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130.転売屋は次の取引先を探す

「遅い!心配したじゃない。」


宿に戻って早々エリザに怒られた。


まぁそうなる事はわかっていたが・・・。


結構マジな顔をしているので本当に心配してくれたんだろう。


「悪かったって。」


「あまりに遅いので探しに行くところでした。知人もおりませんので出来れば一緒に行動してくださると助かります。」


「次からはそうするよ。だが、ダマスカス鉱石が手に入ったんだ、それで許してくれ。」


「え、もう見つけてきたの?」


「見つけてきたというか、連れていかれたというか。ともかくかなりの量を手に入れた、当分は大丈夫だろう。」


「さすがシロウ様です。」


「でもでも、次からは心配かけないでよね。」


どうやらお説教は終わりのようだ。


一先ず風呂に入らせてもらってから夕食という流れになった。


流石高級宿、風呂は広いしお湯は使いたい放題だ。


その代わり、一泊銀貨3枚もする。


元は取らないとな。


「俺の方はこんな感じだ。」


「いきなり連れていかれた先で仕入れるなんて、シロウにしかできない事よね。」


「その通りです。」


「明日街に戻る前に積み込むからその時はエリザよろしくな。」


「仕方ないわね。その代わりお酒もう一本頼んでいい?」


「必要経費だ、だが飲み過ぎるなよ。」


「すみませーん、ボトル追加で!」


元気よくエリザがボーイを呼ぶ。


高級レストランだったら白い目で見られるが、俺達がいるのは宿の外にある飯屋だった。


ミラが取引所で教えてもらったらしい。


汚いわけでもなく、でも料理は美味い。


肩ひじ張らずに食べれるってのが最高だ。


「お待たせしました。」


「それと、ワイルドカウのステーキとグリーンペッシュのグリル、それからホワイトレティスのサラダもお願い。」


「まだ食うのかよ。」


「だって美味しいんだもん。シロウだってお魚美味しいって言ってたじゃない。」


「まぁ、美味かったけど。」


予想通りというか予想以上に魚は美味しかった。


川魚の他に海の魚もあると聞き即行で頼んだのは言うまでもない。


川は海に繋がっている。


そんな常識をすっかりと忘れていた


身がほろほろと崩れ、口に入れると淡白だがしっかりと味のついた焼き魚。


これこれ、これだよ。


俺が食べたかったのは。


「でだ、次はミラの番だな。取引所の方はどうだった?」


「ブラウンマッシュルームは早々に売却出来そうです。ですがアラクネの糸は久しく取引されていない様でした。」


「まぁいきなり売れるとは思ってない。キノコだけでも卸先が見つかっただけよかったじゃないか。」


「かなりの需要がありましたので値段を吊り上げることも可能ですが、どうされますか?」


「さすがに足元を見ると次回以降の取引に影響が出そうだからな、そこそこの値段で定期的に売却できそうな取引先を見つけてくれ。一度に全部売る必要はないからな。」


「わかりました、取引所の方には総量を伝えてありますのでよさそうな取引先を手配してもらいます。」


核が売れる自信はあるが、他は微妙な感じだなぁ。


「アラクネの糸は何にでも使えるんだよな?」


「そうね、結構色々な事に使われてるわ。」


「にもかかわらず取引されてないって事はギルドから仕入れをしているんだろう。固定買取してないとはいえ、需要が多い分ギルドがその利益を吸い取ってるんだろうな。その間に割って入ってもいいが、商売がしにくくなるのは明らかだ。別の方法を探すしかないだろう。」


