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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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1326.転売屋は実力を目の当たりにする

「シロウさん大変だ!」


「大変なのは分かったがなんでここに言いに来るんだ?大変だったらまず行くのはギルドだろ?」


「ギルドに行ったらここに言いに行けって言われたんですよ。」


「なんでだよ。」


残暑厳しい中でも太陽が雲にかげると比較的涼しくなる7月。


夏も残すところあと二か月となり仕込んでいたネタをそろそろ現金化しなければなんて考えていると、冒険者が慌てた様子で店に飛び込んできた。


この様子だと外で何かあったんだろうがなんでギルドがうちに言いに来るのかがわからない。


アニエスさんは戦力外、クーガーさんだってうちの専属冒険者ってわけじゃないんだから常にここにいるわけじゃない。


なんなら俺なんて新人に毛が生えた程度の実力しかないわけで、っていうか買取屋にギルドは何を求めているんだろうか。


「ともかくダンジョンでバカでかいやつが大暴れしてるんだ、急いでギルドまで来てくれ。」


それだけ言うと冒険者はギルドの方へと走って行ってしまった。


「なにやら魔物が出たようですな。」


「そうらしい。アニエスさんはまだ動けないし一体俺に何を求めてるんだろうか。」


「どちらかというと主殿ではなくアティナ殿ではありませんか?」


「あぁ、なるほど。」


「ご本人もそろそろ体を動かしたくてうずうずしておられるでしょう。ルフ殿と共にいかれるのがよろしいかと。」


ここにきてしばらくは事務処理から家事と身の回りのことをメインでやってくれているアティナだったが、彼女の本業っていうか正体は戦闘用ホムンクルス。


しかもかなりの実力派らしいのだが実際に戦っている所を見ているわけではないので何とも言えないんだよなぁ。


「とはいえアティナの正体を知っているのは陛下を含めた限られた存在だけなんだが、どこから聞きつけたんだ?」


「其ればっかりは何とも。」


「とりあえず行けばわかるか。アティナは今どこだ?」


「ここに。」


「うぉ、いつの間に戻ってたんだ?」


「何やら呼ばれている気がしましたので。いよいよ私の実力を披露できる日が来たのですね、さぁすぐに参りましょう。」


「痛いって、もげる、もげるからひっぱるな!」


腕が引きちぎれるんじゃないかっていうぐらいに強い力で引っぱられ、そのまま引きずられるようにしてギルドへと向かう。


まるでお祭り騒ぎのようなギルドにアティナが入ると騒いでいた冒険者がまるでモーゼが海を歩くようにして左右に裂けて道を作った。


「なにやら魔物が出たとのことですが詳しく教えていただけますでしょうか。」


「えっと・・・。」


「シロウだ、とりあえず呼ばれてきたが俺を戦力に数えるのはお勧めしないぞ。」


「シロウ様の関係者でしたか。今から話し合いを始めますので大会議室までお進みください、えぇっとお名前を教えていただけますか?」


「アティナです、戦闘には自信があります。」


「それでしたら後でぜひ登録をお願いしますね、アティナさん。」


実力者だとすぐに見抜いたのかアティナが早速職員にスカウトされている。


うーむ、見た目だけで判断できるとか優秀過ぎるだろ。


そんなことがありながら会議室へと向かうとちょうど報告が始まった所のようだ。


一番後ろの席に座り冒険者がもたらした情報を職員が報告していく。


なんでも王都からさほど離れていないダンジョンで大型の魔物が急に暴れ出したのだとか。


一頭だけなら別に問題なかったのだが複数匹が同時に暴れた事で駆除は難航、その後も数は増え続け気づけば少数の冒険者では対処できなくなってしまったのだとか。


ダンジョンという特性上放っておけばどんどんと数が増えていってしまう。


これが屋外だと繁殖だなんだと増えるのにも時間がかかるのだが、ダンジョンではいきなりでかいのが増えるからなぁ。


そのままにすればダンジョン内の他の資源を回収する事も出来なくなり、ギルドとしても大損。


なんなら俺の店も持ち込まれる素材が少なくなるので関係がないというわけにはいかないわけで。


なるほど、それで知恵を貸せと呼ばれたわけか。


「つまりはそのデカブツを駆除すればいいんだろ?」


「それはそうですがブルーティエレファントは同種の魔物と比べてもかなり凶暴な上に知恵も回ります、下手に近づいて踏みつぶされる可能性もありますから一気に駆除できないんです。遠距離で一頭ずつ対処はできるかもしれませんが、その間に新しいのが産まれてしまえばいつまでたっても数は減りませんし・・・。」


「心配ありません、ここは一つマスターにお任せください。」


「それは構いませんが・・・。」


「無理そうならさっさと諦めて戻ってくるさ。どちらにせよ現状では戦える冒険者もいないんだろ?なら戦力がそろうまで出来るところまでやってみるさ。その代わり、回収した素材は遠慮なくもらうからな。」


とりあえず行くだけ行ってみて無理そうなら戻ってきたらいいだろう。


まぁ頑張るのは俺じゃないし、お手並み拝見と行こうじゃないか。


早速店に戻り馬車の準備をしている間にアティナの準備も出来たようだ。


準備って言っても何か特別なものを用意するとかではない、アニエスさんがいつも使っている得物を借りてきただけ。


サマードレスっていうかワンピース?


