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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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1307.転売屋は人々の不安を目の当たりにする

北方の寒波については少しずつ情報が集まってきており、一般住民にも知れ渡っていた。


向こうで何かあったとしても王都での生活にはさほど問題はないものの、その寒波がこっちに来るのではないかという不安から真夏にもかかわらず防寒着が売れ始めている。


夏の初めに衣替えついでに持ち込まれた冬服がまさか半分も売れてしまうとは想像していなかったが、それだけ住民の不安は大きいという事だろう。


もし大山脈を超えて寒気が流れ込もうものなら、収穫前の麦がほとんどダメになってしまう。


そうなるとまた麦の値段が上がり市民生活に混乱が生じるだろう。


この間の不作から備蓄量を増やしているという話ではあったが、こうも頻発して使用するとなると元に戻すのが大変になる。


次の作付けは絶対に大丈夫だという保証がない以上なんでもかんでも備蓄を放出するのは悪手と言える。


とはいえ国民を飢えさせないためには必要な事なのでどこまでをオッケーとするかが難しいところだなぁ。


「ということで、発熱下着の生産について話し合いたいんだが・・・。いると思うか?」


「これに関しては何とも言えません。つい今しがたまで冷感下着を販売していたのにその横で売るというのは流石に無理がありますよ。」


「だよなぁ。向こうは冷夏でもこっちはまだまだ灼熱の日々が続いてる、その中で売れるとはおもえないよなぁ。」


「でもやり方次第では売れるだろ?不安をあおる感じで好きじゃないけど。」


「そこまでして売る必要はないし、なにより素材がないからすぐに売り出すのは無理だと思うな。」


急に冬服が売れ出したものだから意見を聞きにやってきたのはアルトリオ。


どうやら三人ともこの時期にわざわざ作ってまで売るのには反対のようだ。


確かに今廃鉱山で仕込んでいるのは冷感下着用の糸。


それを急に発熱素材に切り替えるのは流石に無理があるし、なにより生産が追いついたところで売れる保証がない。


もちろん冬まで置いておけば売れるだろうけどそこに掛けるコストを回収できるのがかなり先になってしまうだろう。


昔みたいに大金を動かせるのならまだしもそこまで自由に金を動かせる状況ではない。


とはいえ、売れる可能性があるのに何もしないって言うのはちょっとなぁ。


「そうか、三人とも同じ意見ならやめといた方が良いな。」


「期待していたのならすみません。」


「いやいや、率直な意見が聞けてむしろありがたい。気を使って手を出して大損しましたじゃ笑い話にもならないからな。とはいえ少なからず需要はあるからもし昔の在庫とかがあったら譲ってもらえると助かる。」


「それだったら倉庫を探せばいくつかあるかもしれないな、ちょっと見てくる。」


「あ!私も行く!」


「それじゃあ僕は留守番かな、見つかった物は目録を作って店までお持ちしますので少しお待ちください。」


「悪いがよろしく頼む。」


もし在庫が残っていたら割り増しして買付させてもらうとしよう。


借りに売れなくても冬まで置いておけば何とかなるし少量ならそこまで財布は痛まないはず。


店の外に出るとジリジリと肌を焼く日差しがいやおうなしに襲ってきて本当に寒波なんて来るんだろうかと疑ってしまいたくなってきた。


「シロウ様、今よろしいですか?」


「アニエスさんどうしたんだ?」


「先ほど所用を済ませに冒険者ギルドに向かったのですが、予想以上に備蓄用素材の依頼が増えていました。これは買い占めなど起きる前兆かもしれません。」


アルトリオから出て大通りを歩いているとアニエスさんが正面からまっすぐ向かってきた。


冒険者ギルドに行ったはずなのに私服とは珍しい・・・ってそうじゃなくて、買い占めが起きるかもしれないっていう話だ。


「そんなに多いのか?」


「昨日まではそこまで気にするほどではありませんでしたが、急に増えてきたようです。どれも保存食に使えるようなものばかり、ここだけの話かもしれませんが干し肉や糒などを増やしておけばいざというときに売れるのではないでしょうか。」


「正直主食は大丈夫だと踏んでいるんだが、そうか干し肉なんかが売れてるのか。」


「皆冬に向けての買い付けを気にしているようです。もちろんここまで来る可能性は少ないでしょうが、もしもを考えておくのは悪い事ではありません。」


うーむ、冬服だけでなく備蓄用の食材まで需要が増えているとなるとかなりの住民が気にしているのは間違いないようだ。


炎天下の中雪の話をするのは非常に変な感じだが需要があるのならその不安に寄り添った品を出してやろうじゃないか。


具体的には防寒グッズになるんだが・・・。


「とりあえず保存食用の干し肉を増やしておこう、アニエスさんには悪いが肉の手配を頼めるか?」


「今から外に?」


「それでもいいんだが今の話じゃそれ用の場所はもう埋まっていると考えるべきだろう。それなら今流れている奴を仕入れる方が良い。ってことで俺は市場に行くからオッちゃんの店に行って買えるだけ買ってきてもらえるか?」