「となると普通とは違う何かを探す必要がありますね。」


剛質で鋭利、梱包資材には使えないだろうなぁ。


「お待たせしました、ワイルドカウのステーキです。」


「やった!」


「それと新しいボトルにサラダです。グリルはもう少し待ってください。」


「ありがとう。」


給仕の少年が頭を下げて厨房に戻っていく。


フロアには彼一人、忙しそうにあちこちのテーブルを行き来している。


結構大変そうだ。


「おいし~い!」


「一口よこせ。」


「あー、おっきいおっきいってば!」


「いいだろ、減るもんじゃないし。」


「何の話よ!あー二口も食べた!」


「大きな声出すなって、迷惑だろ。」


「う~・・・。」


騒いでいたエリザが今にも泣きそうな顔をしている。


いやいや、肉食べただけでなくなよ。


「今のはシロウ様が悪いですね。」


「嘘だろ?」


「食べたいのであればもう一つ頼めばいいのです。私も食べます。」


「つまりミラも食べたくなったんだな?」


「はい。」


それならそうと言えばいいのに。


エリザがもう俺には渡さないと隠すようにして肉を食べている。


もう盗らないからそんな怒るなって。


「グリル、お待たせしました。」


「すまないがさっきのステーキ二枚追加で。」


「え、またですか?」


「あまりにも美味いんでな、こいつも食べたいんだとさ。」


「母が喜びます。でも、この人って奴隷ですよね?」


「そうだが奴隷が食べちゃいけないのか?」


「違います。その、ここに来る人って、奴隷には食べさせないか残り物を食べさせるばっかりだから・・・。」


「シロウ様はそんなことをしません。」


「見てるとイライラするけど普通はそういう扱いよね。」


俺からしてみれば高い金を払って買ったにもかかわらず粗末な扱いをする理由がわからない。


大事にすればするほど相手は俺に仕えてくれる。


そう思わないんだろうか。


力で人を従わせるとしっぺ返しが怖いからなぁ。


「変なこと言ってごめんなさい。」


「いいんです。お母様に美味しいですと伝えて頂けますか?」


「はい!」


凹んでいた少年がパッと顔を輝かせた。


嬉しそうに裏へと戻り忙しそうに料理を作る母親に何か伝えている。


すると母親が厨房の窓からこちらを見て二度ほど頭を下げた。


よきかなよきかな。


持ってきてもらったグリルはこれまた美味しくて、珍しく酒を飲んでしまった。


といっても一杯だけだけど。


やっぱり旅の醍醐味は酒と料理だよな。


もちろん帰ってからの大運動会も醍醐味だが・・・。


約一名がべろべろなため、今日はミラとだけ楽しむとしよう。


飲み過ぎた奴が悪い。


結局閉店まで居座ってしまった。


「ごちそうさまでした。」


「たくさん食べて頂きありがとうございました。」


「大変美味しかったです。」


母親と少年がわざわざ見送りに来てくれた。


最後の客だったからってのもあるだろうが、嬉しそうに笑っている。


「行商に来られたとか?」


「そうなんです。明日には戻りますが、ここはいい街ですね。」


「ありがとうございます。また是非いらしてください。」


「そうさせてもらいます。では、失礼しますね。」


珍しく酔いつぶれたエリザを引きずりながら宿までの道を歩く。


と、その時だった。


「あの!」


さっきの少年が慌てた感じで走ってきた。


振り返りたいがエリザが重く後ろを振り向けない。


「どうしたの?」


変わりにミラが対応してくれた。


「さっき、アラクネの糸って言いましたよね?」


「あぁ、そんな話もしていたな。」


「ギルドが買い占めてるからなかなか手に入らなくて困ってるって話をお客さんがしてました。確か、街の工事をしている人だったと思うんですけど、これって何かお役に立ちますか?」


「あぁ、すごい役に立つ。ありがとう。」


「お母さんの料理をいっぱい食べてくれてありがとうございました。またきてくださいね!」


背中越しの会話だったがよっぽど嬉しかったんだろう。


少年の足音が小さくなっていく。


「いいお話が聞けましたね。」


「あぁ、ギルドが買い占めているってのもそうだが何より需要がある事が分かった。取引所に乗せられなかったのはそれが理由だったんだろう。」


「ギルドによる買い占めですか。明日の朝一で調べてみますね。」


「派手に動くなよ、さりげなくでいい。」


「わかりました。」


「俺はこいつと一緒に工事を担当する部署をあたってみる。それか業者だな。」


「街の部署はギルドが入っていそうですから、業者が良いと思います。」


だよなぁ。


けどどこでそういうのを調べればいいんだ?


マスターが居れば一発なんだが・・・。


仕方ない、足で探すか。


「そういう事だから明日は頼むぞ、エリザ。」


「・・・もう食べられないわよ。」


「ったく食い過ぎに飲み過ぎ、勘弁してくれ。」


「それだけ嬉しかったんだと思います。」


「嬉しい?」


「シロウ様とのお出かけですから。普段はダンジョンですし、こうやって一緒にいられるのが嬉しいんだと思います。」


なるほどなぁ。


そんなもんか。


ミラは店で一緒だし、アネットも同様だ。


エリザのみ一人ダンジョンに潜っているわけだから、一緒に行動して結果を残せるのがうれしいだろう。


酔っていなければ抱いてやったのに、残念だったな。


「ま、明日動ければそれでいい。今日はゆっくり休むとしよう。」


「お休みになられるのですか?」


「どうかしたのか?」


「お気づきになられていなかったと思いますが、先程食べられたホワイトレティスにはそちらが元気になる作用がありまして・・・。てっきりそのつもりで頼まれたと思いまして、申し訳ございません勘違いしました。」


だからさっきから腕を絡めて来ていたのか。


心なしか俺もそんな気分になっている。


据え膳食わねば何とやら。


ここ抱かないはずがない。


「もちろんミラを抱いてからだが?」


「本当ですか?」


「ただし、明日に残らない程度に頼むぞ。」


「もちろんです。」


そう言いながらボリューミーなものを腕に押し付けてくる。


ったく、エリザが居なかったら飛んで帰っているものを。


何とか引きずりながら宿に戻り、エリザを部屋に転がす。


その後はどうなったか言うまでもないな?


ばっちり翌日に残ったに決まっている。


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