どうみても近所に買い物に行きますって感じの軽装なので鈍い光を放つ無骨な武器が違和感しかない。


「それで、デカブツをどうやって駆除するんだ?エレファント種はどれも見上げるほどでかいやつばかりだ、それでいて力もあるし一頭退治するだけでもかなり大変だぞ。」


「御心配には及びません、この程度の魔物を駆除できないで戦闘用ホムンクルスは名乗れませんから。」


「そうは言うがくれぐれも無茶はしないでくれ。だが行けると思ったらガンガン頼むぞ、エレファント種は肉こそ食えないものの素材は色々と使い道がある。特に牙は細工職人が喉から手が出るほど欲しがってるからな、高く売れるだろう。」


「では牙はできるだけ壊さないようにいたします。」


巨大な象が自分めがけて何頭も襲い掛かってくる状況で牙だけ壊さないように気を付けられるとか、どれだけ余裕があればできるんだろうか。


とかなんとか言いながら馬車を半日ほど南に走らせると突然街道の横に小高い丘が現れた。


まるで古墳のようにこんもりと大地が膨らんだ真ん中にぽっかりとした穴が開いている。


その前には何人もの冒険者が集まり、どうしたもんかと話し合いをしているようだ。


「あ、シロウさん!なんでこんなところに?」


「ギルドからの依頼で中の調査だ。可能なら何とかしてくる。」


「え、何とかなるんですか?」


「お任せください。」


「やるのは俺じゃなくてこいつだけどな。悪いが馬車を見ておいてもらえるか?」


丁度顔なじみの冒険者がいたので中の状況を教えてもらいつつ、馬車の面倒を見てもらう。


てっきりついてくるのかと思ったのだが彼らも命あっての物種だ、危険だとわかっている場所についてくるような無謀なことはしないらしい。


まぁ、中の状況を一番知っているからこそアティナがって言った時に鼻で笑うような感じがあったしな。


やる気満々のアティナを先頭に一応周囲を警戒しながらダンジョンの奥へと進んでいく。


問題の魔物が暴れているのは入り口のすぐ近く、このダンジョンは他と違い入ってすぐの通路を少し進むと突然広大な草原が現れるらしい。


太陽降り注ぐ乾いた草原、そこを走り回る巨大な象の群れ。


サバンナかよ。


そこに到着してすぐすべてを悟りこれは確かに無理だって言いたくなる理由がよくわかった


他のダンジョンと違って隠れる場所や逃げ込める場所は一切なく、その環境でバカでかい魔物と戦わなければならないのは危険を通りこして無謀すぎる。


そんな状況にもかかわらずアティナは気合十分っていうか公園に遊びに来た子供のように目を輝かせている。


「マスター、このダンジョンは壊れませんか?」


「天井はないようなもんだし大丈夫じゃないか?」


「わかりました!」


こんなに感情をあらわにするアティナはまだ数えるほどしか見たことがない。


俺達を見つけたのか土煙と地響きをあげながらこちらに向かってくるやつらに向かってワンピース姿のまま武器を構えるアティナ。


そこから先はなんていうか俺の想像を超える光景が繰り広げられた。


簡単に言うのならば暴走特急って感じだ。


普通はまっすぐ向かってくる巨大な象の群れに向かっていこうなんて気は起きないものだが、アティナは臆することなくそのまま突っ込んでいきあろうことか奴らを跳ね飛ばしながら暴れまわった。


体長数mの魔物がおもちゃのように空を舞い、地面に叩きつけられるたびに地震のように台地が揺れる。


これが戦闘用ホムンクルスの実力というやつかそりゃ一人で国一つ亡ぼせるとか言われるわけだ。


しばらくして地震は収まり土煙の向こうから非常にすっきりとした表情をしたアティナが戻ってきた。


土煙で服は汚れてしまっているものの返り血さえ浴びずあれだけの魔物を倒してしまうとか非常識にもほどがある。


「あー、楽しかったか?」


「はい。私の実力はご覧いただけましたか?」


「十分見させてもらったが・・・、なんていうかあまりにも凄すぎて次に使う場所が思いつかないんだが。」


「これだけ動けばしばらくは大丈夫です。あの、牙は持ってきた方が良いでしょうか。」


「そうだな。とりあえず牙だけは回収して、残りは外の冒険者に手伝ってもらって剥ぎ取るとしよう。輸送を手伝ってもらったらその分報酬を出すって言えばやってくれるはずだ。」


牙は金になるのでしっかりと回収、残りを手伝ってくれた冒険者と折半しても十分にプラスが出るはずだ。


彼らからすれば運ぶだけで金がもらえるわけだし断るやつはいないだろう。


その日の夕方。


大量の素材を手に凱旋してきた俺達を見てギルドの職員が目を丸くしたのは言うまでもない。


とりあえず今回は何とかなったが、今後どこでストレスを発散させるべきか新たな問題が出てきてしまった。


マジでどうしたもんかなぁ。



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