「お任せください。」


今から狩りにいったところで狩場はもう抑えられている事だろう。


それならば今あるものを買い集める方が効率的といえば効率的。


だが時すでに遅く市場の肉は半分以上が売れてしまっていた。


残っているのは相場よりも少し割高なものだが、加工をすれば十分利益が出る範囲内なのでそれらを手に入れるだけ手に入れることに成功。


さて、後は屋敷に戻って加工するだけ・・・。


「いらっしゃい、ホロウコンティーナはいかがかな?」


「ホロウコンティーナ?」


「知らないのも無理はない、あまり外に出る事のない魔物だからね。まぁ使い道が少ないというべきなんだろうけど。」


「中々正直じゃないか。」


あまりの正直さに思わず笑ってしまったが、個人的には気になる素材だ。


見た目は某オイルライターのようななかなか味のある銀色、大きさは拳よりもすこし小さいだろうか、片手にすっぽりと収まるぐらいのリンゴみたいな見た目をしている。


上部には切れ込みがありそこを軽く回すと蓋のような部分が外れ、中はぽっかりとした空洞になっていた。


『ホロウコンティーナ。暗闇の中に突如現れ内部に炎を宿しながら浮遊する魔物。魔物だが特に害をなすわけではなく、近くを浮遊しながらついてくるだけ。ただしその炎に誘われて魔物が近づいてくるとも言われている為、追いかけられた時は早めに対処する方が良いと言われている。最近の平均取引価格は銅貨40枚、最安値銅貨36枚、最高値銅貨55枚、最終取引日は18日前と記録されています。』


入れ物に使うには無骨すぎる上に底の方にいくつか穴が開いている為に細かい物を入れるのは難しそうだ。


入れるとしたら穴よりも大きなものってことになるが、それを態々これに入れるのかって思うとちょっとなぁ。


「この穴さえなければ色々と使い道がありそうなものだが、残念だ。」


「塞いでやってもいいんだがそれだとこいつの持ち味を殺してしまうからね。」


「持ち味とは良い言い方だがそれで売れなきゃ意味はない。因みにおすすめの使い方は?」


「元が燃えているからか熱には強いようで魔除けの香なんかを焚きながら移動できるぐらいかな。」


「なるほど。」


煙は基本上に向かうが冷やされると液体のように下に下に流れてくる。


その性質を使えばお香を入れ物に入れたまま持ち歩きながら穴から香を流すことができるわけか。


とはいえそれで実用的なのは徒歩の人間だけで、馬で移動するにはあまり効果的とは言えなさそうだ。


「ちなみにいくらで売ってるんだ?」


「正直売りたいもんは売っちまったんでね、一個銅貨30枚ぐらいでどうだ?」


「売れ残りって言ってるようなもんだぞ。一個20枚なら買ってもいい、いくつある?」


「全部で300ぐらいか。」


「後ろの木箱全部それかよ、っていうかなんで売れないのにこんなに集めたんだ?」


「ここに来るまでに何回も襲われてね、貧乏性だからつい拾っちまうのさ。」


うーむ、まさかそんなにあると思っていなかったがこのまま置いておいても誰も買いそうにないので出現場所を教えてもらう条件ですべて買い付けることにした。


まぁ何かに使えるだろう、たぶん。


「ただいま。」


「おかえりなさいませ。おや、すごい量の買い付けですな。」


「ちょっとな。店はどうだった?」


「特に変わりなく。ですが店頭に並べておいた在庫の発熱下着がすべて完売いたしました。通常の二割増しにしておいたのですがまさか売り切れるとは、この暑さの中分厚い服を買い求める人の欲とは恐ろしい物ですなぁ。」


店の隅に積み上げておいた冬服もかなりの数が売れてしまっている。


それだけみんな北方の寒波が気になっているってことなんだろう。


俺の勘だとそこまでひどくはならないと思っているのだが、どうなるかはその時が来てみないとわからない。


「みんな不安なんだろう。だからまだ来てもいないのに冬服を買ったり食糧を備蓄したりするのさ。」


「それで冒険者用の干し肉が完売したわけですか。」


「まじか、全部売れたのか?」


「すっからかんでございます。」


うーむ、売れるとは思っていたがまさか完売とは。


売れるのはありがたいがこれだと本当に必要とする冒険者にいきわたらないので、当分は売る相手を絞る必要がありそうだな。


「それとですね、その話の流れで焔の石を買い付けないかという話が来ておりまして。」


「このクソ暑い中焔の石だって?バカじゃないのか。」


「私もそう思いましたが向こうも必死なご様子。ひとまず店主不在でお断りしましたが、近々来られるとおもわれます。」


焔の石は向こうで野菜や果物に霜が降りないよう保温するのにつかったりするその名の通り焔のような熱を帯びた石。


非常に熱いので断熱素材でくるんでカイロの代わりにしたりするのだが、この灼熱の時期にそれを売り込むとかいくら人々の不安が大きいとはいえバカすぎるだろ。


せめて北方に売りに行けば金になるだろうに、なんでこんなところに売りに来るんだ?


あ、買取屋だからか。


十中八九売れると思って仕込んだものの売れなかったってやつだろう。


不安が広がっていると冬服が売れたりはするのだが、今使うために買っているわけじゃない。


にもかかわらず今しか使えないようなものを売り出しても売れるわけもなく。


着眼点は悪くないが聊か時期が早すぎたみたいだな。


それだけみんなが困っているという事も出来るわけで。


はてさてどうなる事やら。


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