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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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1366.転売屋は新しい肉の食べ方を模索する

本年もお世話になりました。

来年もお楽しみ頂ければ幸いです。

皆様良いお年を

『ブルッケガルーニを使うと肉の臭みをとれる。』


最近の研究だけでなく相場スキルでもそう出ているのでおそらくは間違いないんだろう。


とはいえ具体的にどうやって臭いを消すのかまでは言及されていないのだが、一般的な臭い消しといえば塩でもんで水で流したり牛乳に浸してみたり小麦粉を塗りこむというような方法もあったように記憶している。


だがこいつはどの使い方にも当てはまらないのだが、しいて言えば香草のような香りがするのでそっちの臭い消しの可能性もある。


細かく砕いて塗り込むのかそれともそのまま使うのか、研究の結果シチューなんかの煮込みと一緒に入れると不思議と臭みが採れることが判明。


ミカールラッケイトの森から帰るときにユミルさんから分けてもらった熊肉に試しに使ってみたのだが、獣臭さというか熊肉独特の臭いを一切感じなくなっていた。


これならわざわざ味付けを濃くしなくても美味しくいただけるのではないだろうか。


そんなわけで次なる肉を求めてなじみの肉屋へと向かっていた。


「臭い肉だって?」


「あぁ、食用ではあるけれど癖があったり臭かったりしてあまり食べられないような肉があれば教えてほしいんだが。」


「なんでまたそんなめんどくさい事・・・いや、その感じだとそれをどうにかできる手段が見つかったんだろ?」


「流石、察しがいいな。」


「そうでなきゃ金にならないような事しないもんなぁお前さんは。それで、臭みの強い肉だったか?色々あるが味の良さで行くとベア肉、だが個人的にはスネークの肉をお勧めするね。」


熊肉に関してはついさっき実証済みなので肉屋のおっさんが言っていることは間違いじゃない、てっきり象肉やワニの肉なんかが上がってくるのかと思ったらまさかのお勧めだった。


蛇なぁ・・・。


元の世界でも一応食べられているようだけど正直美味いっていう話は聞いたことがない。


それでいて肉食の為独特の臭みがあるのだとか、確かに臭みの強い肉っていう質問だったけれど出来れば美味い肉が良いんだけどなぁ。


「なんでそれがおすすめなんだ?」


「癖は強いし臭いもそれなりにあるが、一番手に入れやすくさらには加工がしやすいからだ。どうやって食べるかは知らないが、火を入れてもそこまでぱさぱさにならないってのはどんな料理でも重要だろう。西方国じゃそいつらを捌いて開いた後、串か何かに刺して焼く食べ方があるらしい。なんでも秘伝のタレに何度も付けながら火を入れる事でふっくらとしながらも味わい深い感じに仕上がるんだとさ。」


「ふむ、なんとなくわかるがそんなに手に入りやすいか?正直あまり見かけたことないんだが。」


「そりゃあ臭くて誰も食べたがらないから持ち込まれないだけだ。だが肉の手に入れやすさを考えるとワイルドカウに並ぶと言っても大袈裟じゃない。」


「マジか。」


「アーススネークって知ってるか?とぐろを巻いた姿が岩よりもでかいってんで名前が付いたんだ。もちろんデカいなりの危険はあるが牙に毒はないし、締め付けられないようにうまく立ち回れば新人でも複数人でかかれば討伐するのもそれほど難しくはないだろう。鱗が金になるってんでたまに狩られるそうだが、肉は察しの通り臭いが強くてその場に捨てられるのがほとんどだ。捨てるもんが金になるんならお前さん的にも大儲け間違いなしだろ?」


