魔物として報告されるんだろうけど、そうなったら間違いなく高値で売れる。


そうやって転がしていくことでカネを稼いでいくのがあの人の仕事ということだ。


「まぁ色々あるからな。」


「そうですね。」


「それじゃあ今日はこのへんで失礼する、色々と予定が詰まっているんだ。」


「次はどちらへ?」


「次は冒険者ギルド、それから聖騎士団に顔を出して最後に陛下のところだ。」


「お忙しいようで何よりです。」


俺みたいな商人は足で稼いでなんぼだからな、それなりに金は持てるようにはなったが貴族連中からすればまだまだひよっこ。


もう少しカネがないと偉そうなことも言えないので、とりあえずそこに到達できるように頑張るしかない。


そんなわけで最難関だった製薬ギルドとの話し合いを終え、予定通り冒険者ギルドへ。


ここではダンジョン街で需要が増えてきている素材の収集依頼を出し、そのかわりに向こうから送られてきた素材の目録を提出する。


その場で職員が必要な素材に印をつけてくれるので価格の交渉をした後に契約書を締結、すぐに納品の準備に入る。


この辺はいつもやっている流れなので特に難しいこともないし、向こうも俺が相手だと不要な値踏みや交渉をしてこないのでお互い腹を割って話し合うことができるのがいいところだ。


どちらにとってもお互いの存在はなくてはならないのになっているので、そのバランスを間違えなければ引き続きいい取引相手としてやっていくことはできるだろう。


持ちつ持たれつの関係は取引の上で非常に重要。


どちらか一方にウェイトが傾いてしまうとそれを戻すのに必要以上の力や金が必要になる。


程々にお互いが得をする関係だと不用意な争いも生まれないので、結果として最大効率で金儲けができるというわけだ。


「ってなわけで、新たにアイアンスコーピオンの毒を仕入れる予定になっている。毒の成分から推測するに拘束用として使えそうだからその辺は自分たちで確かめてくれ。」


「アイアンスコーピオンか、まためんどくさいやつを狩りに行くんだな。」


「こいつの爪と針が入り用でな、毒はそのついでだ。普通の攻撃じゃどうにもならないがアティナのハンマーがあればそれなりに対処はできるだろう。鋼殻は鎧なんかに使えるらしいが聖騎士団で使う予定はあるか?」


「確かに装備としてはそれなりの実力はあるだろうがいかんせん重すぎる。さらに言えばアイアンスコーピオンよりもメールスコーピオンのほうが性能は優れているからそっちが手に入ったら声をかけてくれ。」


次なる交渉相手である聖騎士団ではあまりいい返事をもらうことは出来なかった。


毒はそれなりに高値で売れるので狙いは鋼殻の売り込みだったのだが、残念ながらお眼鏡には叶わなかったらしい。


聖騎士団ほど硬い装備を求めている組織は他にないはずなのだが、もっといい素材があるということだろう。


本来欲しいのは爪と針なので売れないのであれば無理をする必要はない。


とりあえず毒は何かしら使えそうなので用意するとして、他の部分は相談だな。


「そういや例の化石だが魔術師ギルドに売らなかったんだって?」


「売らなかったも何も遅れてきたのは向こうだからな、後からやってきて顔だけ出して物を持っていくってのはどうかと思うぞ。」


「気持ちはわかるが、まぁあまり目立つことはするな。」


「なんでだよ。」


「いい意味でも悪い意味でも顔が広まりすぎて面倒なことになるのはお前も知ってるだろ?今は陛下や俺達の後ろ盾があってもそういうのに興味や脅威を感じない奴らもそれなりにいる。そういった連中を刺激しないようにしろってことだ。」


「へいへい、気をつけます。」


下手に金儲けをして良からぬ連中に目をつけられるのもめんどくさい。


そういうわけでホリアは忠告してくれたようだけど、実際のところはその争いに関わるのがめんどくさいだけだろう。


俺だって好き好んで喧嘩したいわけじゃない、ただし金儲けの邪魔をするのならば話は別だ。


俺は俺にできる方法で対処するだけ。


ただし命を危険にさらすつもりもないのでその辺はわきまえるつもりでいる。


最後は王城。


聖騎士団へ先に寄ったのは王城に入るために馬車を動かしてもらうためなので、用意してもらった馬車に乗り込み一路大場へと大通りをひた走る。


「なんでついてくるんだ?」


「俺も陛下に呼ばれてるんだよ。」


てっきりホリアは見送りに来てくれたのかと思ったのだが、何故かそのまま馬車に同乗してついてくることになった。


「今回の件か?」


「そういうわけじゃないがまぁいろいろな。」


「何だよ気になるだろ。」


「冬になると色々と忙しんだよ。ともかくお前はあまり目立たないように金儲けをしてくれればそれでいい、何度もいうが目立ちすぎるなよ。」


こんなにもしつこく忠告してくるってことはもう何かが動き始めているという可能性もある。


今後は護衛代わりに誰かついてもらわないといけないだろうか。


でもなぁそれはそれでめんどくさいんだよなぁ。


俺はただ金儲けができればいいだけなのだが世の中そううまくはいかないわけで。


気をつけながらコツコツやっていこう。


冬はすぐそこ。


それが来る前に最後のもう一儲けしたいところだ。

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