確かに捨てられるような素材が金になれば大儲けも間違いなし、しかしながら岩よりもでかいような蛇をどうやって持って帰ってくるのかそこが問題だよなぁ。


とりあえず今晩の仕込み用にアングリーバードの肉を買ってから店に戻り、今度は冒険者ギルドへ。


アーススネークの討伐依頼や回収依頼がどれだけあるのかを確認しておかないと、いざ頼んで滅多に手に入りませんでしたじゃばからしい。


馴染みの受付嬢にアーススネークについて調べてもらいながら、何か面白い依頼がないか確認しておく。


ふむ、往来が活性化したからか護衛依頼がかなり増えてるな。


まだまだ街道の魔物は多いみたいだし、しばらくはこんな感じなんだろう。


それとドラゴンの討伐か、この間の大盛り上がりを目の前で見てダンジョンからそのまま持ち帰ろうって考えている奴いるようだ。


あれはバーンだから出来たのであって、中々馬車で持ち帰るのは難しいと思うけどなぁ。


「お待たせしました!アーススネークですけど、ついこの間街道をふさいでいるっていう依頼が出ていますね。まだ討伐されてないようですけど、シロウさんが行きますか?」


「どの街道だ?」


「北街道ですね、折角開通したのに前線の跡地に住み着いてしまっているんだそうです。」


「そりゃ早急に駆除しなきゃだが・・・。」


エリザとアティナに頼めばすぐに駆除できるんだろうけど、それだと今後も自分でやらなくちゃいけないので出来れば成功経験を貯めて行ってもらいたい。


という事で、討伐依頼とは別に肉の回収依頼を出して様子を見ることにした。


すると張り出してすぐに新人っぽい奴らが二種類の依頼を剥ぎ取って受付にもっていく。


どうやら報酬はお気に召したようだ。


冒険者たちがギルドを出て行ったのを確認してからカウンターに移動して先ほどの職員に声をかける。


「どうやら受けてくれたみたいだな、なんて言ってた?」


「本当にこの金額なのかって驚いていました。私も普段捨てるような素材に銀貨3枚も出すなんて正直信じられないんですけど、あんなに臭いのどうするんですか?」


「そりゃ食うんだよ。」


「え!食べられるんですか?」


「それを確認するために取ってきてもらうんだ。見た目以上に味はいいらしいし、臭いさえどうにかできれば案外人気が出るかもしれないぞ。」


もちろんこれは机上の空論、っていうか妄想?


食用に出来れば大儲けできるぞっていう期待を具現化するための大切な投資ともいえる。


どちらにせよ誰かが駆除しなきゃいけなかったんだし、そのついでに肉も持ち帰ってくれれば両者win-winってね。


場所も半日ほどで往復できる距離なので今日中に持ち込まれるのは間違いないはず。


一足先に店に戻って準備を整えていると夕方になってやっと彼らが戻ってきた。


「あの、アーススネークの肉を買ってくれるって聞いたんですけど。」


「あぁやってるぞ。ギルドに依頼を出しておいたがそれとは別口か?」


「はい、納品はしたんですけど結構余ってしまって。」


ふむ、流石巨大な岩に間違えられるぐらいの大きさというところだろうか。


そこそこの量を依頼として出しておいたのだがそれを超える分がまだあるとは。


カウンターに乗せられたのは10kgを超えそうな大量の肉、見た感じは白っぽく魚と言われても信じてしまいそうになるがやはり気になるのは臭いか。


アンモニア臭がすごくて!って感じではないけれど、それでも独特のにおいを発している。


『アーススネークの肉。巨大なアーススネークはワイルドカウをもひとのみしてしまうほどの大きな口を持っているが性格はいたって温厚で、よほどのことが無ければ向こうから襲ってくることはない。巨大な体を守る鱗は鎧などに加工されるが肉はにおいがきつく食べられることは少ない。最近の平均取引価格は銅貨22枚、最安値銅貨13枚、最高値銅貨29枚、最終取引日は本日と記録されています。』


ふむ、食用には向いていないからか価格はかなり安めのようだ。


後はこれをどうやって加工して食えるようにするか、それによって利益は大きく変わってくる。


ひとまず買取を終らせて熊肉と同じ手順で調理を開始する。


まずは大量の水が入った鍋に肉をぶち込み、ふつふつ言い出したところでブルッケガルーニを投入。


程よくかき回しながら沸騰するまで待ってから取り出すと香りがお湯に移ったのか、肉を取り出してもあの臭みを感じない。


白身の肉はよりいっそう魚肉っぽくなってしまったが、試しに食べてみると淡泊なササミっぽい感じの食感だった。


味は一応するけれどほとんど無味で臭いがないせいか鶏肉だと言われても信じてしまいそうな感じすらする。


さすがブルッケガルーニ、効果は予想以上だな。


実験ではおよそ1kgぐらいの量を一気に茹でてみたがつぼみ一つで十分に効果を感じられる。


次は出がらしを使って2㎏ぐらい、その次は3㎏ぐらいと量を増やしてみたけれど最初の一つで十分な効果を確認することができた。


一つでこれだけの量の臭みをとれるのならかなり効率的に使えるんじゃないだろうか。


折角なのでササミっぽい食感を生かして中にシソっぽい葉っぱを入れてフライを作ってみることに。


他にもほぐしてサラダにしてみたりクリスピー的な揚げ物にと思いつく感じで何品か作ってみた。


家族の反応は上々、なので満を持して露店で売り出してみることに。


「さぁ美味しい揚げ物はどうだ?シュソの葉を入れてあるからさくっとカリっとしながらも軽い味付けで食べやすいぞ。」


「シロウさんがまた何か作ってるぞ。唐揚げ・・・じゃないのか?」


「似てるがちょっと違うな。まぁ食ってみろって。」


あまりなじみのない料理には試食が一番。


スティック状になったやつをそのまま近くの客にふるまってやると、皆警戒せずに受け取り口に運ぶ。


「さっぱりしてるけどシュソの葉が結構いい感じで食べやすい。」


「こっちはペパペッパーがピリッとしていい感じね。エールと合いそう。」


「わかる!このまま喉に流し込んで・・・って、飲みたくなってきちゃった。シロウさんこれいくら?」


「5本入って銅貨10枚、味付けはどっちか選べるから欲しい本数を言ってくれ。」


「じゃあ両方10本ずつ!」


「私も!」


どうやら男性よりも女性受けがいいようだ。


脂身が少ないからヘルシーな感じが受けるのかもしれない。


1㎏の肉からおよそ100本分加工できるので、販売価格はおよそ銀貨2枚。


原価だけでいえばたったの銅貨50枚ぐらいなので利益は驚きの銀貨1.5枚になる。


アーススネーク一匹から回収できるのがざっと100kg分なので全部売れれば金貨1.5枚にもなる計算だ。


まぁ、流石にいきなり全部売れるとは思っていないけれど反応次第ではそれも不可能じゃないかもしれない。


昼ぐらいまで延々と揚げていると、ふと並んでいた冒険者が試食を食べながらつぶやいた。


「シロウさん、これ何の肉?アングリーバードにしては淡泊だし、でも魚って感じじゃないしなぁ。」


「よくわかったな。なんだと思う?」


「え、なんですかその聞き方。まさか変なのじゃないですよね。」


「そりゃそうだ。毒もなければちゃんと食える肉を使ってるっての。まぁアーススネークだけど。」


「え!あの臭くてデカい奴!?うそだろ!?」


自分が食べていたものがあまりにも予想していたものと違っていたのか、大きな声を出して試食を自分から遠ざける。


周りも似たような反応のようで正直好意的な反応ではない。


「嘘言ってどうするよ。そのデカくて臭い奴を今普通に食ってるんだよ。ぶっちゃけ美味いだろ?」


「・・・美味い。」


「別に毒があるわけじゃないんだ、ちょいとばかし臭いがきついだけで調理方法次第じゃこれだけうまくなるんだよ。脂分がほぼないから量食べても太りにくいし、なにより淡泊だから他の料理にも使えるだろうな。」


「あのデカい蛇がまさかこんな美味いなんて知らなかった。」


「もしまた見つけたら次からはちゃんとさばいて持って帰ってきてくれよ、買い取るから。」


「了解です。」


臭くて食えないはずの肉、それがこんなに美味しいと知ったら他の料理も食べたくなるはず。


もっとも、臭み消しの方法は今の所俺しか知らないので一度この味を知ってしまったら再び俺の所に来るしか味わう方法はない。


そうやって認知度をあげつつ需要が大きくなってきたところで調理法を公開、その頃にはブルッケガルーニも蛇肉も俺から仕入れる流れが出来ているだろうからそれを転がすだけで十分な利益が出る事だろう。


まぁブルッケガルーニはダンジョンからでも回収できるので他の人が売り出す可能性もあるが、その時はその時だ。


アーススネークも今は安い肉だけどあえて安売りはしないことで価格を維持して利益を確保する。


そしてそれが軌道に乗ってきたところで次なる肉を探せばいい。


まだまだ使える肉はたくさんあるはずだ、それを食えるようにするだけでも大きな利益が産まれるだろう。


とりあえず今は目の前の客にこの味を覚えさせるのが先決だが。


「さぁさぁアーススネークの肉を使った美味しいスティックフライだ。5本で銅貨10枚、無くなり次第終了だぞ。」


まだまだ在庫はあるけれど、なくなったら終わりとい言われるとつい買ってしまうのが人間という物だ。


この日、王都に新たな名物が産まれたのだった。

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